上 下
103 / 127
第三章

第103話:家内安全

しおりを挟む
 リカルド王太子とレイラ王太子妃の謀略は見事に成功した。
 レイラ王太子妃が言っていた通り、品性下劣な連中だった。
 リカルド王太子が期待していたような思いとどまる者はいなかった。
 リカルド王太子が排除しようとしていた小役人と小悪党、国の物資や武器を横流ししようとする人間と接触して、自分達も利を得ようとしたのだ。

 小悪人はレイラ王太子妃の側近を利用して国境を通過しようとした。
 レイラ王太子妃の側近は、レイラ王太子妃の権力と戦場見学の役目を利用して、物資を持って国境線を越えようとした。
 さらにレイラ王太子妃の側近は皇国に物資や武器を横流ししようとした。
 リカルド王太子はレイラ王太子妃の側近全員が加わった時点で一斉に逮捕した。

 彼らはレイラ王太子妃の名を使って権力を振りかざし、逮捕しようとした憲兵に頑強に抵抗した。
 だがその場にリカルド王太子が現れた事で今度は懇願に切り替えた。
 リカルド王太子はその見え透いた演技に唾棄しながら憲兵から詳しく話を聞いた。
 そして言い放ったのだった。

「この件にレイラ王太子妃に関与しているのなら、側近を使って私利私欲を貪ろうとした罪で処刑する」

 その言葉を聞いたレイラ王太子妃の側近は恐怖に震えあがった。
 リカルド王太子が本気なのだとようやく悟ったのだ。
 このままではレイラ王太子妃と一緒に自分達も殺されると考えた彼らは、今度は皇国の力を背景に助かろうとした。

「そんな事をすれば皇国と戦争になりますぞ」

 それを聞いたリカルド王太子の眉一つ動かさず顔色も変えずに言い放った。

「人族の存亡をかけた魔王軍との戦いに足を引っ張るようなら、それが例え皇国であろうと攻め滅ぼすのみ。
 私の妃であろうと跡継ぎであろうと関係ない。
 人族の敵は容赦なく殺す」

 レイラ王太子妃の名も皇国の力も全く役に立たない事を、彼らはようやくこの時初めて悟ったのだった。
 彼らは泣き叫んで許しを請うたが、一顧だにされなかった。
 全員がその場で鞭打ち刑にされた。
 女であろうと一切容赦されなかった。

 いよいよ処刑が実行されようとした時、あらかじめ控えていたレイラ王太子妃の特使が、必死に急いでやってきたように見せかけて現れた。
 平身低頭許しを請い、彼らの助命嘆願をした。
 リカルド王太子は渋々罪一等を減じ、恩赦も特赦も許さない終身重労働刑とした。
 同時に側近から国家反逆罪をだしたレイラ王太子妃は厳重注意された。
 さらに皇国にも、二度と品性下劣な反逆者をレイラ王太子妃の側近として送らないように、お願いという形の最後通告を出した。

 表面的な事実が皇国をはじめとした大陸各国に伝わった。
 皇国は次に何かあった場合レイラ王太子妃が処刑され、皇国にリカルド王太子が攻め込んで来ると考えた。
 南部同盟参加国は、このままでは自分達が確実に攻め滅ぼされると考えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

病の婚約者に、聖女の妹が寄り添う事になり…私は、もう要らないと捨てられてしまいました。

coco
恋愛
病の婚約者を、献身的に看病していた私。 しかし、彼の身体がそうなったのは、私のせいだとされてしまう。 そして彼には、聖女である私の妹が寄り添う事になり…?

なんでそうなった…

kCo
ミステリー
1分で読めるショートストーリー 是非読んでみてください

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。 「俺があなたのことを姉と呼んだことがありましたか?」 そういえば……ないかも。 でも……血がつながっていなくても、姉と弟では結婚できないんじゃない? 「法改正は合法だよ」 そうね。お酒がおいしいわ。 ロゼが突然の求愛に動揺しているさ中、エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載されています。

犬猿の仲の異性の同級生がまさかMMOの嫁だったなんて!

モッフン
恋愛
俺は大木一樹、MMOをこよなく愛する高校二年生だ、最近ゲーム内で嫁ができたのだが‥まさかそんなことって‥‥そんなことって!

追放されたパーティーに戻りたい 〜俺が悪かった。どうか許してください〜

夜桜紅葉
ファンタジー
シラネは善人にも悪人にもなりたくなかった。 気まぐれに善行と悪行を繰り返すことが正しい生き方なのだと信じていた。 そういう生き方を曲げなかった結果として、冒険者パーティーを追い出されてしまったシラネは、他のパーティーを転々とした結果、元のところよりも遥かに実力が劣る居場所を見つける。 そのパーティーには、昔気まぐれで助けた元のパーティーメンバーの妹がいて…… 元のパーティーに戻りたいと願うシラネは、今のパーティーメンバーと接しながら自分自身の行動を省みる。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+、ツギクルでも掲載してます。

兵士から始まる異世界物語!〜異世界に召喚されたら記憶が無いんですが!〜勇者と気が付かれず兵士として売られてから学園に入り成り上がる物語〜

KeyBow
ファンタジー
ゲームのβテストの筈が、実は異世界召喚だった。しかし召喚時に何かの力でエラーが発生し、本来受けられる筈のサポートが無いまま生き残りを賭けた兵役が始まるのであった。自分も周りの者達も運命が捻じ曲げられる。本来とは違う成り方で兵役に就き、記憶を亡くしたまま周りの勧めがあり、魔法学園に入る事を決め、運命の出会いが有り、物語はここから始まる。

処理中です...