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第二章

42話

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「姫様。
 御無事の御帰還、心より御喜び申し上げます」

「そなたも元気でなによりです。
 叔父上と叔母上も御元気ですか?」

「御陰様を持ちまして、息災にさせて頂いております」

 久し振りに従兄弟のメイソンと会う事ができました。
 父の直ぐ下の弟がメイソンの父親、ルーカスです。
 普通の公爵家なら、父から領地を分与され、王国から王家との繋がりに相応しい、新たな爵位を与えられることでしょう。

 ですが王国でも最も古い王家からの分家であるシーモア公爵家は、王家から与えられた大切な役目があります。
 シーモア公爵家は、ゴードン王国内で最も広大で凶悪な魔境を管理しています。
 魔獣が国内に溢れ出ないように、定期的に間引く大切な役目です。

 まあ、他の公爵家や代官も中小の魔境を管理していますし、侯爵家は他国との国境を護っていますから、シーモア公爵家だけが特別というわけではありません。
 ですが、魔境を管理するための強力な騎士団と、魔境から得られる富と、国内最大の魔境を預かっていると言う自負が、シーモア公爵家の武と富を維持しています。

 その魔境を実際に管理するのが、ルーカス叔父上なのです。
 シーモア公爵家の第二騎士団長であり、親族筆頭であるルーカス叔父上は、王家の直臣として分家させる訳にはいかない、大切な存在なのです。
 ですからシーモア公爵家が保有する従属爵位の内、二番目に高位な伯爵位を貸し与えられています。

 もちろん一番高位の従属伯爵位は、ディラン兄上に与えられていますが。

「メイソン殿。
 叔父上はデビルイン城にいらっしゃるのですか?」

 メイソンが少し悔しそうな顔をします。
 何か悪いことを口にしてしまったのでしょうか?
 それにしても、メイソンはディラン兄上に瓜二つです。
 私と同年だけあって、二年前の兄上と瓜二つと言うべきですが、それにしてもよく似ています。

「申し訳ありません、姫様。
 本来ならば父がこちらにまで御挨拶に伺うべきなのですが、まだ私が若輩なもので、魔境を預かる実力が足らず、父が城に残り、私が代理として御挨拶に伺わせていただいております」

 ああ、それが悔しかったのですね。

「いえいえ、謝って頂くようなことではありません。
 シーモア公爵家で最も大切な御役目を優先して下さったこと、姪として心から誇りに思います」

 メイソンがうれしそうに微笑んでくれます。
 自分自身の悔しさより、父親が褒められることがうれしいのでしょう。
 匂い立つような笑顔と表現すべきでしょうか。
 どれほど頑固で意固地な人であろうと、魅了されそうな笑顔です。
 この辺も兄上と瓜二つです。

「御嬢様。
 よい機会でございますから、メイソン様に直接御願いしてはいかがですか?」

 私の背後を護ってくれていたリリアンが助言をくれました。
 そうですね。
 今御願すべきでしょう。
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