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第一章

第2話:詫びと破綻

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「今回の件は全面的に王太子が悪い。
 こちらに非があることを全面的にて認める。
 だから全てなかった事にしてもらえないだろうか」

 ドナルド国王陛下が深々と頭を下げています。
 一国の国王が臣下の娘に頭を下げる。
 とても屈辱でしょうが、一粒種のサイモン王太子のために頭を下げたのです。
 その親心を、小心で卑劣卑怯で愚かな王太子が理解してくれればいいのですが、とても期待できないでしょうね。

「何を申されるのですか国王陛下。
 ダイアナの悪事は多くの貴族が証言している事です。
 ただレイ辺境伯家の武力を恐れて脅迫に屈して証言を翻したのです。
 それでもポルワース男爵家のシャンドは勇気を振り絞って証言しました。
 国王陛下はその勇敢な証言を踏み躙ると申されるのですか」

 やはりこうなりましたか。
 他の者達が証言を翻しても、王太子と同じように愚かなシャンドは引きません。
 眼の前に王妃の座があるので我慢できないのでしょう。
 愚かすぎて手を出せば破滅する事が理解できないのです。
 いえ、欲深すぎて理解できても抑えられないのかもしれません。
 だったら国ごと破滅してもらいます。

「国王陛下、サイモン王太子殿下は納得できないようですね。
 国王陛下が頭を下げた親心も理解できず、我欲獣欲も抑えられない。
 これではレイ辺境伯家の名誉は保てません。
 だからと言って国王陛下に王太子殿下を断罪してくれと、親子の情を断たせるような要求をする事もできません。
 ですからここは私から婚約を辞退させていただきます。
 それが一番事を荒立てないですむ方法でしょう」

 私の提案を受けた国王陛下は苦渋に満ちた表情をされています。
 私の提案の裏に何があるのか理解されているのかもしれません。
 でも理解しているとしても一つ目だけだと思います。
 二つ目と三つ目の裏までは分かっていないと思います。
 分かっていれば苦渋の顔など浮かべず、即座に否定してなりふり構わずもっと深々と頭を下げています。

「なにを都合のいい事を口にしている。
 処刑だ、お前など王家に対する不敬罪で処刑だ。
 近衛兵、さっさとダイアナの首を刎ねよ」

 王太子が喚き散らしています。
 本当に愚かとしか言いようがありませんね。
 ここで私の首を刎ねたら、父上様は怒り狂ってこの国を攻め滅ぼします。
 いえ、自分の手を穢れた血で汚すような事はないですね。
 自らの手を汚すことなく滅ぼす事でしょうか。
 可哀想なのは巻き込まれて死んでいく民達ですね。

「黙れ愚か者!
 サイモンは乱心した、部屋に閉じ込めておけ。
 ダイアナ嬢が領地に帰りつくまで絶対に部屋から出すな。
 サイモンの言う事を聞いて部屋から出した者は、王命不服従で処刑する。
 分かったな!」

 結局こうなりましたか。
 思っていた以上に国王陛下も愚かでしたね。
 王太子を厳しく処断することはできないようです。
 まあ、いいです、あんな屑と結婚しないで済んだことを喜びましょう。
 後は父上が決められる事です。
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