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第二章

54話

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 デビルイン城下の警備が厳重になったそうです。
 私の直衛部隊、城内警備部隊、城下巡察隊など、全ての警備防衛隊が大幅に見直され、編成替えが行われました。
 表の部隊だけでなく、家臣や領民を調べる内調密偵も大量に配備されたそうです。
 家臣や領民が裏切ると思っている訳ではなく、他領から入り込んでくる密偵を見つけ殺すためです。
 刺客が私を狙ったのですから仕方がありません。

 城内と城の周辺に、銀狼一匹と戦闘侍女二人を組み合わせた警備が配されました。
 これは私が狩りに行っている間も行われるので、狩りに連れて行く銀狼の数が激減してしまいました。
 そのため、狩りのやり方が変わりました。
 銀狼達を勢子にして魔獣を集め、ムク・魔豺・戦闘侍女が止めを刺すのではなく、ムク達には自由に狩りをさせ、戦闘侍女隊は自分達の力だけで狩りとするという形です。

 この方法に変えてから、ムク達の狩りの効率が格段によくなりました。
 頭数が激減したにもかかわらず、第二騎士団に比べても圧倒的な数の魔獣を狩ってくれます。
 それに対して、戦闘侍女隊の狩りは低迷してしまいました。
 私の護衛に重点を置いた所為でもあるのですが、それにしても魔獣を追い詰める事すら満足にできないのです。

 この編成替えは、リリアンが主導したので、私のためだと思います。
 刺客騒動後に行われたので、あの戦闘で考えを変えたのでしょう。
 本当に頼れる私の守護役は、戦闘侍女隊ではなくムク達だと。
 正直私もそうだと思います。
 戦闘侍女には家族もいれば友もいます。
 いつ人質に取られ、私を殺せと脅かされるか分からないのです。
 表向きは全てを捨てて私に忠誠を尽くすと誓っていますが、人の心は簡単に割り切れるモノではありません。
 生き戻る前の自分を思い起こせば、恋は盲目と言う言葉が浮かびます。

 それに、私も冷徹になれるかどうか、自信がありません。
 決定的な場面で、一瞬の躊躇いが生死の境となります。
 死を目前にしたら、卑怯未練な行いをするかもしれませんが、今の自分を冷静に見つめると、戦闘侍女に私の盾になって死ねと命じる事ができるのか、自信がありません。

 ですが、私と絆を結んだ魔獣は、私が死なない限り死にません。
 絆を結んだ魔獣が皆殺しにならない限り、どれほどの傷を負っても死にません。
 それが分かっていれば、死に匹敵するほどの敵攻撃であろうと、盾になれと平気で命令する事ができます。
 いえ、主である私の為に喜んで盾になってくれます。

 私がムク達のためにできるのは、魔力を元通りにして、支援魔法や回復魔法が使えるようになる事です。
 死に難い身体になったとは言え、傷を受ければとても痛いです。
 できるだけムク達が傷を受けないように、支援魔法を使えるようになる事、受けた傷を癒してあげられるように、回復魔法も使えるようになる事。
 ムク達の主として、何としても、もう一度使えるようになってみせます!
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