上 下
6 / 8
第一章

第6話:誤解

しおりを挟む
 私の目の前で、ライラが盛大な溜息をつきました。
 嫌味を言われるのは覚悟していましたが、溜息は意外でした。
 私は何かとんでもない事をやってしまっているのでしょうか?
 それこそ、恨まれ憎まれるのではなく、呆れられるほどの間違いや失態を犯してしまっていて、しかもそれに気が付いていないのでしょうか?

「本当に色々と誤解があるようなので、この際はっきりと申し上げさせていただきますが、旦那様の王家に対する忠誠心は、私達家臣が呆れるほどのものがございます。
 その気になれば独立して大帝国を築くこともできるのに、王家を超える領地を持つのは不忠だと、戦争の全てを賠償金で済ませておられます。
 旦那様なら、王家の要望などいくらでも拒否できるのに、どれほどの無理難題も全て受け入れておられます」

 ライラに言われて初めて気が付くのは情けない話ですが、その通りです。
 これでピエールが領地の割譲を求めなかった理由が分かりました。
 王家の命令に全て従っていたというのは、以前から分かっていた事ですが、それが嫌々ではなく、忠誠心からだと言われると、国王と王妃と両親のやって来たことが、顔から火が出るほど恥ずかしくなります。
 一緒に聞いていた、王家や実家から付いてきた者達も、最初は口を開けて唖然として聞いていましたが、今では恥ずかしいのか下を向いています。

「奥方様に対しても同じでございます。
 わずか八歳で無理矢理政略結婚させられ、両親の元から離され、遠く離れたこの地に送られてしまわれました。
 旦那様はその事を可哀そうだと申されて、できる限り身近なものと団欒できるように、側に近づかないようにされました。
 王家の皆様のなされようを非難するわけではありませんが、十三歳の奥方様に正式な結婚をさせるなど、鬼畜の所業でございます!
 旦那様は奥方様が哀れだと申され、白の結婚を証明するために、一切近づかないと宣言され、奥方様に好きな方ができたら、何時でも離婚するから、その心算で仕えるようにと、我々に申されたのですよ」

 ライラにも溜まりに溜まったモノがあったのでしょう。
 途中ライラの思いが爆発したところもありましたが、ピエール様の私への思いやりを教えてくれました。
 私は嫌われてたわけではなく、同情され、大切にされていたのです。
 この場で飛び上がりたくなるような喜びと、刺すような哀しみがあります。
 大切にされていたのはうれしいですが、同情されているというのは、女性として見てもらえていないという事です。
 白の結婚だと証明しておいて、私に好きな人ができたら何時でも離婚するなんて、私の想いを全く理解してくれていません。
 私は、思い切って自分の想いを伝えようと決意しました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。

田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。 結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。 だからもう離婚を考えてもいいと思う。 夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。

古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。 まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。 ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。 ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【完結】その王冠は復讐のために

asami
恋愛
理不尽な婚約破棄から復讐を決意していく令嬢のお話

婚約破棄?そもそも、貴方誰ですか?

あーもんど
恋愛
精霊に深く愛されて育った公爵令嬢ディアナ。彼女は精霊に寵愛されし者という意味を込めて“寵愛姫”と呼ばれていた。彼女はスターリ国との交換留学でスターリ国の国立貴族学校に通うことになるのだが、記念の初登校で全く知らない男性から婚約破棄を言い渡される。 婚約破棄?そもそも、貴方誰ですか? この婚約破棄をキッカケに全ての歯車は狂い出す。 ※HOT・人気・恋愛ランキング一位ありがとうございます!(2019年10月8日19:27)

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

処理中です...