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第一章

第6話:復活

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 リカルド王太子が目覚めて直ぐにやった事は、王城内の残ってくれていた、結婚を祝うために集まって来てくれていた、国内外の王侯貴族に対するお詫びだった。
 自らを飾ることなく、ただ淡々と真実を語り、わざわざ足を運び祝いの品を持参してくれた王侯貴族の方々に、深々と頭を下げて結婚式の中止を詫びて回った。
 勇者や婚約者への恨み言を一言も口にせずに。

「やあ、ジョン、元気にしていたかい、何か困った事はないか?
 久しぶりだね、ミルド、今日も鍛冶仕事かい、名剣を期待しているよ。
 お、マーサさん、腰の痛みはどうだい?」

 リカルド王太子は精力的に王都内を見て回り、精力的に働いていた。
 勇者と婚約者に裏切られた影響など、微塵も見せなかった。
 城壁にいたみはないかを、民家の強度は問題ないか、倉庫の備蓄資材にはどれくらいの余裕があり、籠城前に何を幾ら使って大丈夫なのか。
 リカルド王太子は、死に匹敵するほどの裏切りと失恋のショックで思い出した前世の記憶を、できる限り活用する心算だった。

「お可哀想なリカルド様、十日も寝込まれるほどの痛手を受けられたのに、目覚められたら直ぐに私達のために働いでくださって……」
「あの恩知らずと雌犬だけは絶対に許さねえ、もし従軍の募集があれば、俺は志願するからな、お前もその覚悟をしておけよ」
「はいよ、家の事は任しておくれ、あんたはリカルド様の仇をとっとくれ」

 王都の、いや、王家直轄領の全ての民が、リカルド王太子に感謝していた。
 魔王軍との激しい戦いにもかかわらず、誰が、税を上げることなく民が飢えないようにしてくださっていたのか、彼らはようやく知ったのだ。
 王家と離反したフィエン家が、四割だった税を八割にした事で、誰が一番民の事を考えてくれていたのか、思い知ったのだ。

「リカルド王太子殿下、もうフィエン城へ接近するのは不可能だと斥候隊が申しておりますが、いかがいたしましょうか?」

 リカルドが前世の記憶を取り戻してから三十日、魔王軍が西と北の魔境から現れ、人間を皆殺しにしようと襲いかかって来た。
 勇者とアセリカが、王都から逃げ出すのに使った嘘が、本当になったのだ。
 北から現れた魔王軍は、傭兵を中心に新たに設立された、第二王太子騎士団と第五騎士団が、野戦築城されたアクス城を要にして撃退した。
 クバント卿が叙爵されたアクス城伯という爵位は、王家の騎士団を指揮下に置くための配慮だったのだ。

「フィエン城が陥落してしまうと、多くの民が魔王軍に殺されてしまう。
 この場所に野戦築城して、第二騎士団に護らせる。
 第二騎士団が動けなくなった分は、新たに傭兵を募集して遊軍を設立する」
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