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2章

49話

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 ドルイガが狂気にかられる危険を計算しなければいけません。
 家族の安全を確保するのは絶対条件です。
 急いで転移魔法を展開して、これ以上近づかしてはいけません。
 今ドルイガ達が撤去している落盤を後ろなら、何かあっても二つの落盤が残っていますから、家族は次の隠れ家に無事に逃げられるでしょう。
 家族が私とドルイガの交渉を見守り助言を与えられる、補助の魔道具も身に付けました。
 ドルイガが攻撃した時に自動反撃してくれる魔道具も、自動転移してくれる魔道具も、御守りとして身につけています。
 これなら安心して交渉できます。
 私は覚悟を決めて転移して、ドルイガ達が掘っている落盤の先で待ち受けました。

「止まりなさい!
 これ以上前に進む事は許しません。
 ドルイガ殿。
 配下の者にも進まないように命じて下さい!」

「動くな!
 俺より前に出るな!
 これは厳命だ!」

 私が厳しく命じると、ドルイガが止まってくれました。
 これは、番いの呪いにかかっていて、私の命令には背けないのでしょうか?
 それとも理性で判断しているのでしょうか?
 番いの呪いだったとして、その効力が有効な命令の範囲はどれくらいのでしょう?
 命令によっては、番いの呪いが効力を発揮しない可能性もあります。
 自殺しろというような命令は、効かない可能性があります。
 私を殺すなという命令は守っても、家族を殺すなという命令は聞いてくれない可能性があります。
 常に細心の注意を払って、ドルイガの状態を見極めないといけません。

「交渉に来ました。
 話し合う気はありますか?」

「その前に大前提がある。
 お前は俺の妻になる気があるのか?」

「あります。
 貴族として女として、体面を整えてくれるのなら、妻になりましょう。
 ですが、恥をかかされるのなら、名を惜しんで自害します。
 それでよければ話し合いましょう」

「分かった。
 条件を言え」

「では最初にドルイガ殿以外は洞窟の外に出て下さい。
 か弱い私一人で交渉に来たのです。
 武装した屈強な兵士を侍らせて交渉するなど、騎士として漢として恥でしょう」

「残念だが、俺は騎士ではなく戦士だ。
 勝利の為ならどのような卑怯な手でも使う。
 漢であるより貴族であり、欲望に忠実な雄だ。
 だが、まあ、なんだ。
 流石にこの状況は妻に迎える相手には酷すぎる状況だな。
 見ての通り圧倒的に有利な状況だ。
 危険が全然ないとは言わないが、この程度の危険は俺には通じない。
 全員表に出ていろ」

 ドルイガの命令を受けて、配下の者達が見える範囲からいなくなりました。
 本当に洞窟を出るのか、適当な所に潜むのかは、デリラ達に教えてもらわないと分かりません。
 何より問題なのは、今のドルイガの指示が、私の命令によって強制されたモノか、理性的な判断によるものかを見極めなければいけない事です。
 私だけでなく、家族の命も名誉も、見極めにかかっているのです。
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