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第一章

第六話:復讐と幸福

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 男は再び王太子とティエリアの前に現れた。
 六十歳前後の姿になった王太子から、十七歳分の命数を奪った。
 五十歳過ぎの姿になったティエリアから、十七歳分の命数を奪った。
 それによって男は四十代の姿から十代後半の若さとなった。
 男は急いでシルヴィアの所に戻った。
 そしてシルヴィアに回復魔法をかけて、目覚めさせて話しかけた。

「シルヴィア、僕はザリフト皇国の皇太子バフトンという。
 君を助けるためにこの国までやってきた。
 君の若さを取り戻すために、君を蔑ろにしたパウロ王達から命を奪った。
 ところで君はいくつに戻りたい?
 本来の歳に戻って、これから幸せを探したいかい。
 それとも、幼い頃に戻って一から人生をやりなおしたいかい」

 シルヴィアは、最初男が何を言っているか分からないようだった。
 だから男はゆっくりと繰り返し同じ事を話して聞かした。
 シルヴィアが理解できるまで話した。

「もし、本当にできるのなら、子供の頃からやり直したい。
 奪われた人生を、最初からやり直したい」

 そう言ったシルヴィアは、嗚咽を漏らしながら、ボロボロと涙を流した。

「では、幼子からやり直させてあげるよ。
 今は三十代の姿だけど、七、八歳に戻れたらいいかい?」

 男、ザリフト皇国の皇太子バフトンの言葉を聞いたシルヴィアは、コクリと小さく、でもしっかりとした意思を眼に宿して頷いた。
 バフトンは自分が取り込んだ二十七年の命数をシルヴィアに与え、若返らせた。
 三十代前半の姿だったシルヴィアは、七、八歳の姿になった。
 一方的のバフトンは、四十代前半の姿になった。

「今からパウロ王から二十五年分の命数を奪ってくるから、待っててくれ」

「はい、ありがとうございます」

 シルヴィアから感謝の言葉を得たバフトンは、急いで王宮に侵入した。
 今までは王太子とティエリアから命数を奪っていたが、いよいよ本命のパウロ王から命数を奪う時が来た。
 王太子の寝室よりも、王の寝室の方が警戒が厳重だ。
 だが魔術を極めたバフトンの侵入を防ぐ事などできなかった。

「シルヴィアから不当に奪った若さを返してもらう。
 今回だけで済む思うなよ。
 お前が老いさらばえ、シルヴィアと同じ苦しみを味わうようになるまで、繰り返し若さを奪いに来るからな」

 バフトンはパウロ王から二十五年分の命数を奪い、自分は二十歳弱の若い姿になり、四十五歳前後の姿となったパウロ王を脅かした。
 本当は一度にもっと多くの命数を奪いたいのだが、そんな事をすれば自分が若返り過ぎてしまう。
 だから回数を分けなければいけない事情を、パウロ王に恐怖感を与える道具として能力の欠点を隠蔽したのだ。

「さて、今まで苦しみ抜いてきたシルヴィアは、溺愛して甘やかせてあげよう。
 奪った若さは、父上と母上へのプレゼントにすれば、またパウロ王から命数を奪う事ができるな」
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