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第三章

106話

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「リリアン、食糧の備蓄は大丈夫?」

「はい、大丈夫です、御嬢様。
 魔獣達が狩ってくれた肉を主食にすれば、何の問題もありません。
 肉以外の素材部分を売却して穀物も輸入しております。
 家の建築も犯罪者奴隷に煉瓦を焼かせて順調に進んでいます。
 このペースで開発されるべきかと思います」

 戦闘侍女頭だったリリアンですが、私がシーモア公爵家から独立し、子爵家の女当主となった事で、新設されたシーモア子爵家の筆頭家臣となりました。
 護衛や身の回りの世話だけではなく、領地の開発管理までしなければいけなくなったのです。 
 国によれば筆頭家老とかランド・スチュワードと呼ばれる役目です。
 この国ではランド・スチュワードと呼ばれます。

 家臣の序列にはランド・スチュワードの下に色々と置かれる事になります。
 ハウス・スチュワードは城代と呼ばれる事がありますが、貴族の城や館を預かり全責任を負います。
 砂漠領の館はもちろん、王都に近い飛び地の城にも置かれています。
 飛び地のハウス・スチュワードには、飛び地の管理も任せていますから、城代家老と表現すべきかもしれません。
 ドリスのような戦闘侍女部隊の班長を務めてくれていた者を任命しました。

 バトラーは近習頭とか親衛隊長と呼ばれる事がありますが、オーロラとコックスが交代で務めてくれています。
 限られた家臣を効率的に配置して、五千人の犯罪者奴隷を働かせています。
 彼らの力を有効的に使って、魔獣達の助けを借りなくても子爵領に相応しい生産力を創り出さなければいけません。

 中級精霊達の力を全力発揮させれば簡単な事なのですが、そんなことをしてしまったら、危機感を持ったゴードン王家が戦争を仕掛けて来たら、無駄な死傷者を出す事になってしまいます。
 だからひっそりと分からないように中級精霊達の力を借りました。

 可住地域の井戸を掘り直したフリをして、中級精霊達の力を借りて新たな地下水脈を利用して湧水量を百倍にしました。
 湧水量が百倍になった事で、本来五百人しか住めなかった砂漠領が、五万人の領民が住める領地に大変化しました。

 ここで予想外の事態が起こってしまいました。
 私は時間をかけて領民を増やす心算でした。
 魔獣肉ではなく、領内の耕作物だけで五千人の犯罪者奴隷を養えるようになってから、国内の貧民を移民として募集する心算だったのです。

 ですが、砂漠領に近い貴族領や王家直轄領も水不足でとても貧しいのです。
 私が砂漠領で大量の水を掘りあてたという情報を聞いた貧民達が、こぞって集まってきてしまったのです。
 彼らを養うために計画を前倒ししなければいけなくなりました。
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