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第三章

102話

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「王都を離れてもよいのですか?」

「もう大丈夫だ。
 陛下と殿下は段階を踏んで隠居される」

 兄上がとんでもない事を話してくれます。
 陛下と王太子の後遺症が激しいのでしょう。
 二人に毒を盛った連中は、今頃は父上達を排除している予定だったのでしょう。
 狂った二人を薬で操り、自分達の思うままに政治を行う心算だったのです。
 それが全て水泡に帰したのです。

 まあ私が歴史の流れを変えたのでしょうが、私や家族が平穏に暮らせるのならそれでいいです。
 ただ一つ、兄上が権力の側から排斥されるのは残念です。
 王太子が廃嫡になり、第二王子のヘンリー様が王太子に擁立される事になったら、ヘンリー様の側近が王家の重臣となるでしょう。

 ですが、兄上達に野心があるのなら、この状況を利用する方法もあります。
 陛下と王太子を操り、自分達が信じる政治を行うのです。
 兄上達なら権力を悪用されるようなことはありません。
 能力も性格も分からない、ヘンリー様とその側近に国を預けるよりは、ずっと安心出来ます。

「兄上達が支えて差し上げれば、十分政務が出来るのではありませんか?」

 私は陛下と王太子を傀儡にする方法もあると謎かけしました。
 王太子に恋していた頃の自分では考えられない思考です。
 中級精霊の人を蔑む所と、タマの孤高の性格に、ムク達の仲間を大切にする本能を併せ持ってしまった今の私が、人に恋する事ができるのでしょうか?

「そんな事はできないよ。
 臣下には守らなければいけない分というものがある。
 それに私は、王国政治よりも領地経営に興味があるのだよ。
 グレイスのやってきた事は全部報告を受けていた。
 それを聞いていると、政治よりも領地経営がしたくなってね」

 余計な事を考えているうちに、兄上が本心を話してくれました。
 目を見れば本心なのがわかります。
 長年の兄妹ですからね。
 確かに領地経営は面白いですね。
 特に開拓は面白いです。
 中級精霊四柱の力を併せた複合精霊術を使えば、領地を富ませる事ができます。

「では私の複合精霊術でお手伝いしましょうか?」

「そうだな。
 根本的な領地改造をする時に手伝ってもらおう。
 無計画の開墾するのは効率が悪いからね、オーウェンとアイザックにも相談して、家臣達にも意見を出してもらって、多くの民を養えるようにするよ」

 オーウェン殿とアイザック殿ですか。
 御二人も王太子が廃嫡になったら、王国の中枢から遠ざけられるかもしれません。
 兄上の家臣になるような事はないでしょうが、派閥の仲間として協力体制は築かれるでしょう。
 いえ、御当主が王家の役職を離れられたら、元の男爵に戻る事になります。
 弟に家督を譲られて、兄上の下で陪臣とはいえ准男爵の領地と権力を得た方が、家全体を考えれば利益があるかもしれません。
 さて、御二人はどうされるのでしょうか?
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