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第二章

第51話:煩悩

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 リカルド王太子は心から悩み苦しんでした。
 政略結婚の成果は十分で、新たに五十万の義勇兵が集まったという報告があった。
 老若男女問わずの数だから、実質的に戦える人数は十万ほどだが、それでも数としては十分なものだ。
 何時裏切るか逃げ出すか分からないような、腐った皇国貴族軍の半数は、旧ウェルズリー王国領に入る半分の行程で処分されている。

「バートランド、コンラッド、二人とも食べてしまいたいくらい可愛いな」

 二人の子供が生まれるまでは、政略結婚したレイラ第三皇女との間に生まれた子供を跡継ぎにしようと思っていた。
 だが実際に子供が生まれてしまうと、あまりの可愛さに、この子達に国を継がせたいと思ってしまうのだ。
 同時に、兄弟で跡目を巡って殺し合うような事は防ぎたいとも思ってしまう。
 支離滅裂な考えに内心煩悩しながら、それを全く表に出さないようにして、家族五人の団欒を愉しんでもいた。

「リカルド様、ローザと話し合ったのですが、私達はリカルド様の癒しとなり心の支えとなりたいのです。
 リカルド様を悩ますような存在にはなりたくないのです。
 ここはキッチリと身分を決めておいた方がいいと思うのです」

「……私達は口の利き方もぞんざいだ。
 今さら改めようと思っても、失敗して陰口を叩かれるだけだ。
 ライラはまだ上手くやっているが、私は無理だしやる気もない。
 王都に行って社交をする必要もない、気楽な地位、特権をもらえないか」

 ライラとローザの言葉がリカルド王太子を救ったが、そんな二人の事が可哀想にもなって、できるだけの事をしてあげたいと思う気持ちが、リカルド王太子の心の中に生まれてしまうのだ。

 ライラにカウリー女伯爵の爵位を与え、フィエン地方と王都の間に広大な領地を与えると父王に使者を送った。

 ローザにダドリー女伯爵の爵位を与え、アクス城伯領と王都の間に広大な領地を与えると父王に使者を送った。

 ライラとの間に生まれた庶長子のバートランドには、アイザックス公爵の地位を与え、将来はカウリー伯爵領を継ぐと父王に使者を送った。

 ローザとの間に生まれた庶次子のコンラッドには、ゴードン公爵の地位を与え、将来はカウリー伯爵領を継ぐと父王に使者を送った。

 問題は父王ペンドラがそれを認めるかどうかだった。
 認めなければ無理矢理父王を退位させる覚悟をしていた。

「カウリー伯爵家」
ライラ   :傭兵上がりの女騎士だったがリカルドの側室に
「アイザックス公爵家」
バートランド:リカルドとライラの間に生まれた庶長子
「ダドリー伯爵家」
ローザ   :傭兵上がりの女騎士だったがリカルドの側室に
「ゴードン公爵家」
コンラッド :リカルドとローザの間に生まれた庶次子
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