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第二章

リリアン視点

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 御嬢様は純真無垢過ぎます!
 まあ、それがよい方に向く事もございますが、弊害が大き過ぎます。
 他人を思いやるという点は、王妃教育で身に付けられました。
 問題は他人を疑うという点が不完全な事です。
 これだけは、王妃教育でも完全に身に付ける事ができていません。

 病を得て身体を壊されてからは、他人を疑い気をつけられるようになられました。
 自分の病気が呪いや毒の影響だと思われているのでしょう。
 私を含めた公爵家が全力で御護りしていましたから、可能性は低いです。
 でも絶対ではありません。
 公爵家の全力を上回る使い手が呪いをかけた可能性もあります。

 ですが今はそれが問題なのではありません。
 問題なのは、表面上味方の振りをしている敵です。
 いえ、完全な敵という訳ではありません。
 御嬢様も大切に思いつつ、大切な物を利用して利を得ようとする者が怖いのです。

「御嬢様。
 奥で御休みください。
 私はペイズリー殿と話してまいります」

「ありがとう、リリアン。
 いつも私のために働いてくれるのね。
 でも、少しは休んでくれている?
 私の事を想ってくれるのなら、無理はしないでね。
 リリアンがいなくなったりしたら、私は支えを失ってしまうのよ」

「もったいない御言葉でございます。
 ちゃんと休ませていただきます」

 御嬢様のおっしゃる通りです。
 戦闘侍女隊には、十分な休息を取らさねばなりません。
 ペイズリー殿が鍛えてくれた戦闘侍女見習いは、相変わらず素晴らしいです。
 領地内で厳選した子女を、更に厳しい訓練で篩にかけ、鍛えに鍛え抜いた戦闘侍女見習い達です。

 御嬢様付きの戦闘侍女と奥方様付きの戦闘侍女。
 それぞれ半数は領内に残って、後進の育成指導に全力を尽くしています。
 先代の戦闘侍女頭だったペイズリー殿の指導力には定評があります。
 同時に、密偵頭としての辣腕さも。

「ペイズリー殿。
 単刀直入に伺いたいのだが、気を付けるべき者はいますか」

「味方の中で気を付けるべき者はここに書き出しています。
 まあ、叛意がある者はいません。
 でも、御嬢様を一族の嫁に迎えたいという野望を抱いている者は多いです。
 いや、積極的か消極的かを別にすれば、全員が望んでいます。
 特にメイソン様は恋焦がれておられます」

 やはりそうですか。
 御嬢様は全く気がついていらっしゃらなかったのですが、あの眼は恋する者の眼でした。
 メイソン様も焦がれる想いを上手く隠されていたとは思います。
 それでも、時折どうしようもない恋心から視線に劣情が籠っていました。

 いや、劣情などと言っては可哀想ですね。
 御嬢様の魅力なら、男が理性を失うのは仕方がありません。
 王太子殿下ですら正気を失っておられたのです。
 でも、そうなること今後の行動をどうすべきか悩みますね。
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