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第四章

第120話:保存食従軍食

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「順調に国造りができていますね」

 レイラ皇后の言葉通りだった。
 魔境と魔力を活用して莫大な量の食糧を創り出した事で、食糧不足で飢饉になるはずの一年目を一人の餓死者も出すことなく乗り越えた。
 荒廃した農地の再建が十分ではない二年目も、一人の餓死者も出さなかった。
 それどころか大陸全人民三年分の食糧を確保できていた。

 全てがリカルド聖帝の力だけではない。
 家臣国民も少しでも豊かになりたくて、家族にいい暮らしをさせたくて頑張った。
 リカルド聖帝の政策で、騎士団も徒士団も率先垂範して屯田した。
 海魔や魔魚を狩り海藻を活用する方法もリカルド聖帝が伝え、今までは塩以外ほとんど利用できない海から食料が得られるようになった。
 
 特に塩を活用した長期保存可能な食品が積極的に作られた。
 昔から嗜好品としても利用させていた醸造酒。
 古酒の生産備蓄には多くの人が積極的だった。
 全国民が酒を長期保存できる知識と技術を会得するようにした。
 泡盛、日本酒、ウイスキー、ブランデーなど色々な原料から古酒が試作された。

 主食となる穀物も長期保存が考えられた。
 二十年もの長期保存が可能な糒が大量に生産備蓄された。
 リカルド聖帝の前世の記憶と知識を正確に再現できれば、小麦・白米・トウモロコシ・砂糖は三十年以上の保存が可能だった。
 だが容器や環境を再現する事が難しかった。
 最適な状態での缶詰や瓶詰などはとても再現できなかった。

 だから糒にしての二十年保存だった。
 米を稲や籾の状態にしての九年保存だった。
 それに次いで九年保存ができるのは粟だった。
 他の穀物を魔族来襲時に備える城砦備蓄庫で保存できる期間は二年と定めた。
 だが籠城用の備蓄食糧には塩も絶対に必要だった。

 だから百年以上保存できる塩分二十パーセント以上の梅干を備蓄食糧にした。
 三十年以上保存は可能だが管理に技術と経験と手間がかかるなれずしは止めた。
 鮒寿司などは嗜好品として食べたい人間が個人的にやればいい。
 酒に関しては各家庭でも作られている。
 備蓄食糧に古酒があるのは籠城の苦しみを軽減させる効果に比べて、管理の手間が少ない事と、価値が出た長期保存古酒を売ることができるからだ。

 糒と梅干を大量に生産して備蓄するのは籠城の為だけではなかった。
 リカルド聖帝は魔国への逆侵攻も考慮に入れていた。
 直ぐには不可能だが、人口を元の三倍にした時の事を今から考えていた。
 二十年後、いや三十年後になれば人口は三倍どころか五倍六倍になっている。

 しかも三十年かけて文武と魔術を学ばせることができる。
 そうなれば両魔国へに逆侵攻も不可能ではない。
 何も魔国を占領する必要などない。
 大陸を護るために攻勢防御を仕掛けることができればいい。
 リカルド聖帝はそう考えていた。
 その為に今から従軍用の食糧を備蓄しようとしていた。
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