上 下
29 / 127
第一章

第29話:お風呂と恥じらい・ライラ視点

しおりを挟む
「風呂に入る、ライラも一緒に入ろう」

 私はできるだけリカルド王太子殿下の願いはかなえてあげたいと思っている。
 夜毎悪夢にうなされるリカルド王太子殿下の姿を見て、少しの愛情と割り切りで夜を供にしたが、その夜からリカルド王太子殿下がうなされないようになり、自分が遊びではなく本気で求められているのだと思えた。
 別れろと言う国王陛下からの命令に毅然とした態度で逆らってくださり、公妾の身分を国王陛下に認めさせてもくださった。
 その頃から、妙に恥ずかしさが出てしまっている……

「あの、でも、恥ずかしくて……」

 純粋に裸を見られるのが恥ずかしくなったのも確かです。
 今さら恥じらいを感じると言っても、誰も信じてくれないでしょう。
 言葉遣いを直していると言ったら、昔の戦友は傭兵から売春婦に落ちたのかと罵るかもしれないが、本当に恥ずかしく思ってしまうようになったんだ!
 殿下を護るための筋肉でゴツゴツした身体は、まだそれほど恥ずかしくはない。
 だが、でも、身体中に残る刀傷や、打撲の跡の黒ずみを見られるのは恥ずかしい。

「何を気にしているんだ、全部ライラが一生懸命生きてきた証じゃないか。
 他の誰が何を言っても気にするな、私はライラの身体を美しいと思う。
 それでは駄目なのかい?
 まあ、いい、恥ずかしいのを無理に見せろとは言わないよ。
 服を着たままでいいから、背中を流してくれないかい」

 本当に、殿下は女を泣かせるのが上手過ぎる。
 そんな女を喜ばす言葉は、私とローザ以外には絶対に言わないのがまた嬉しい。
 皇国の姫が嫁いで来られたら、私とローザが呼ばれる事も極端に減るのは分かっている、今しかない、前線にいる今しか殿下を独占できないのだ。
 残された時間はもうほとんどない、ここで恥ずかしがっていたら、後々凄く後悔するかもしれない。

「ありがとうございます、では一緒に入らせていただきます」

「こちらこそありがとう、無理せず自分のタイミングで出るんだよ。
 女性は身体を温めた方がいい、私も長風呂の方だが、私に合わせなくていい」

 ここは変に遠慮しない方がいい、殿下は子供を望まれている。
 よく身体を温めた方が妊娠しやすいというのが殿下のお考えだ。
 理由は分からないが、殿下が言われるのならそうなのだろう。
 別に無理して長湯しているわけではない、本当にとても気持ちがいいのだ。
 最前線の野戦陣地だというのに、ここには広くて立派な風呂がある。
 乱戦時には湯舟は濠、仕切りは塀の役目を兼ねているのが、殿下らしくて笑ってしまうが、そのお陰でうるさ型の目付も何も言えなくなっている。
 まあ下手な事を口にしたら、近衛隊の放つ流れ矢に当たって死ぬだけですけどね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黒の瞳の覚醒者

一条光
ファンタジー
 あらすじ  普段通りに眠りに就いたはずが朝を迎えたのは一面に広がる草原の中だった。  何も分からないまま航は彷徨い、日本ではありえない町に辿り着き情報を得る為に町に入るがそこでは異界者は蔑みと恐怖の存在だった。  恐ろしい異世界人の仕打ちに怯え放浪する中、餓死寸前で優しい女性に出会う――。  現在フィオ編の更新は現在止まっています。  小説家になろうに投稿されているものと同じものになります。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー

夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。 成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。 そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。 虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。 ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。 大人描写のある回には★をつけます。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

処理中です...