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第一章

第8話:王使

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「国王陛下からのお言葉を伝えさせていただきます」

「うむ、聞かせてもらおう」

「国王陛下におかれましては、この度のブルードネル王太子のしでかした不始末は詫びようのない事だと申されました」

「ふむ、それで」

「王家の侍医に診察させましたところ、ブルードネル王太子が乱心としている事が発覚しましたので、王位継承権を剥奪して塔に幽閉することになりました」

「ほう、国王陛下も思い切った事をされたのだな」

「はい、それくらいしなければアースキン公爵への詫びにはならないと申されまして、反対する貴族達を抑えて断行なされました」

「ふむ、やはり反対する貴族がいるのだな。
 だったら無理に断行される事はない。
 私はもう王国からの分離独立を宣言しているのだ。
 国王陛下には親子の情愛と君臣の絆を優先されるように伝えてくれ」

「アースキン公爵閣下にはどうかお怒りをおさめていただきたく思います。
 国王陛下におかれましては、アースキン公爵閣下の分離独立宣言は認めるので、連合王国として王国に残って欲しいと申されておられます。
 同じスタンリー家の本家と分家で争うのは哀しいと申されておられます。
 ブルードネル様を廃嫡にして王位継承権を剥奪いたしました。
 国王陛下の直系はシャーロット王女殿下だけしかおられません。
 シャーロット王太女殿下とボスヴィル王太子殿下が御結婚なされれば、今一度スタンリー家は一つになることができます」

「それは無理な話だな、王使殿。
 我が国の後継者はボスヴィルではなくクリステルなのだよ。
 ボスヴィルは王の器どころか領主の器ですらない。
 だから我が家の後継者はクリステルだ。
 アースキン王家を継ぐのはクリステルなのだよ、王使殿」

「先程からの失言の数々、どうかお許し願います、ミドルトン国王陛下。
 全ては私の不遜から出た言葉で、我が国の王がミドルトン国王陛下を下に見ていたわけではございません。
 この命を捧げてお詫びさせていただきますので、どうか数々の失言と非礼をお許し願います」

「王使殿が詫びる事でもなければ命を捨てる事もない。
 全てはエドワード国王が余の事をどう見ているかという事だ。
 分離独立を宣言したというのに、いまだに余の事を家臣とみているようだ。
 はっきり言おう、あのような愚か者を王太子の位に就けたエドワード国王とはもう二度と会いたくないのだよ。
 ボスヴィルをあのような魑魅魍魎が好き勝手しているような王宮に、一日たりと行かせる気はないのだよ、王使殿。
 クリステルが言ったように、次は戦場で会おうではないか」
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