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第一章
第2話:裏切り
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国王陛下、王妃殿下、王太子の順の壇上に現れました。
国王陛下と王妃殿下はとてもうれしそうにされておられます。
ですが、王太子は苦々し気な表情ですので、私との婚約が不本意なのでしょう。
仕方がない事ですし、当然の事です、私もとても不本意ですから。
ですが、王侯貴族なら、それを心に押し隠し、笑顔を浮かべなければいけません。
その程度の事もできないようでは、愚か者と陰で嘲笑されるのです。
「今回の婚約に際して、国王陛下からお話があります」
侍従長が集まった貴族士族の話しかけます。
「待て、父上の話の前に話しておかなければならないことがある。
私の婚約者の事に関する重大な話だ!」
侍従長の言葉どころか、話をなされようとされている国王陛下すら押し退けて、馬鹿で身勝手な王太子が大声を出して前に出てきました。
私の方に視線を送ってきましたが、とても嫌な眼つきです。
粘つくような、恨みと敵意と獣欲が入り混じった、まともな人間ならば絶対に他人には向けない、恥ずべき感情のこもった視線です。
「自称聖女のネヴィアは、この国を裏切っているのだ。
いや、実家のレストン公爵家自体が、この国を裏切って他国に通じているのだ。
しかもネヴィアは、他国の王子と情を通じて子をもうけ、タートン王家を乗っ取ろうとしている稀代の悪女なのだ。
心ある忠義の貴族士族よ、その淫売をこの場で成敗しろ!」
余りに荒唐無稽な冤罪に、怒りよりも呆れが先に来てしまいました。
この場にいるほとんどの貴族士族が、私と同じように感じているでしょう。
まあ、これだけの貴族士族が集まれば、馬鹿もいるでしょうから、中には信じてしまう者もいるかもしれませんが、だからといって王太子に同調はしないでしょう。
私の父上は実力でこの国の大将軍になった武芸の達人で、兄上は神に聖騎士に選ばれるほどの心技体がそろった騎士なので、私を攻撃する事は死を意味するのです。
「ええい、邪魔するな愚王、この老害が!
何をしている臆病者ども、私の言う事が聞けないのか?!
私が王位に就いたら、全員爵位を剥奪するぞ、いや、今直ぐ爵位を剥奪してやる。
やれ、やってしまえ、もう遠慮は無用だ!」
王太子を止めようとされた国王陛下を、馬鹿が突き飛ばしてしまいました。
王妃殿下も止めようとされましたが、王太子は事もあろうに殴りつけました。
あ、いけません、横にいる父上と兄上が本気で怒っています。
私の事を罵った時点で、私の事をとても大切にしてくださっている兄上は、反射的に檀上の王太子を斬り殺そうとされましたが、父上に止められて仕方なく思いとどまられたのです。
その状況で国王陛下を突き飛ばし、王妃殿下を殴ってしまったのですから、制止していた父上まで激怒させてしまいました。
もう、これで王太子の命運はつきました。
でも、いくら馬鹿な王太子でも、こうなる事くらいは分かっていたはずです。
いえ、国王陛下と王妃殿下にこんこんと言い聞かされたはずです。
それなのに断行したという事は、なにか隠し玉があるのかもしれません。
国王陛下と王妃殿下はとてもうれしそうにされておられます。
ですが、王太子は苦々し気な表情ですので、私との婚約が不本意なのでしょう。
仕方がない事ですし、当然の事です、私もとても不本意ですから。
ですが、王侯貴族なら、それを心に押し隠し、笑顔を浮かべなければいけません。
その程度の事もできないようでは、愚か者と陰で嘲笑されるのです。
「今回の婚約に際して、国王陛下からお話があります」
侍従長が集まった貴族士族の話しかけます。
「待て、父上の話の前に話しておかなければならないことがある。
私の婚約者の事に関する重大な話だ!」
侍従長の言葉どころか、話をなされようとされている国王陛下すら押し退けて、馬鹿で身勝手な王太子が大声を出して前に出てきました。
私の方に視線を送ってきましたが、とても嫌な眼つきです。
粘つくような、恨みと敵意と獣欲が入り混じった、まともな人間ならば絶対に他人には向けない、恥ずべき感情のこもった視線です。
「自称聖女のネヴィアは、この国を裏切っているのだ。
いや、実家のレストン公爵家自体が、この国を裏切って他国に通じているのだ。
しかもネヴィアは、他国の王子と情を通じて子をもうけ、タートン王家を乗っ取ろうとしている稀代の悪女なのだ。
心ある忠義の貴族士族よ、その淫売をこの場で成敗しろ!」
余りに荒唐無稽な冤罪に、怒りよりも呆れが先に来てしまいました。
この場にいるほとんどの貴族士族が、私と同じように感じているでしょう。
まあ、これだけの貴族士族が集まれば、馬鹿もいるでしょうから、中には信じてしまう者もいるかもしれませんが、だからといって王太子に同調はしないでしょう。
私の父上は実力でこの国の大将軍になった武芸の達人で、兄上は神に聖騎士に選ばれるほどの心技体がそろった騎士なので、私を攻撃する事は死を意味するのです。
「ええい、邪魔するな愚王、この老害が!
何をしている臆病者ども、私の言う事が聞けないのか?!
私が王位に就いたら、全員爵位を剥奪するぞ、いや、今直ぐ爵位を剥奪してやる。
やれ、やってしまえ、もう遠慮は無用だ!」
王太子を止めようとされた国王陛下を、馬鹿が突き飛ばしてしまいました。
王妃殿下も止めようとされましたが、王太子は事もあろうに殴りつけました。
あ、いけません、横にいる父上と兄上が本気で怒っています。
私の事を罵った時点で、私の事をとても大切にしてくださっている兄上は、反射的に檀上の王太子を斬り殺そうとされましたが、父上に止められて仕方なく思いとどまられたのです。
その状況で国王陛下を突き飛ばし、王妃殿下を殴ってしまったのですから、制止していた父上まで激怒させてしまいました。
もう、これで王太子の命運はつきました。
でも、いくら馬鹿な王太子でも、こうなる事くらいは分かっていたはずです。
いえ、国王陛下と王妃殿下にこんこんと言い聞かされたはずです。
それなのに断行したという事は、なにか隠し玉があるのかもしれません。
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