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2章

53話

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 これは、私とドルイガの主導権争いなのでしょうか?
 確証はありませんが、ここが人生の岐路になるかもしれません!
 レナードが勝ってくれるのが最善ですが、ドルイガが勝つ可能性が高いです。
 その場合、私が夫婦間の主導権を取れるのか、ドルイガに奪われるかで残りの、人生が全然違ってしまいます。
 ここは勝負に出るべきか?
 それとも安全策を取るべきでしょうか?

(ヴィヴィ。
 ここは安全策を取りなさい。
 レナードがドルイガに煩わされずに訓練する期間を確保しましょう)

(はい、母上)

 私は魔道具で伝えられる母上のアドバイスに従う事にしました。
 ドルイガには聴力と野生の勘で全てを知られているでしょうが、この程度の事は最初からドルイガも予測していた事でしょう。

「分かりました。
 今までの話から、ドルイガ殿が確実にハント男爵家に与えられる条件は分かっていますから、後は皇国とミースロッド公爵家の二つです。
 皇帝陛下との交渉に半年、ミースロッド公爵閣下との交渉に半年、これでどうでしょうか?」

「分かった、それでいい。
 だがそれでは俺に全く利益が無いのではないか?
 前払いで褒美が欲しいな」

「あら、ドルイガ殿ともあろう戦士が、前言を撤回するのですか?
 結婚は一年間待つと言いましたよね!
 それとも私の名誉を傷つけるというのですか?
 それでは私は自害するしかありません。
 ドルイガ殿は私を殺したいのですか?
 それでドルイガ殿は本当に私の事を愛していると言い切れるのですか?
 どうなんです?
 私への愛を証明して下さい、ドルイガ殿!」

「うぅぅぅ……
 しょう、めい、だと!
 どう、証明しろというのか?」

「先程の前払い褒美発言を撤回して下さい!
 そうして頂かねば自害するしかありません!」

「うっぅぅぅぅう!
 ……仕方がないな……分かった。
 前言撤回する、前払いの褒美はいらない。
 だが、そう、ハント男爵家が約束した条件を書いた誓約書がいる。
 誓約書がなければ、皇帝陛下も重臣達もハント男爵家を信用できない」

 確かにドルイガ殿の言う通りなのですが、証明書を書いてしまうと、ハント男爵家が皇国に内通している証拠になります。
 そんな物を渡してしまうと、帝国に戻る事ができなくなってしまいます。

「それはできません。
 それはドルイガ殿も分かって言っていますよね?
 そんな物を渡せば、ハント男爵家はどのような悪条件でも皇国に味方しなければいけなくなります。
 ドルイガ殿は私に死ねと言われるのですか?
 ハント男爵家に滅べと言われるのですか!
 そのような方を信じる事などできません!
 今までの話はなかったことにして頂きます!
 では、失礼します!」

「いや!
 まて、待ってくれ!
 すまん。
 俺が悪かった!
 全面的に俺が悪かった。
 だから待ってくれ、ヴィヴィアン!」
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