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第二章

第68話:復活・元勇者視点

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「殺せ、殺せ、殺せ、逆らう奴は皆殺しにしろ。
 国王に逆らう奴は謀叛人だ、情け容赦なく殺せや」

 くっくっくっくっ、ようやくだ、ようやく復活の時が来た。
 リカルドの臆病者のせいで、長年かけて築き上げたモノを全て失った。
 フィエン公爵家を手に入れたら、勇者の名声と誼を結んだ王家の後押しを受けて、フィフス王家にとって代わる心算だったのに、リカルドの野郎のせいで……
 だが、俺が奴を舐め過ぎていたのも確かだ。
 二度と同じ過ちを犯さん、なんとしても失ったモノ以上のモノを手に入れてみせる、その為なら人を捨てても構わん。

「ロイド大将軍閣下、国王陛下が今回の謀叛人討伐の褒美を与えるとの事でございます、どうか今宵の舞踏会に参加願います」

 愚かな王だ、俺に殺される可能性を全く考えていない。
 まあ、そんな馬鹿だからこそ、リカルドの要請を無視して俺を匿っていたんだ。
 知力も武力もない、実戦に出る度胸もないくせに、名声だけは欲しがる虚栄心の塊のような愚王。

 俺を操ってフィフス王国を手に入れようとしていたのだろうが、自分が俺に操られていた事、今も操られ続けている事に全く気がついていない。
 軍を完全に掌握したら、全てを話してやる、その時にはどれほど悔しがるだろう。
 今からその顔を想像するだけで愉快で、思わす笑みが浮かんでくるぜ。
 やはり俺には勇者よりも覇王の方が向いていたようだ。

「ロイド、楽しく悪事を考えているのだろうが、実際どうするんだ。
 人間の側で戦うのか、それとも魔王軍の誘いに乗るのか。
 中途半端に動いていると、足元をすくわれるぞ。
 俺達が愚かな王に付け入って操っているように、魔王が俺達を操ろうとしているかもしれんのだぞ」

 ガイスの野郎、盾役しかできない馬鹿のくせにつけあがりやがって、俺様に意見するなど百年早い。
 この場で叩き殺してやりたいが、パーティーメンバーが見ている前では不味い。
 まだパーティーメンバーには利用価値があるからな。
 戦いの最中に敵に殺されたように見せかけて始末したいが、平民の叛乱軍程度が相手では、それも難しいし、どうしてくれようか。

「ガイス、それは聞かなくても分かっている事でしょう。
 両方に上手い顔をしておいて、勝ちそうな方に味方するのよ。
 ガイスは中途半端は危険だと言うけれど、中途半端が一番いいのよ。
 どちらかに偏り過ぎたら、生き残れなくなってしまうわ。
 私達には中途半端が許されるだけの強さがあるのよ。
 咎められそうになったら、咎める方を叩き潰してやるだけよ」

 エルナの言う通りだ、戦力が決定的にどちらかに傾かないようにして時間を稼ぎ、俺達自身の戦力を蓄えなければいけない。
 他人の力を利用するだけでは限界があると、前回で思い知った。
 この国の軍を乗っ取って俺の私兵にするか、俺が王を名乗って指揮権を奪う。

 それまでは生意気でもガイスは必要だ、次の盾役が見つかるまでは、ガイスを殺すのはやめておいた方がいいな、腹立たしいが仕方がない。
 まあ、こうして表に出た以上、いずれはリカルドに俺の事が伝わるだろう。
 その時に真っ先に殺されるのは盾役のガイスだ、俺はそれを待つだけでいい。

 だが、そうなると、今のこの国の戦力では勝ち目がない。
 リカルドの勢力圏からは遠いが、いずれ必ずやってくる。
 リカルドの目を他に向けておくには、この国から遠い場所で魔王軍に暴れてもらう必要がある。
 その時のために、魔王軍との距離をもう少し近づけておくか。
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