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第二章

第75話:籠城戦・ダドリー伯爵ローザ視点

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 リカルド王太子には強がりを言ったが、普通の城ならとても厳しい状況だ。
 今魔王軍に包囲されている城は、全てリカルド王太子が築城した城だから、濠が広く深く、城壁が厚く高いので、オーガやトロール、サイクロプスや巨大種モンスターも撃退できているが、他の城なら簡単に落城していただろう。
 
 今度の魔王軍は今までとは全く違う。
 伝説にあった飛行種のモンスターは加わっていないが、同じように伝説で語られていた巨大種が加わっている。
 油断していると飛行種の奇襲を受けてしまう可能性がある。
 まあ、リカルド王太子が飛行種対策の防御魔法陣を用意してくれているから、最悪の状況にはならないと思うのだが、問題は魔力だ。

 魔王軍が損害を無視した攻撃を仕掛けてきた時には、リカルド王太子が造ってくれた城壁であろうと破壊される可能性がある。
 破壊されなくても、蜘蛛系の巨大種などが城壁を越える可能性もある。
 そんなことになってしまったら、領都に残っている女子供が死傷してしまう。
 それを防ぐには防御魔法陣を展開しなければいけないが、広大な領都全体に防御魔法陣を展開するよりは、宮城だけに展開した方が魔力が長持ちする。

 問題はリカルド王太子が残してくれた魔宝石や魔晶石の魔力がどれだけもつのか。
 後はリカルド王太子が私に授けてくれた魔力がどれくらいの量なのかだ。
 私だって領都を放棄して宮城で籠城戦を行いたいわけではない。
 だが、できる事ならリカルド王太子の負担にはなりたくはない。
 あの悪夢に苦しむ姿を見てしまったら、心に負担などかけられない。

 領都の民が皆殺しになったらリカルド王太子は凄まじい自己嫌悪に苦しむだろう。
 だが、私とコンラッドが死ぬようなことがあれば、それ以上に苦しむ。
 リカルド王太子を苦しませないためなら、領民を見捨てて逃げた臆病者卑怯者と罵られても構わない。
 所詮下賤な元傭兵に王侯貴族の誇りなどないのだと謗られても構わない。
 実際傭兵時代は生き残るために何だってやって来たのだから。

 だが出来る事なら、私とコンラッドはもちろん、領都に残る人も誰一人死なせたくないのだ。
 一人でも死んでしまったら、リカルド王太子の繊細な心から血が噴き出す。
 私は元傭兵だ、引き際逃げ時は誤らない。
 リカルド王太子には逃げると言ったが、領都に残った民を見捨てて逃げてしまったら、リカルド王太子に取り返しのつかない心の傷を残してしまう。
 恥も外聞もなくリカルド王太子に助けを求めて侵攻作戦を中断させた方が、リカルド王太子の心の傷を小さく浅くすることができる。

「王国第二騎士団長と自警団長に伝令。
 領都に防御魔法陣が展開されたら、速やかに全領民を宮城に逃げさせるように伝えるのだ、分かったな」
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