上 下
5 / 5
第一章

第5話:報復

しおりを挟む
「魔鷹の知らせは本当か!」

 カリュー家の次男でレイティアの次兄グレックは怒鳴りつけるように聞いた。
 カリュー家の領近くにまで戻ったレイティア一行は、完全武装したカリュー家と出会うことになった。
 カリュー家王都家臣団が送った伝令に魔鷹から事情を知った、次兄グレックと長兄フーバーが不退転の決意で出陣していた。

「本当でございます。
 許し難い無礼非礼でございます。
 どうか我々もお連れください」

 王都家臣団の騎士隊長は無理だと分かっていても願い出てしまった。
 自分もコノリー王国を滅ぼす戦いに参加したかった。
 だがそんな事は絶対に許されない事だった。

「駄目だ、絶対に駄目だ。
 お前達はレイティアを無事に城まで送り届けるのだ」

 怒りで血走った眼でグレックが斬り捨てるように言いきった。
 グレックはこんな会話をしている時間も惜しかった。
 少しでも早く、息一つ分でも早く、コノリー王家を皆殺しにしたかった。

「まあ、フーバーお兄様、グレックお兄様、お久しぶりですね。
 お茶でもいただきながら、ゆっくりとお話しませんか?」

 レイティアは満面の笑みを浮かべて兄二人に話しかけた。
 全く何の屈託もない花のような笑顔だった。
 コノリー王国の事などなんとも思っていなかった。
 ウィリアム王太子の言動など気にもしていなかった。

 羽虫が五月蠅い事くらいで対等に怒る人間がいないのと同じだった。
 とりあえず兄二人はレイティアの心が傷ついていない事にひと安心した。
 だからと言って心に渦巻く怒りの激情が治まるわけではない。
 何があってもコノリー王家を皆殺しにする思いに変わりはない。
 だがレイティアの誘いを断る事には湧き上がるような申し訳なさがあった。

「ごめんな、レイティア。
 どうしてもやらなければいけない大切な役目があるのだよ。
 それが終わったら直ぐに城に戻って一緒にお茶を飲ませてもらうよ。
 なあ、グレック」

 内心の激情を抑えて冷静に復讐する事ができるフーバーが、まだ怒りの感情を持て余しているグレックに声をかけた。

「お、おお、直ぐに役目を終えて城にもどるぞ」

「そうですか、残念ですわ。
 でも御役目なら仕方ありませんね。
 では城でお茶会用の菓子を焼いてお待ちしておりますわ、兄上様方」

「「おお、楽しみにしているぞ」」

 フーバーとグレックがさっきよりも急いでコノリー王国の王都に向かった。
 復讐も大切だったが、それ以上にレイティアとのお茶会が大切だった。
 レイティアを長く待たせるなど考えられない。
 だから拷問などの時間のかかる方法は全部白紙に戻された。
 フーバーとグレックは鬼神のような強さを見せつけ、素手で城壁を砕いて王城内に入り、城内の王侯貴族を皆殺しにした。

 あとは家臣達に任せて自分達の城に戻り、レイティアとのお茶会を愉しんだ。
 残された家臣達は徹底的な調査をして復讐を果たした。
 レイティアがウィリアム王太子に婚約破棄を言い渡されて僅か十日で、コノリー王国はこの世からなくなりカリュー家の支配地となった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。

青の雀
恋愛
乙女ゲームのヒロインとして転生したと思い込んでいる男爵令嬢リリアーヌ。 悪役令嬢は公爵令嬢、この公爵令嬢に冤罪を吹っかけて、国外追放とし、その後釜に自分と王太子が結婚するというストーリー。 それは虐めではなく、悪役令嬢はヒロインに行儀作法を教えていただけ。 でも自分がヒロインだと信じて疑わない転生者は、虐められたと王太子に訴え出る。 王太子は、その言葉を信じ、悪役令嬢を国外追放処分としてしまいますが、実は悪役令嬢は聖女様だった。 身分格差社会で、礼儀作法の一つも知らない転生者がチートも持たず、生き残れるのか?転生者は自分が乙女ゲームのヒロインだと信じていますが、小説の中では、あくまでも悪役令嬢を主人公に書いています。 公爵令嬢が聖女様であったことをすっかり失念していたバカな王太子がざまぁされるというお話です。

【完結】聖女様は聖くない

当麻リコ
恋愛
異世界から召喚された聖女に婚約者の心を奪われてしまったヨハンナ。 彼女は学園の卒業パーティーで王太子である婚約者から、婚約破棄を言い渡されてしまう。 彼の心はもう自分にはないと知ったヨハンナ。 何もかも諦め婚約破棄を受け入れることにしたヨハンナの代わりに、切れたのは何故か聖女であるカレンだった――。 ※短めのお話です。

婚約破棄された真の聖女は隠しキャラのオッドアイ竜大王の運命の番でした!~ヒロイン様、あなたは王子様とお幸せに!~

白樫アオニ(卯月ミント)
恋愛
「私、竜の運命の番だったみたいなのでこのまま去ります! あなたは私に構わず聖女の物語を始めてください!」 ……聖女候補として長年修行してきたティターニアは王子に婚約破棄された。 しかしティターニアにとっては願ったり叶ったり。 何故なら王子が新しく婚約したのは、『乙女ゲームの世界に異世界転移したヒロインの私』を自称する異世界から来た少女ユリカだったから……。 少女ユリカが語るキラキラした物語――異世界から来た少女が聖女に選ばれてイケメン貴公子たちと絆を育みつつ魔王を倒す――(乙女ゲーム)そんな物語のファンになっていたティターニア。 つまりは異世界から来たユリカが聖女になることこそ至高! そのためには喜んで婚約破棄されるし追放もされます! わーい!! しかし選定の儀式で選ばれたのはユリカではなくティターニアだった。 これじゃあ素敵な物語が始まらない! 焦る彼女の前に、青赤瞳のオッドアイ白竜が現れる。 運命の番としてティターニアを迎えに来たという竜。 これは……使える! だが実はこの竜、ユリカが真に狙っていた隠しキャラの竜大王で…… ・完結しました。これから先は、エピソードを足したり、続きのエピソードをいくつか更新していこうと思っています。 ・お気に入り登録、ありがとうございます! ・もし面白いと思っていただけましたら、やる気が超絶跳ね上がりますので、是非お気に入り登録お願いします! ・hotランキング10位!!!本当にありがとうございます!!! ・hotランキング、2位!?!?!?これは…とんでもないことです、ありがとうございます!!! ・お気に入り数が1700超え!物凄いことが起こってます。読者様のおかげです。ありがとうございます! ・お気に入り数が3000超えました!凄いとしかいえない。ほんとに、読者様のおかげです。ありがとうございます!!! ・感想も何かございましたらお気軽にどうぞ。感想いただけますと、やる気が宇宙クラスになります。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、その愛に淑女の威厳を崩される

恋愛
 学園の卒業式で公爵令嬢のシンシアは婚約者である王太子から婚約破棄をされる。しかも、身に覚えがない罪を追求されることに。きっちりと反論して自分の無実を証明するが、ことごとく無視され、最後には処刑へと。  覚悟を決めたシンシアの窮地を救いに来たのは、幼い頃に遊んだ……

醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~

上下左右
恋愛
 聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。  だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。  サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。  絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。  一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。  本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

悪役令嬢は断罪され禿げた青年伯爵に嫁ぎました。

白黒
恋愛
悪役令嬢?であるセシリア・ミキャエラ・チェスタートン侯爵令嬢は第一王子に好いた男爵令嬢を虐めたとか言われて断罪されあげく禿げたローレンス・アラスター・ファーニヴァル伯爵と結婚することになってしまった。 花嫁衣装を着て伯爵家に向かったセシリアだが……どうなる結婚生活!!?

処理中です...