上 下
51 / 66
2章

50話

しおりを挟む
「最初に言っておくが、ハント男爵家に家臣からある程度の条件は聞いている。
 ハント男爵家の爵位と財産を保証すると言う内容だったが、確約できるのはミースロッド公爵家の家臣としての准男爵位と、俺が家督を継いだ後に帝国で失ったのと同等の領地の分与だ。
 妻になって直ぐに同等の領地が必要だと言うのなら、親父と交渉が必要になる。
 皇国で男爵以上の爵位と直臣としての領地を保証しろというのなら、それは皇帝陛下との交渉が必要になる。
 これがハント男爵家の家臣から聞いた条件に対する返答だ」

 なるほど、納得のいく返答ですね。
 事前に家族で話し合い想定していた内容とも一致しています。
 誠実に出来る事と出来ない事を話してくれています。
 家族も賛同してくれましたね。
 魔道具で家族からの助言を得た私は、誠実に対応することにした。

「誠実な返答感謝いたします。
 私も誠実に返答させていただきます。
 ドルイガ殿と結婚は、貴族の慣例に従い、離婚した一年後にさせて頂きます。
 帝王陛下にもレナード殿にも離婚届を出させていただいています。
 真実かどうかはドルイガ殿が調べて下さい。
 この条件は聞き届けて頂けますか?」

「一年か、余りにも長いな。
 もう少し短く出来んのか?」

「前夫との離婚からの期間が短いと、ドルイガ殿との間にできた子が、レナード殿の子供ではないかと疑われる可能性があります。
 今妊娠の兆候はありませんが、ミースロッド公爵家の混乱を望む者、家督を奪おうとする者には、格好の隙になります。
 ドルイガ殿にとっては半分の確率でしょうが、私にとっては父親が誰であろうと自分の子供です。
 その子を不幸にするような条件で結婚をするくらいなら、逃げられる限り逃げますし、逃げ切れないと判断したら誇りを守るために自害します」

「本気、のようだな。
 分かった。
 結婚はレナードとの離婚が成立してから一年後で構わない」

「では次の条件です。
 万が一私が妊娠していて、レナード殿との子供を生んだ場合、その子の命と地位を保証して下さい」

「俺にレナードの子供を養えと言うのか?!」

「いいえ、違います。
 生まれた子はレナード殿に渡し、ゴードン辺境伯家の跡継ぎとして頂きます。
 ですが、ドルイガ殿が嫉妬に狂って殺してしまわないか心配なのです。
 まだ生まれるかどうかも分かりません。
 今妊娠の兆候がありませんから、生まれる可能性は極端に低いでしょう。
 ですが絶対ではありません。
 それに、ここまで帝国と皇国が争ったのです。
 どちらかが滅ぶほどの戦いになる可能性が高いのです。
 そしてドルイガ殿とレナード殿の戦いを見れば、皇国が圧倒的に有利でしょう。
 皇国が、いえ、ミースロッド公爵家が大陸を統一するような事になれば、私の子供が殺されてしまう可能性があります
 だからドルイガ殿の約束が欲しいのです」

 どう返事してくれますか、ドルイガ殿。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずっとあなたが欲しかった。

豆狸
恋愛
「私、アルトゥール殿下が好きだったの。初めて会ったときからお慕いしていたの。ずっとあの方の心が、愛が欲しかったの。妃教育を頑張ったのは、学園在学中に学ばなくても良いことまで学んだのは、そうすれば殿下に捨てられた後は口封じに殺されてしまうからなの。死にたかったのではないわ。そんな状況なら、優しい殿下は私を捨てられないと思ったからよ。私は卑怯な女なの」

虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~

日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。 十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。 さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。 異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。

Open Sesame 余録

深月織
ファンタジー
Open Sesameの本編には入れられなかった小エピソードです。 番外編とも言えない断片。 主に初出は拍手お礼だったりそんなかんじ。

ハイスペ男からの猛烈な求愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペ男からの猛烈な求愛

婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい

香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」 王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。 リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。 『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』 そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。 真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。 ——私はこの二人を利用する。 ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。 ——それこそが真実の愛の証明になるから。 これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。 ※6/15 20:37に一部改稿しました。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

私、自立します! 聖女様とお幸せに ―薄倖の沈黙娘は悪魔辺境伯に溺愛される―

望月 或
恋愛
赤字続きのデッセルバ商会を営むゴーンが声を掛けたのは、訳ありの美しい女だった。 「この子を預かって貰えますか? お礼に、この子に紳士様の経営が上手くいくおまじないを掛けましょう」 その言葉通りグングンと経営が上手くいったが、ゴーンは女から預かった、声の出せない器量の悪い娘――フレイシルを無視し、デッセルバ夫人や使用人達は彼女を苛め虐待した。 そんな中、息子のボラードだけはフレイシルに優しく、「好きだよ」の言葉に、彼女は彼に“特別な感情”を抱いていった。 しかし、彼が『聖女』と密会している場面を目撃し、彼の“本音”を聞いたフレイシルはショックを受け屋敷を飛び出す。 自立の為、仕事紹介所で紹介された仕事は、魔物を身体に宿した辺境伯がいる屋敷のメイドだった。 早速その屋敷へと向かったフレイシルを待っていたものは―― 一方その頃、フレイシルがいなくなってデッセルバ商会の経営が一気に怪しくなり、ゴーン達は必死になって彼女を捜索するが――? ※作者独自の世界観で、ゆるめ設定です。おかしいと思っても、ツッコミはお手柔らかに心の中でお願いします……。

【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった

華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。 でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。  辺境伯に行くと、、、、、

処理中です...