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第一章

第34話:距離感・エレノア視点

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「エレノア嬢、お姉さんがエレノア嬢の事を誤解しなくなったのは分かるね。
 屋敷にいた時よりもお姉さんがよく笑うようになっているのも分かるね。
 それは全部心許せる友達ができたお陰なんだよ。
 エレノア嬢がその友達を遠ざけてしまったら、また以前のお姉さんに戻ってしまうよ、それでもいいのかい、嫌だろ、だったらもう友達を睨むのはやめなさい」

 悔しい事ですが、ロイド殿の言う通りなのでしょう。
 私がお姉様を独り占めしようとしたら、また元のお姉様に戻ってしまう。
 お姉様との関係が以前のようになってしまうのだけは絶対に嫌です。
 この幸せを手放すくらいなら、お邪魔虫を睨むのを止めた方がマシです。
 無理矢理にでも笑みを浮かべて、お姉様の友達を迎えないといけません。

「なにも別に無理に笑えとは言わないよ。
 やろうと思ってもできないだろうからね。
 そうではなくて、お姉さんを護る準備をしていればいいんだよ。
 ずっとお姉さんを護ってきたイザベルに話を聞いて、どの位置に立って何をすればいいか教えてもらうんだ」

 ロイド殿は本当に役に立つことを教えてくれます。
 黙って邪魔にならないようにするのではなく、学院内でもお姉様を護る。
 これは全く思いつきませんでした。
 学院外で狩りをする時は魔獣が相手ですから、お姉様を護らなければいけないと思っていましたが、言われてみれば魔境以外でもお姉様を護るのは当然ですね。
 それもただ自分だけで護るのではなく、イザベルと連携をする。
 ずっとお姉様を護ってきたイザベルからは教わることがあるのでしょう。

「分かりました、エレノアお嬢様。
 では防御魔術の発動準備をしておいてくださいますか。
 とっさの時に防御をしていただければ、私が敵を攻撃できます。
 私は女準男爵地位をいただきましたが、相手が王侯貴族だとフローラお嬢様の前に出ることができず、正面の敵が相手ではどうしても一歩遅れてしまいます。
 私では挨拶に来た貴族の前に出て盾になることができません。
 ですが公爵令嬢であるエレノアお嬢様ならば、相手が王族でない限りフローラお嬢様の前に出て盾になることができます」

 なるほど、よく分かりました。
 確かにその心配がありますね。
 イザベルではどうしても身分による作法が邪魔をしてしまいます。
 でも王族が相手の場合は私でも遠慮しなければいけないのは困りますね。
 世の中にはウィリアム王太子やチャールズ国王のような馬鹿がいますからね。
 何か方法がないか後でロイド君に聞いてみましょう。

「分かりました、イザベル。
 私が常にお姉様の前に出て防御魔術を発動するようにしましょう。
 信用できるお姉様の友人はどう見分ければいいのですか。
 ロイド殿からはお姉様の交友を邪魔しないように言われているのです」

「それは私にお任せください。
 フローラお嬢様が心を許している学友は全員平民です。
 私が前に出て遮っても問題ありません。
 私が前に出た時はエレノアお嬢様は後ろに下がってください。
 その学友の顔を見ずに身体全体を見て、手足に不審な動きがないか見てください。
 顔を見なければ睨まれているとは思わないでしょう
 ただ学友の方が何者かに操られている可能性もございます。
 油断する事無く防御魔術の発動準備をしていてください」

「わかりました、そのようにしましょう」
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