52 / 111
第二章
51話リリアン視点
しおりを挟む
メイソン殿がとても健気でいじらしいです。
御嬢様の役に立ちたいと、細々とした事まで自分でやろうとします。
ムク達が倒した月熊魔獣も、心臓が止まると血を抜くのが難しいので、手負いで一番危険な時にもかかわらず、第二騎士団員を指揮して解体に向かいます。
普段から狩りと団員強化で慣れているとはいえ、御嬢様に対するおどおどした態度とは一変する練達の指揮官でした。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
「後足の腱は断たれているようだが、念の為もう一カ所斬れ。
前足は二カ所斬って動けないようにしろ。
殺すなよ!
止めは姫様に刺して頂くのだ」
本当にメイソン殿は健気でいじらしいです。
御嬢様の身体が丈夫になるように、月熊魔獣の止めを御嬢様が刺せるように、安全確保に細心の注意を払っています。
それに少しでも月熊魔獣の商品価値を高めることも考えています。
名誉と戦闘のことしか考えない愚かな騎士ではなく、領主として収入を増やす事も考え実行できるようです。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
第二騎士団の精鋭ならば、月熊魔獣を何度も狩った経験があるのでしょう。
見事な手際です。
丁寧に血抜きされた月熊魔獣の肉は滅多に市場に出回りません。
第二騎士団が狩った時だけ競売にかけられるだけです。
ですがその時も、公爵家や公爵家の有力家臣が競り落とすので、一般領民はもちろん富豪と呼ばれる商人でも手に入れるのが難しい幻の肉なのです。
まあ、血抜きされていない月熊魔獣の肉ならば手に入るのですが。
「姫様。
御願いいたします」
「ありがとう、メイソン。
御陰で安全に月熊魔獣に止めをさせます」
御嬢様が何の躊躇いもなく月熊魔獣に近づかれます。
王都を出た時とは比べ物にならないしっかりとした足取りです。
寝たきりだった時の御嬢様の事を思いだすと、こらえきれず、不覚にも涙がこぼれそうになります。
ですがそんな情けない姿を御嬢様に見せる事などできません。
私は常に御嬢様が頼れる存在であらねばならないのです。
今も万が一の事を考えて、御嬢様の後ろに影のように従うのです。
今の御嬢様にはムク達がいてくれるのは分かっています。
私の邪魔にならないように、前方を中心に左右に分かれて御嬢様を護っています。
正直な事を言えば、少し嫉妬があります。
ムク達が来るまでは、御嬢様を護るのは私でした。
何かあれば、御嬢様はまず最初に私に眼を向けられたものです。
ですが今は、私に眼を向けられる前に、以心伝心でムク達と会話しておられるのが分かってしまいます。
胸が掻き毟られるような、何とも言えない痛みと言うか違和感と言うか、嫌な感覚が沸き起こってしまいます。
ですがムク達は、最も大切な御嬢様の背後を私に譲っています。
それが御嬢様の私への信頼だと思うと、湧き上がるような喜びもあります。
その場を誰にも奪われないように、これからも努めるしかありません。
御嬢様の役に立ちたいと、細々とした事まで自分でやろうとします。
ムク達が倒した月熊魔獣も、心臓が止まると血を抜くのが難しいので、手負いで一番危険な時にもかかわらず、第二騎士団員を指揮して解体に向かいます。
普段から狩りと団員強化で慣れているとはいえ、御嬢様に対するおどおどした態度とは一変する練達の指揮官でした。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
「後足の腱は断たれているようだが、念の為もう一カ所斬れ。
前足は二カ所斬って動けないようにしろ。
殺すなよ!
止めは姫様に刺して頂くのだ」
本当にメイソン殿は健気でいじらしいです。
御嬢様の身体が丈夫になるように、月熊魔獣の止めを御嬢様が刺せるように、安全確保に細心の注意を払っています。
それに少しでも月熊魔獣の商品価値を高めることも考えています。
名誉と戦闘のことしか考えない愚かな騎士ではなく、領主として収入を増やす事も考え実行できるようです。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
第二騎士団の精鋭ならば、月熊魔獣を何度も狩った経験があるのでしょう。
見事な手際です。
丁寧に血抜きされた月熊魔獣の肉は滅多に市場に出回りません。
第二騎士団が狩った時だけ競売にかけられるだけです。
ですがその時も、公爵家や公爵家の有力家臣が競り落とすので、一般領民はもちろん富豪と呼ばれる商人でも手に入れるのが難しい幻の肉なのです。
まあ、血抜きされていない月熊魔獣の肉ならば手に入るのですが。
「姫様。
御願いいたします」
「ありがとう、メイソン。
御陰で安全に月熊魔獣に止めをさせます」
御嬢様が何の躊躇いもなく月熊魔獣に近づかれます。
王都を出た時とは比べ物にならないしっかりとした足取りです。
寝たきりだった時の御嬢様の事を思いだすと、こらえきれず、不覚にも涙がこぼれそうになります。
ですがそんな情けない姿を御嬢様に見せる事などできません。
私は常に御嬢様が頼れる存在であらねばならないのです。
今も万が一の事を考えて、御嬢様の後ろに影のように従うのです。
今の御嬢様にはムク達がいてくれるのは分かっています。
私の邪魔にならないように、前方を中心に左右に分かれて御嬢様を護っています。
正直な事を言えば、少し嫉妬があります。
ムク達が来るまでは、御嬢様を護るのは私でした。
何かあれば、御嬢様はまず最初に私に眼を向けられたものです。
ですが今は、私に眼を向けられる前に、以心伝心でムク達と会話しておられるのが分かってしまいます。
胸が掻き毟られるような、何とも言えない痛みと言うか違和感と言うか、嫌な感覚が沸き起こってしまいます。
ですがムク達は、最も大切な御嬢様の背後を私に譲っています。
それが御嬢様の私への信頼だと思うと、湧き上がるような喜びもあります。
その場を誰にも奪われないように、これからも努めるしかありません。
0
お気に入りに追加
846
あなたにおすすめの小説
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
【完結】君こそが僕の花 ーー ある騎士の恋
冬馬亮
恋愛
こちらの話は、『あなたの愛など要りません』の外伝となります。
メインキャラクターの一人、ランスロットの恋のお話です。
「女性は、花に似ていると思うんだ。水をやる様に愛情を注ぎ、大切に守り慈しむ。すると更に女性は美しく咲き誇るんだ」
そうランスロットに話したのは、ずっと側で自分と母を守ってくれていた叔父だった。
12歳という若さで、武の名門バームガウラス公爵家当主の座に着いたランスロット。
愛人宅に入り浸りの実父と訣別し、愛する母を守る道を選んだあの日から6年。
18歳になったランスロットに、ある令嬢との出会いが訪れる。
自分は、母を無視し続けた実父の様になるのではないか。
それとも、ずっと母を支え続けた叔父の様になれるのだろうか。
自分だけの花を見つける日が来る事を思いながら、それでもランスロットの心は不安に揺れた。
だが、そんな迷いや不安は一瞬で消える。
ヴィオレッタという少女の不遇を目の当たりにした時に ーーー
守りたい、助けたい、彼女にずっと笑っていてほしい。
ヴィオレッタの為に奔走するランスロットは、自分の内にあるこの感情が恋だとまだ気づかない。
※ なろうさんでも連載しています
伯爵令嬢の家庭教師はじめました - 乙女ゲーム世界へ転生したと思ったけれどなにか違う気がする……?
大漁とろ
ファンタジー
ここは本当にあのゲームの世界なの――?
十五歳の誕生日の朝、突如前世を思い出したシャルティーナ。
どうやらこの世界は、前世の『わたし』が遊んだ乙女ゲームの中らしい。
だけど、ゲーム開始時と違う時間、違う設定、違う状況。
悪役として立ちはだかるはずの伯爵家令嬢は、年齢も、周囲の環境も違っていた。
記憶にある状況や設定と少しずつ変化している世界。何故――?
幼い令嬢を救い出し、友を助けるため、堅実に着実に己の力を発揮していくシャルティーナ。
異世界転生。悪役令嬢救出。主人公補正なんてほんの僅か。あるのは記憶と知識だけ。
それでも友達を、家族を、思い人を、大切な人々を、持てる力で懸命に守り抜いていく少女の物語。
※ノベルアッププラス、小説家になろうでも連載中です※
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
拗らせ王子は悪役令嬢を溺愛する。
平山美久
恋愛
処女作になります。
文章ところどころおかしいところあると思いますが完結後にゆっくり直していこうと思ってます。
最後まで楽しんでもらえたら幸いです。
*大変申し訳ございませんが
サラのストーリーは
別のタイトルとして今後連載予定になりますので
拗らせ王子は一度完結になります。
裏切られ追放されたけど…精霊様がついてきました。
京月
恋愛
精霊の力を宿したペンダント。
アンネは婚約者のジーク、商人のカマダル、友人のパナに裏切られ、ペンダントを奪われ、追放されてしまった。
1人で泣いているアンネ。
「どうして泣いているの?」
あれ?何でここに精霊様がいるの?
※5話完結です。(もう書き終わってます)
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる