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第三章

77話

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「ガァアァアァァアア!」

「ギャンア!」

 魔虎が一直線に私を襲おうとしたのにアズが気付いてくれて、身体を張って止めてくれましたが、前足で跳ね飛ばされてしまいました。
 左の脇から肩にかけて、鋭い爪でザックリと肉を裂かれてしまいました。
 先に飲んだ痛み止めの御陰か、痛みは感じませんが、衝撃は激しかったです。
 アズも痛みを感じていないようですが、もう機敏には動けません。
 左の前足を動かす筋肉を損傷してしまっています。

「ギャンア!」

 ムクとコックスの魔犴が、魔虎が攻撃した隙を突いて反撃してくれましたが、魔虎の両後ろ脚に噛みついたものの、軽く振り払われ、コックスの魔犴がまた前足の一撃で深く身体を裂かれました。

「ギャァァアァ!」

 コックスが絶叫をあげています。
 魔犴の痛みを感じているのでしょう。

「リリアン、痛み止めを」

「はい、御嬢様」

 ムクが魔虎を牽制してくれています。
 襲撃者を迎え討った魔犬達が戻ってくるまでは、ムクと戦闘侍女だけで魔虎を抑えないといけません。
 正直厳しいかもしれません。

「ガァアァアァァアア!」

 雄叫びと共に、魔虎が戦闘侍女達の壁に突っ込んできました!
 ムクの事など無視しています。
 戦闘侍女達が盾を構え、槍を突き出してくれますが、全く歯が立ちません。
 魔虎の毛並みは固く厚く、身体の筋肉は強靭でしなやかで、鋭い槍の穂先であろうと、いなし逸らしてしまうのです。

 そして魔虎のパワーは尋常一様ではありません。
 人間同士の訓練で想定していた体当たりでは役に立たなかったのです。
 魔犬達との訓練で、スピードに対する訓練ができていたので、爪撃や牙撃には盾や剣で対応できたので、即死すような事はありませんでした。
 ですが円陣は粉砕突破されてしまいました。

 私を護ろうと、第二陣の戦闘侍女が壁を作ってくれています。
 コックスに痛み止めを飲ませたリリアンが、私を背中に庇い、強靭な魔虎の体表に対応しようと、槍を短くしごいています。
 突破された班の左右にいる戦闘侍女班が、後ろから魔虎を攻撃しようとしています。

「土槍!」

 そこにオーロラの命令が響き渡しました!
 魔虎の下の地面から、土を固めた槍が勢いよく飛び出しました!
 オーロラと絆を結んだ土精霊ノームの力なのでしょう。
 この一撃で魔虎の勢いが削がれました。
 左右後方から槍を突き出した戦闘侍女達の攻撃が届きます。
 好機と見た第二陣の戦闘侍女達が、シールドチャージを仕掛けようと前進します。
 ムクが魔虎の腹に喰いつこうと、勢いよく駆けて来ます。
 これなら魔虎を斃せるかもしれません!
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