28 / 127
第一章
第28話:駐屯とお風呂
しおりを挟む
リカルド王太子の本心は、人族の国と接しているノウェル辺境伯領に駐屯した方が、輸送隊が襲撃されるなどの不測の事態に備えられるというモノだった。
だがリカルド王太子が西魔境付近に駐屯しなければ、元フィエン公爵領の民は、リカルド王太子に見捨てられたと思ってしまう。
そこを魔王軍に突かれて寝返りを画策されたら、また国内で争う事態になってしまうので、次善の策を採用することになった。
「リカルド王太子殿下、魔王軍が一斉に大陸各地に現れました」
夕食後、これから風呂に入ろうかという時間に、ノウェル辺境伯から急ぎの伝令がやってきて、予想通りの情報を届けてきた。
「我が国の輸送隊に被害はあったのか?」
リカルド王太子は一番気になる事を確認した。
「今入っている情報では、我が国の輸送隊は襲撃を受けていません」
リカルド王太子が最初から行っていた、過剰なまでの護衛戦力のお陰で、機動力と弱者襲撃に重点を置いている魔王軍遊撃部隊は、輸送隊を避けているようだった。
リカルド王太子は、大陸各国で傭兵や冒険者や義勇兵を募っていたから、交易国からの帰路には多数の兵力を保有していた、
大量の商品を輸送しながら交易国に行くときも、募兵を行う将兵、後に指揮官となる優秀な騎士や従騎士が、新兵に行軍と夜営の訓練をさせつつ護衛をしていたから、多少の被害は受けるだろうが、魔王軍遊撃部隊を迎撃できるだけの十分な戦闘力を持っていた。
「ではノウェル辺境伯に、今まで通り護衛をつけて交易を続けるように伝えてくれ。
ただ輸入品の値段が高騰するだろうから、売買の価格改定はノウェル辺境伯に一任するとも伝えてくれ。
伝令に十分な食事と休める部屋を与えてくれ」
「承りました」
「有難き幸せでございます」
リカルド王太子の命で侍従の一人が伝令を案内して出て行った。
想定通りの事が起こったのだが、リカルド王太子は起こらない場合も考えていた。
不要になった策を全て頭の中から消して、新たに確認作業を頭の中で行わなければいけないが、それは別に風呂に入りながらでもできる事だった。
前世の人格は、風呂に入りながらの方がいい閃きができると思っていた。
ただ最近のリカルド王太子は、多少自分の欲望を抑える力が弱っていた。
「風呂に入る、ライラも一緒に入ろう」
本当は一人で入浴している方がいい閃きが出るのに、一度一線を超えたリカルド王太子は、許される範囲の欲望は享受すると決めていた。
人族の中では最強だと自負していたが、魔王が相手では勝てないかもしれない、殺されるかもしれないと不安に思っていた。
殺された時に悔いが残らないように、生きている間に愛を手に入れたかったのだ。
王位は継げなくても、自分の子供をこの世界に残せるのなら、それで十分幸せだと考えていた。
だがリカルド王太子が西魔境付近に駐屯しなければ、元フィエン公爵領の民は、リカルド王太子に見捨てられたと思ってしまう。
そこを魔王軍に突かれて寝返りを画策されたら、また国内で争う事態になってしまうので、次善の策を採用することになった。
「リカルド王太子殿下、魔王軍が一斉に大陸各地に現れました」
夕食後、これから風呂に入ろうかという時間に、ノウェル辺境伯から急ぎの伝令がやってきて、予想通りの情報を届けてきた。
「我が国の輸送隊に被害はあったのか?」
リカルド王太子は一番気になる事を確認した。
「今入っている情報では、我が国の輸送隊は襲撃を受けていません」
リカルド王太子が最初から行っていた、過剰なまでの護衛戦力のお陰で、機動力と弱者襲撃に重点を置いている魔王軍遊撃部隊は、輸送隊を避けているようだった。
リカルド王太子は、大陸各国で傭兵や冒険者や義勇兵を募っていたから、交易国からの帰路には多数の兵力を保有していた、
大量の商品を輸送しながら交易国に行くときも、募兵を行う将兵、後に指揮官となる優秀な騎士や従騎士が、新兵に行軍と夜営の訓練をさせつつ護衛をしていたから、多少の被害は受けるだろうが、魔王軍遊撃部隊を迎撃できるだけの十分な戦闘力を持っていた。
「ではノウェル辺境伯に、今まで通り護衛をつけて交易を続けるように伝えてくれ。
ただ輸入品の値段が高騰するだろうから、売買の価格改定はノウェル辺境伯に一任するとも伝えてくれ。
伝令に十分な食事と休める部屋を与えてくれ」
「承りました」
「有難き幸せでございます」
リカルド王太子の命で侍従の一人が伝令を案内して出て行った。
想定通りの事が起こったのだが、リカルド王太子は起こらない場合も考えていた。
不要になった策を全て頭の中から消して、新たに確認作業を頭の中で行わなければいけないが、それは別に風呂に入りながらでもできる事だった。
前世の人格は、風呂に入りながらの方がいい閃きができると思っていた。
ただ最近のリカルド王太子は、多少自分の欲望を抑える力が弱っていた。
「風呂に入る、ライラも一緒に入ろう」
本当は一人で入浴している方がいい閃きが出るのに、一度一線を超えたリカルド王太子は、許される範囲の欲望は享受すると決めていた。
人族の中では最強だと自負していたが、魔王が相手では勝てないかもしれない、殺されるかもしれないと不安に思っていた。
殺された時に悔いが残らないように、生きている間に愛を手に入れたかったのだ。
王位は継げなくても、自分の子供をこの世界に残せるのなら、それで十分幸せだと考えていた。
0
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
転校生はおんみょうじ!
咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。
ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。
花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。
なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。
病の婚約者に、聖女の妹が寄り添う事になり…私は、もう要らないと捨てられてしまいました。
coco
恋愛
病の婚約者を、献身的に看病していた私。
しかし、彼の身体がそうなったのは、私のせいだとされてしまう。
そして彼には、聖女である私の妹が寄り添う事になり…?
婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた
鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。
幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。
焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。
このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。
「俺があなたのことを姉と呼んだことがありましたか?」
そういえば……ないかも。
でも……血がつながっていなくても、姉と弟では結婚できないんじゃない?
「法改正は合法だよ」
そうね。お酒がおいしいわ。
ロゼが突然の求愛に動揺しているさ中、エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。
「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」
「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」
「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」
ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。
※この話はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載されています。
追放されたパーティーに戻りたい 〜俺が悪かった。どうか許してください〜
夜桜紅葉
ファンタジー
シラネは善人にも悪人にもなりたくなかった。
気まぐれに善行と悪行を繰り返すことが正しい生き方なのだと信じていた。
そういう生き方を曲げなかった結果として、冒険者パーティーを追い出されてしまったシラネは、他のパーティーを転々とした結果、元のところよりも遥かに実力が劣る居場所を見つける。
そのパーティーには、昔気まぐれで助けた元のパーティーメンバーの妹がいて……
元のパーティーに戻りたいと願うシラネは、今のパーティーメンバーと接しながら自分自身の行動を省みる。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+、ツギクルでも掲載してます。
兵士から始まる異世界物語!〜異世界に召喚されたら記憶が無いんですが!〜勇者と気が付かれず兵士として売られてから学園に入り成り上がる物語〜
KeyBow
ファンタジー
ゲームのβテストの筈が、実は異世界召喚だった。しかし召喚時に何かの力でエラーが発生し、本来受けられる筈のサポートが無いまま生き残りを賭けた兵役が始まるのであった。自分も周りの者達も運命が捻じ曲げられる。本来とは違う成り方で兵役に就き、記憶を亡くしたまま周りの勧めがあり、魔法学園に入る事を決め、運命の出会いが有り、物語はここから始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる