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第二章

第63話:休息と準備

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 リカルド王太子は家族と共にゆったりとした時間を過ごしていた。
 特にバートランドとコンラッドが起きている時間は、公務をしなくなった。
 ただ家族が寝ている時間は、国内貴族を粛清している間に荒れてしまった農地を回復させたり、魔境に近い農地で促成栽培する事を続けていた。
 これによって今回の件で食糧生産量が減る事はなくなった。

「王太子殿下、粛清した貴族領から報告書が届いております」

「そこに置いておいてくれ、バートランドとコンラッドが眠ったら目を通す」

 リカルド王太子は公然と公務よりも家族の時間を優先する態度を示した。
 その態度と国内貴族粛清時の態度から、人間不信になったリカルド王太子が、王太子に親しいモノ以外は見殺しにする心算だという噂が、一気に国内外に流れた。
 各地でリカルド王太子の今までの行動が比較検討され、その噂が真実かどうか真剣に話し合われた。
 そして誰もが、リカルド王太子が徐々に助ける人間の範囲を狭めているという結論に達することになった。

 婚約者と親友に裏切られた時には、フィエン公爵一族以外は助けようとした。
 フィエン公爵に忠誠を誓っていた家臣ですら助けて登用した。
 ウェルズリー王国に侵攻した時は、王侯貴族だけでなく家臣も追放した。
 王侯貴族や将兵に虐げられた民だけを助けた。
 今回は領主一族だけでなく家臣領民まで殺すと宣言していた。
 実際には殺さなかったが、王太子直轄領に組み入れたにもかかわらず、代官も守備隊も置かずに領民に自治させて、何時でも見捨てられるようにしている。

「魔王軍は大山脈の通路を広げて大陸に侵攻してくるだろう。
 それに備えて大陸側に新たに強力な防衛拠点を築かなければならない。
 恐らくウェルズリー城をはじめとした多くの城砦や村々を、放棄しなければならなくなるだろう。
 新たに築く城は、ウェルズリー領に住む全ての民を収容できるだけの広さが必要だし、糞尿による疫病対策も最初からしておかなければいけない。
 城内で少しでも食糧を生産できる構造もあらかじめ決めておく必要がある」

 リカルド王太子の言葉を聞いて、側近達は顔色を変えながらも、即座に王太子の想いに応えるべく確認する。

「我々はいかがさせていただけばいいでしょうか」

「義勇兵を動員して、魔境の木々をできるだけ多く伐採させてくれ。
 ノウェル辺境伯の関所と連動して防衛戦を行えるウェルズリー領の場所に、新たな城を築きたいから、そこに材木を運んでもらう。
 材木の乾燥は私の魔術で行うから心配しなくていい。
 石材の代わりに私が圧縮強化岩盤を創り出すから、君達は人手を確保してくれ」

 このリカルド王太子の決断は、直ぐに大陸中に広まった。
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