居酒屋の聖女

克全

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2話

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「やれ、やれ。
 今班長がケンカを売ったら、僕も巻き込まれてしまうんですがねぇ」

 槍の名手で頭もいいルーベンがチャチャを入れる。
 独身で巻き込まれる家族がいないとはいえ、ルーベンは頭がいいだけに、争っても何の利益もない犯罪者ギルドと敵対したいわけではない。
 だが仲のいい班長のギュンターを見殺しにするほど、卑怯でも薄情でもなかった。

「邪魔するな下っ端!
 警備団長や隊長達とは話がついているんだ。
 邪魔すると首にするぞ!」

「それはいい話をしてくれた。
 お前を捕らえて拷問すれば、警備隊を正す事ができる
 警備団長と幹部達の汚職を証言してもらおうか!」

「ふん!
 お前に捕まるほど弱くねえよ。
 だが余計な事を喋られたら、欲深い警備団長に裏金を要求されちまう。
 だから、ここで、何も話せないように殺してやるよ。
 やっちまいな!」

 兄貴分の指示で、犯罪者ギルドのチンピラ達が、一斉にギュンターとルーベンに襲い掛かった。
 兄貴分の考えでは、ここでギュンターとルーベンを残虐に殺す事で、見ている他の客の口を封じ、アンナにも言う事を聞かせられると思ったいた。
 だが、それは単なる妄想だった。
 自分達と二人の実力を見極めることができない、無能者の愚かな判断ミスだった。
 戦い始めて直ぐに、兄貴分は自分の両膝を粉砕されてそれを思い知った。

 ギュンターはその剛力で大剣を自由自在に操り、犯罪者ギルドのチンピラの骨を叩き折り、身動きできないようにした。
 ルーベンは鍛錬を重ねた槍術を駆使して、蛇のように変幻自在に動く槍をコントロールして、犯罪者ギルドのチンピラの骨を叩き折り、身動きできないようにした。
 瞬く間に九人のチンピラと兄貴分が地を這い、苦痛のうめき声をあげていた。

「ありがとう、ギュンター、ルーベン。
 この恩は一生忘れないわ。
 でもこのままでは危険よ。
 こんな三下のチンピラは、口封じのために簡単に殺されてしまうわ。
 ギュンターとルーベンも同じよ。
 逃げるか犯罪者ギルドを討伐しないと、二人も警備隊に殺されてしまうわよ」

 二人の反応は全く違っていた。
 ギュンターはまだ警備隊を多少は信じていて、自分が明確な証拠証人を確保すれば、正義のために動いてくれると思っていた。
 
 だがルーベンは警備隊を見限っていた。
 警備団長や警備隊長達なら、保身のためなら自分達を殺すと考えていた。
 それでも、友情のためにギュンターに協力する、犯罪者ギルドと敵対する決断をする、表面に見える姿よりも熱い心を持っていた。
 同時に、アンナの洞察力に驚いてもいた。
 何より犯罪者ギルドを殲滅するように誘導する言動に驚いていた。
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