16 / 91
第二章
第16話:領主回復
しおりを挟む
筆頭家老は苦渋の決断をしなければならない。
判断を誤れば自分の命だけでなく、主君の命まで危険になる。
自分では俺に勝てない事は痛いほど分かっている。
味方を呼びたくても、その中に刺客が隠れている可能性もある。
だが、その表情を見れば時間がないのも確かだろう。
領主私室の防御力は強くても何か大きな代償があるのかもしれない。
「頼みます、城伯閣下を御守りください」
本当に時間がないのか、即断即決できる男なのか、直ぐに返事を返してきた。
一緒に領主私室に入ったが、なんだか懐かしい。
前回ここに来てからそれほど日数は経っていないのだがな。
ベットに寝ているウィリアムは前回会った時よりも明らかにやつれている。
毒の影響だろう、肌の色がどす黒くところどころ赤い斑点がある。
俺の知る限り致死性の毒だが、代謝を落として毒の影響を遅らせたのだろう。
「城伯閣下、解毒剤は手に入りませんでしたが、緩解薬は手に入りましたぞ」
おいおいそれじゃ駄目だろ、ちゃんと解毒剤を手に入れておけよ。
そう言いたいところだが、難しいのも分かっている。
ここまで進行した毒を無効化するには、ダンジョン最深部でドロップされる薬が必要だが、そう簡単に手に入れられる物じゃない。
まして毒を盛ったのがトマスで、エクセター侯爵の手先が領内に乗り込んできている状況では、薬収集に全力を注ぐ事など不可能だからな。
「まて、この毒なら俺の治癒魔法で治す事ができる。
どうする、俺を信用するか、自分で何とかするか、直ぐに選べ。
お前が家臣として何とかするというのなら、俺はこの足でエクセター侯爵を殺しに行くが、ウィリアムを治してくれと言うのなら、ウィリアムを治してから話し合ってエクセター侯爵への報復方法をきめる」
「治して下さい、お願いします」
即断即決だったな、まあ、俺にウィリアムを殺す気があったらとうに殺している。
自分の手を汚さなくても、さっきの刺客を見逃せばウィリアムを殺せていた。
それは筆頭家老も分かっているのだろう。
まあ、完璧な治療薬を手に入れていたら俺に頼りはしなかっただろうがな。
「分かった、全部俺に任せろ」
まずは体内に入った毒を中和する成分を送り込まなければいけないが、俺の予測通りの成分かどうかウィリアムの血液で確認する。
とはいえ採血する必要などなく、手首で脈をとりながら魔術で確認すればいい。
予想通りの成分だったから、そのまま手首から中和する成分を魔術で流し込む。
体力が極端に落ちているから、手首から塩分や糖分などの血中濃度が正常値になるように栄養も流し込む。
血中栄養濃度が正常値になったら、内臓機能も高めて肝臓等にエネルギーを備蓄させ、毒で破壊された身体の回復に使うエネルギーを身体中に分散備蓄させる。
急ぎの場合なら、回復魔術と栄養補給魔術を同時に行うのだが、今回は時間もあるし、この後の事も考慮して筋肉も皮下脂肪も骨も元以上に強化しておく。
さて、そろそろ目を覚ましてもらおうか。
判断を誤れば自分の命だけでなく、主君の命まで危険になる。
自分では俺に勝てない事は痛いほど分かっている。
味方を呼びたくても、その中に刺客が隠れている可能性もある。
だが、その表情を見れば時間がないのも確かだろう。
領主私室の防御力は強くても何か大きな代償があるのかもしれない。
「頼みます、城伯閣下を御守りください」
本当に時間がないのか、即断即決できる男なのか、直ぐに返事を返してきた。
一緒に領主私室に入ったが、なんだか懐かしい。
前回ここに来てからそれほど日数は経っていないのだがな。
ベットに寝ているウィリアムは前回会った時よりも明らかにやつれている。
毒の影響だろう、肌の色がどす黒くところどころ赤い斑点がある。
俺の知る限り致死性の毒だが、代謝を落として毒の影響を遅らせたのだろう。
「城伯閣下、解毒剤は手に入りませんでしたが、緩解薬は手に入りましたぞ」
おいおいそれじゃ駄目だろ、ちゃんと解毒剤を手に入れておけよ。
そう言いたいところだが、難しいのも分かっている。
ここまで進行した毒を無効化するには、ダンジョン最深部でドロップされる薬が必要だが、そう簡単に手に入れられる物じゃない。
まして毒を盛ったのがトマスで、エクセター侯爵の手先が領内に乗り込んできている状況では、薬収集に全力を注ぐ事など不可能だからな。
「まて、この毒なら俺の治癒魔法で治す事ができる。
どうする、俺を信用するか、自分で何とかするか、直ぐに選べ。
お前が家臣として何とかするというのなら、俺はこの足でエクセター侯爵を殺しに行くが、ウィリアムを治してくれと言うのなら、ウィリアムを治してから話し合ってエクセター侯爵への報復方法をきめる」
「治して下さい、お願いします」
即断即決だったな、まあ、俺にウィリアムを殺す気があったらとうに殺している。
自分の手を汚さなくても、さっきの刺客を見逃せばウィリアムを殺せていた。
それは筆頭家老も分かっているのだろう。
まあ、完璧な治療薬を手に入れていたら俺に頼りはしなかっただろうがな。
「分かった、全部俺に任せろ」
まずは体内に入った毒を中和する成分を送り込まなければいけないが、俺の予測通りの成分かどうかウィリアムの血液で確認する。
とはいえ採血する必要などなく、手首で脈をとりながら魔術で確認すればいい。
予想通りの成分だったから、そのまま手首から中和する成分を魔術で流し込む。
体力が極端に落ちているから、手首から塩分や糖分などの血中濃度が正常値になるように栄養も流し込む。
血中栄養濃度が正常値になったら、内臓機能も高めて肝臓等にエネルギーを備蓄させ、毒で破壊された身体の回復に使うエネルギーを身体中に分散備蓄させる。
急ぎの場合なら、回復魔術と栄養補給魔術を同時に行うのだが、今回は時間もあるし、この後の事も考慮して筋肉も皮下脂肪も骨も元以上に強化しておく。
さて、そろそろ目を覚ましてもらおうか。
31
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ
ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた
いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう
その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った
だけど仲間に裏切られてしまった
生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい
そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる