93 / 111
第三章
92話
しおりを挟む
私の正直な気持ちを、父上も母上も理解してくださいました。
父上も母上も、最近の王太子殿下の言動には思うところがあったようです。
私が何度も刺客に襲われるのも、殿下の愚行のせいですから。
私が一度死にかけたのも、大きかったのでしょう。
シーモア公爵家の権力が強くなる事よりも、私の幸せを優先してくれたのです。
シーモア公爵家は派閥をまとめて、キャヴェンディッシュ宮中伯家のサマンサ嬢を王太子殿下の正妃に推す。
必要ならばシーモア公爵家の養女に迎えてから輿入れしてもらう。
私は無理に結婚せず、領内に分家する。
収入はデビルイン魔境を筆頭とした、領内の魔境で狩りをして賄う。
そう家族会議できまりました。
問題はそれを王太子殿下に認めてもらう方法です。
薬の影響力から完全に抜け出せていない殿下は、時に異常な言動をとられ、側近が止めるのに苦労していると聞きます。
私が挨拶に宮城を登城した時に、殿下に襲われる可能性すらあります。
それをどうやって防ぐのか、厳しい判断が必要になります。
「父上、精霊の護りは宮城でも有効でしょうか?」
「中級精霊を見るのは初めてだ、どうであろうか……
正直分からんな。
試しに謁見前に様子を探ってみたらどうだ?」
「よろしいのですか?」
「構わんよ。
殿下の決定のせいで何度も刺客に襲われているんだ、ばれて問題にされたとしても、安全を確認するためだと言えばいい」
「ありがとうございます。
タマとムク達はどういたしましょう?」
「護衛として連れていきたいと申請だけはしておく。
普通は許されないことだが、今の王太子殿下がどう判断するか分からない。
常識的な危機判断を、興味が上回るかもしれない。
とりあえずディランとボルトン殿達には反対するなと伝えておく」
「反対するなですか?」
「ああ、積極的に賛成に回れば、敵対する者達が、あらゆる魔道具を使ってタマとムク達を暴走させて、王太子殿下を襲わせようとするだろう。
まあ待て。
グレイスの言いたいことは分かる。
絆を結んだ者達が、グレイスの命令に背くことはないと言いたいのであろう?
だが、敵対勢力がどのような魔道具を用意できるか分からないのだ。
狂気に走らせる魔道具があるのなら、絆を結んでいても暴れる可能性がある。
その時に言い訳できるように、賛成はしないが反対もしない態度がいいのだ」
父上の考え方は分かりました。
長年権謀術数渦巻く宮廷内で権力を維持されているだけはあります。
さて、どうなるでしょうか?
父上も母上も、最近の王太子殿下の言動には思うところがあったようです。
私が何度も刺客に襲われるのも、殿下の愚行のせいですから。
私が一度死にかけたのも、大きかったのでしょう。
シーモア公爵家の権力が強くなる事よりも、私の幸せを優先してくれたのです。
シーモア公爵家は派閥をまとめて、キャヴェンディッシュ宮中伯家のサマンサ嬢を王太子殿下の正妃に推す。
必要ならばシーモア公爵家の養女に迎えてから輿入れしてもらう。
私は無理に結婚せず、領内に分家する。
収入はデビルイン魔境を筆頭とした、領内の魔境で狩りをして賄う。
そう家族会議できまりました。
問題はそれを王太子殿下に認めてもらう方法です。
薬の影響力から完全に抜け出せていない殿下は、時に異常な言動をとられ、側近が止めるのに苦労していると聞きます。
私が挨拶に宮城を登城した時に、殿下に襲われる可能性すらあります。
それをどうやって防ぐのか、厳しい判断が必要になります。
「父上、精霊の護りは宮城でも有効でしょうか?」
「中級精霊を見るのは初めてだ、どうであろうか……
正直分からんな。
試しに謁見前に様子を探ってみたらどうだ?」
「よろしいのですか?」
「構わんよ。
殿下の決定のせいで何度も刺客に襲われているんだ、ばれて問題にされたとしても、安全を確認するためだと言えばいい」
「ありがとうございます。
タマとムク達はどういたしましょう?」
「護衛として連れていきたいと申請だけはしておく。
普通は許されないことだが、今の王太子殿下がどう判断するか分からない。
常識的な危機判断を、興味が上回るかもしれない。
とりあえずディランとボルトン殿達には反対するなと伝えておく」
「反対するなですか?」
「ああ、積極的に賛成に回れば、敵対する者達が、あらゆる魔道具を使ってタマとムク達を暴走させて、王太子殿下を襲わせようとするだろう。
まあ待て。
グレイスの言いたいことは分かる。
絆を結んだ者達が、グレイスの命令に背くことはないと言いたいのであろう?
だが、敵対勢力がどのような魔道具を用意できるか分からないのだ。
狂気に走らせる魔道具があるのなら、絆を結んでいても暴れる可能性がある。
その時に言い訳できるように、賛成はしないが反対もしない態度がいいのだ」
父上の考え方は分かりました。
長年権謀術数渦巻く宮廷内で権力を維持されているだけはあります。
さて、どうなるでしょうか?
0
お気に入りに追加
846
あなたにおすすめの小説
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
【完結】君こそが僕の花 ーー ある騎士の恋
冬馬亮
恋愛
こちらの話は、『あなたの愛など要りません』の外伝となります。
メインキャラクターの一人、ランスロットの恋のお話です。
「女性は、花に似ていると思うんだ。水をやる様に愛情を注ぎ、大切に守り慈しむ。すると更に女性は美しく咲き誇るんだ」
そうランスロットに話したのは、ずっと側で自分と母を守ってくれていた叔父だった。
12歳という若さで、武の名門バームガウラス公爵家当主の座に着いたランスロット。
愛人宅に入り浸りの実父と訣別し、愛する母を守る道を選んだあの日から6年。
18歳になったランスロットに、ある令嬢との出会いが訪れる。
自分は、母を無視し続けた実父の様になるのではないか。
それとも、ずっと母を支え続けた叔父の様になれるのだろうか。
自分だけの花を見つける日が来る事を思いながら、それでもランスロットの心は不安に揺れた。
だが、そんな迷いや不安は一瞬で消える。
ヴィオレッタという少女の不遇を目の当たりにした時に ーーー
守りたい、助けたい、彼女にずっと笑っていてほしい。
ヴィオレッタの為に奔走するランスロットは、自分の内にあるこの感情が恋だとまだ気づかない。
※ なろうさんでも連載しています
伯爵令嬢の家庭教師はじめました - 乙女ゲーム世界へ転生したと思ったけれどなにか違う気がする……?
大漁とろ
ファンタジー
ここは本当にあのゲームの世界なの――?
十五歳の誕生日の朝、突如前世を思い出したシャルティーナ。
どうやらこの世界は、前世の『わたし』が遊んだ乙女ゲームの中らしい。
だけど、ゲーム開始時と違う時間、違う設定、違う状況。
悪役として立ちはだかるはずの伯爵家令嬢は、年齢も、周囲の環境も違っていた。
記憶にある状況や設定と少しずつ変化している世界。何故――?
幼い令嬢を救い出し、友を助けるため、堅実に着実に己の力を発揮していくシャルティーナ。
異世界転生。悪役令嬢救出。主人公補正なんてほんの僅か。あるのは記憶と知識だけ。
それでも友達を、家族を、思い人を、大切な人々を、持てる力で懸命に守り抜いていく少女の物語。
※ノベルアッププラス、小説家になろうでも連載中です※
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
拗らせ王子は悪役令嬢を溺愛する。
平山美久
恋愛
処女作になります。
文章ところどころおかしいところあると思いますが完結後にゆっくり直していこうと思ってます。
最後まで楽しんでもらえたら幸いです。
*大変申し訳ございませんが
サラのストーリーは
別のタイトルとして今後連載予定になりますので
拗らせ王子は一度完結になります。
裏切られ追放されたけど…精霊様がついてきました。
京月
恋愛
精霊の力を宿したペンダント。
アンネは婚約者のジーク、商人のカマダル、友人のパナに裏切られ、ペンダントを奪われ、追放されてしまった。
1人で泣いているアンネ。
「どうして泣いているの?」
あれ?何でここに精霊様がいるの?
※5話完結です。(もう書き終わってます)
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる