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第1章

第25話:カキフライ、エビフライ、イカフライ……

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1年目の夏

「かぁあああああ、うまい、美味すぎる!」

 エンシェントドワーフのヴァルタルが我を忘れて叫んでいる。

「こんな料理法は知りませんでした!
 1000年生きて、世界中を渡り歩きましたが、生まれて初めてです!
 料理法だけではありません、このソースは何ですか?!
 甘くて、酸っぱくて、まろやかで、旨味たっぷりで美味しい!」

 料理妖精のシェイマシーナが大絶賛してくれる。
 カキフライを揚げる前に、タルタルソースを教えた。
 最初は卵をほぼ生で使うので嫌がっていた。

 だが俺が真剣に説明したのと、ジャンヌが浄化魔術を使ったので納得してくれた。
 シェイマシーナは酢が食べ物を腐り難くするのも経験的に知っていた。
 それでも、最初はほんの少ししかつけていなかったのだが……

「美味しいです、もの凄く美味しいです、覚えます、必ず覚えます」

 シェイマシーナはそう言いながら、てんこ盛りのタルタルソースをかけたエビフライをほおばっている。

「本当に美味しいな、肉も魚も好きじゃないのに、これは美味しく食べられる!」

 サ・リも美味しそうに各種フライを食べている。
 カキフライをタルタルソースと一緒に料理妖精に教えるなら、他も教えようとエビもイカもアジもイワシもサーモンも揚げて試食させてみた。

「本当に美味しいですわ。
 私はサーモンのフライをタルタルソースで食べるのが好きですわ」

「信じられん、儂が、エンシェントドワーフの儂が、酒精の弱いエールの方が美味しいと思うなんて、幻でも見ているのか?!」

 熱々のカキフライを食べた後でエールを飲む美味しさに、ヴァルタルばぼうぜんとつぶやいているが、止めを刺してやろう。

「ヴァルタル、魔術でラガーを冷やせるか?」

「あ、え、冷やす、ラガーを、できるが……」

「冷やしてから飲むんだ、熱々のカキフライを食べた後で飲むんだ」

 俺は揚げたて熱々のカキフライをヴァルタルの皿に入れてやった。

「うぉおおおお、うまい、とんでもなく美味い!
 フライの油が一瞬でなくなって、またカキフライの味が引き立つ。
 そのカキフライの美味さと油がエールをひきたてる、無限ループだ!」

 ヴァルタルが料理コメントを口にしている。
 給仕役の妖精がヴァルタルのコメントを聞いてラガーを冷やしてだしている。
 それを試食試飲役の妖精と金猿獣人族が食べている。

「エビや魚だけだと、長く美味しく食べられないだろう。
 野菜と果物もフライにしてやる。
 タルタルソースだけでなく塩やソースで食べてみろ」

 俺はこの日のためにウスターソースととんかつソースも醸造していた。
 肉や魚がそれほど好きではない者のために、野菜と果物も仕込んである。

「これはナスのフライ、こっちはパンプキンのフライ、ゴーヤは好きだったよな?
 これがゴーヤのフライでこっちがオクラのフライ。
 蒸したジャガイモを潰して固めて揚げたのがコロッケだ」

「ナスがトロトロになっていて美味しい!」
「パンプキンが、普通に焼くよりも煮るよりも甘く美味しくなっている!」
「ゴーヤの苦味が無くなっている?!」
「オクラフライ大好き、マヨネーズにつけて食べるのが好き!
「すっご~い、ジャガイモ揚げたの美味しい、とんかつソース最高!」

 金猿獣人族が大さわぎしている。
 普通に焼いたり蒸したり煮たりするよりも美味しくなっているのだろう。
 これまでの料理も美味しいが、生まれて初めての味が衝撃だったのだな。

「「「「「わん、わん、わん、わん、わん」」」」」

「分かっている、分かっている、分かっているぞ。
 お前たちの事を忘れる訳ないじゃないか」

 キンモウコウたちがお代わりを求めている。
 俺が想像していたよりも食べるのが早くて揚げるのが追いつかない。

 これまで試食試飲役だった妖精が料理役と給仕役に加わった。
 料理役と給仕役が試食試飲役になるかと思ったら、料理役と給仕役を続けている。
 彼女らには後でゆっくり食べてもらおう。

「キンモウコウ、これが豚を揚げたとんかつだぞ、甘いとんかつソースをかけてな。
 こっちが牛を揚げた牛かつで、こっちが鶏を揚げたチキンカツな」

「豚、牛、鶏、どれもとんでもなく美味しくなっています!」

 俺が揚げた物を全部試食しているシェイマシーナが食べる度に驚いている。
 そんなに食べて苦しくないのか?
 もう妖精族の小さな身体の体積を超えていると思うのだが?

「豚、牛、鶏でも部位によって味が全く違う。
 ロース、ヘレ、薄切り肉を重ねたミルフィーユ、それぞれの美味しさがある」

「本当です、どれも美味しい、いくらでも食べられます!」

「肩ロースやバラも美味しいが、下ごしらえに手間と時間がかかる。
 どうせ手間と時間をかけるのなら、他の料理にした方が良い。
 というのは料理屋やいそがしい者の考えだ。
 手間と時間をかけてでも美味しい物を作りたい者は、やってみるといい」

「はい、試作を重ねて村長以上の美味しい料理を作って見せます!」

「鶏の場合はモモとムネが多いけど、手羽中も手羽元もどくとくの美味しさがある。
 首の肉を1本にして揚げても美味い。
 キモやスナギモをフライしても美味しい。
 何なら丸のまま姿揚げにしてもいいし、半身にして揚げてもいい」

「「「「「わん、わん、わん」」」」」

 キンモウコウが姿揚げにかぶりつきたいといっている。

「よし、よし、よし、直ぐに揚げてやるからな」
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