103 / 111
第三章
102話
しおりを挟む
「王都を離れてもよいのですか?」
「もう大丈夫だ。
陛下と殿下は段階を踏んで隠居される」
兄上がとんでもない事を話してくれます。
陛下と王太子の後遺症が激しいのでしょう。
二人に毒を盛った連中は、今頃は父上達を排除している予定だったのでしょう。
狂った二人を薬で操り、自分達の思うままに政治を行う心算だったのです。
それが全て水泡に帰したのです。
まあ私が歴史の流れを変えたのでしょうが、私や家族が平穏に暮らせるのならそれでいいです。
ただ一つ、兄上が権力の側から排斥されるのは残念です。
王太子が廃嫡になり、第二王子のヘンリー様が王太子に擁立される事になったら、ヘンリー様の側近が王家の重臣となるでしょう。
ですが、兄上達に野心があるのなら、この状況を利用する方法もあります。
陛下と王太子を操り、自分達が信じる政治を行うのです。
兄上達なら権力を悪用されるようなことはありません。
能力も性格も分からない、ヘンリー様とその側近に国を預けるよりは、ずっと安心出来ます。
「兄上達が支えて差し上げれば、十分政務が出来るのではありませんか?」
私は陛下と王太子を傀儡にする方法もあると謎かけしました。
王太子に恋していた頃の自分では考えられない思考です。
中級精霊の人を蔑む所と、タマの孤高の性格に、ムク達の仲間を大切にする本能を併せ持ってしまった今の私が、人に恋する事ができるのでしょうか?
「そんな事はできないよ。
臣下には守らなければいけない分というものがある。
それに私は、王国政治よりも領地経営に興味があるのだよ。
グレイスのやってきた事は全部報告を受けていた。
それを聞いていると、政治よりも領地経営がしたくなってね」
余計な事を考えているうちに、兄上が本心を話してくれました。
目を見れば本心なのがわかります。
長年の兄妹ですからね。
確かに領地経営は面白いですね。
特に開拓は面白いです。
中級精霊四柱の力を併せた複合精霊術を使えば、領地を富ませる事ができます。
「では私の複合精霊術でお手伝いしましょうか?」
「そうだな。
根本的な領地改造をする時に手伝ってもらおう。
無計画の開墾するのは効率が悪いからね、オーウェンとアイザックにも相談して、家臣達にも意見を出してもらって、多くの民を養えるようにするよ」
オーウェン殿とアイザック殿ですか。
御二人も王太子が廃嫡になったら、王国の中枢から遠ざけられるかもしれません。
兄上の家臣になるような事はないでしょうが、派閥の仲間として協力体制は築かれるでしょう。
いえ、御当主が王家の役職を離れられたら、元の男爵に戻る事になります。
弟に家督を譲られて、兄上の下で陪臣とはいえ准男爵の領地と権力を得た方が、家全体を考えれば利益があるかもしれません。
さて、御二人はどうされるのでしょうか?
「もう大丈夫だ。
陛下と殿下は段階を踏んで隠居される」
兄上がとんでもない事を話してくれます。
陛下と王太子の後遺症が激しいのでしょう。
二人に毒を盛った連中は、今頃は父上達を排除している予定だったのでしょう。
狂った二人を薬で操り、自分達の思うままに政治を行う心算だったのです。
それが全て水泡に帰したのです。
まあ私が歴史の流れを変えたのでしょうが、私や家族が平穏に暮らせるのならそれでいいです。
ただ一つ、兄上が権力の側から排斥されるのは残念です。
王太子が廃嫡になり、第二王子のヘンリー様が王太子に擁立される事になったら、ヘンリー様の側近が王家の重臣となるでしょう。
ですが、兄上達に野心があるのなら、この状況を利用する方法もあります。
陛下と王太子を操り、自分達が信じる政治を行うのです。
兄上達なら権力を悪用されるようなことはありません。
能力も性格も分からない、ヘンリー様とその側近に国を預けるよりは、ずっと安心出来ます。
「兄上達が支えて差し上げれば、十分政務が出来るのではありませんか?」
私は陛下と王太子を傀儡にする方法もあると謎かけしました。
王太子に恋していた頃の自分では考えられない思考です。
中級精霊の人を蔑む所と、タマの孤高の性格に、ムク達の仲間を大切にする本能を併せ持ってしまった今の私が、人に恋する事ができるのでしょうか?
「そんな事はできないよ。
臣下には守らなければいけない分というものがある。
それに私は、王国政治よりも領地経営に興味があるのだよ。
グレイスのやってきた事は全部報告を受けていた。
それを聞いていると、政治よりも領地経営がしたくなってね」
余計な事を考えているうちに、兄上が本心を話してくれました。
目を見れば本心なのがわかります。
長年の兄妹ですからね。
確かに領地経営は面白いですね。
特に開拓は面白いです。
中級精霊四柱の力を併せた複合精霊術を使えば、領地を富ませる事ができます。
「では私の複合精霊術でお手伝いしましょうか?」
「そうだな。
根本的な領地改造をする時に手伝ってもらおう。
無計画の開墾するのは効率が悪いからね、オーウェンとアイザックにも相談して、家臣達にも意見を出してもらって、多くの民を養えるようにするよ」
オーウェン殿とアイザック殿ですか。
御二人も王太子が廃嫡になったら、王国の中枢から遠ざけられるかもしれません。
兄上の家臣になるような事はないでしょうが、派閥の仲間として協力体制は築かれるでしょう。
いえ、御当主が王家の役職を離れられたら、元の男爵に戻る事になります。
弟に家督を譲られて、兄上の下で陪臣とはいえ准男爵の領地と権力を得た方が、家全体を考えれば利益があるかもしれません。
さて、御二人はどうされるのでしょうか?
0
お気に入りに追加
846
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します
珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。
そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。
それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。
さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。
妹に婚約者を寝取られましたが、私には不必要なのでどうぞご自由に。
酒本 アズサ
恋愛
伯爵家の長女で跡取り娘だった私。
いつもなら朝からうるさい異母妹の部屋を訪れると、そこには私の婚約者と裸で寝ている異母妹。
どうやら私から奪い取るのが目的だったようだけれど、今回の事は私にとって渡りに舟だったのよね。
婚約者という足かせから解放されて、侯爵家の母の実家へ養女として迎えられる事に。
これまで母の実家から受けていた援助も、私がいなくなれば当然なくなりますから頑張ってください。
面倒な家族から解放されて、私幸せになります!
もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる