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第三章

92話

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 私の正直な気持ちを、父上も母上も理解してくださいました。
 父上も母上も、最近の王太子殿下の言動には思うところがあったようです。
 私が何度も刺客に襲われるのも、殿下の愚行のせいですから。
 私が一度死にかけたのも、大きかったのでしょう。
 シーモア公爵家の権力が強くなる事よりも、私の幸せを優先してくれたのです。

 シーモア公爵家は派閥をまとめて、キャヴェンディッシュ宮中伯家のサマンサ嬢を王太子殿下の正妃に推す。
 必要ならばシーモア公爵家の養女に迎えてから輿入れしてもらう。
 私は無理に結婚せず、領内に分家する。
 収入はデビルイン魔境を筆頭とした、領内の魔境で狩りをして賄う。
 そう家族会議できまりました。

 問題はそれを王太子殿下に認めてもらう方法です。
 薬の影響力から完全に抜け出せていない殿下は、時に異常な言動をとられ、側近が止めるのに苦労していると聞きます。
 私が挨拶に宮城を登城した時に、殿下に襲われる可能性すらあります。
 それをどうやって防ぐのか、厳しい判断が必要になります。

「父上、精霊の護りは宮城でも有効でしょうか?」

「中級精霊を見るのは初めてだ、どうであろうか……
 正直分からんな。
 試しに謁見前に様子を探ってみたらどうだ?」

「よろしいのですか?」

「構わんよ。
 殿下の決定のせいで何度も刺客に襲われているんだ、ばれて問題にされたとしても、安全を確認するためだと言えばいい」

「ありがとうございます。
 タマとムク達はどういたしましょう?」

「護衛として連れていきたいと申請だけはしておく。
 普通は許されないことだが、今の王太子殿下がどう判断するか分からない。
 常識的な危機判断を、興味が上回るかもしれない。
 とりあえずディランとボルトン殿達には反対するなと伝えておく」

「反対するなですか?」

「ああ、積極的に賛成に回れば、敵対する者達が、あらゆる魔道具を使ってタマとムク達を暴走させて、王太子殿下を襲わせようとするだろう。
 まあ待て。
 グレイスの言いたいことは分かる。
 絆を結んだ者達が、グレイスの命令に背くことはないと言いたいのであろう?
 だが、敵対勢力がどのような魔道具を用意できるか分からないのだ。
 狂気に走らせる魔道具があるのなら、絆を結んでいても暴れる可能性がある。
 その時に言い訳できるように、賛成はしないが反対もしない態度がいいのだ」

 父上の考え方は分かりました。
 長年権謀術数渦巻く宮廷内で権力を維持されているだけはあります。
 さて、どうなるでしょうか?
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