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3話

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「はい、殿下を教導できなかった事、申し訳なく思っております」

 本当は全く悪いと思っていません。
 あのバカ王太子を教え導くなど不可能です。
 ですが今の陛下になにを言っても無駄です。
 父としての愛情を押し殺し、国王としての責任を全うされたのです。
 多少の八つ当たりは受けるしかありません。
 それに、陛下は私が悪いと思っていない事に気がついています。
 気がついていて、それでも内心の怒りと理性を戦わせているのです。

「セイラがバカ王太子の教導など不可能だと思っているのは分かっている。
 余もその事は理解している。
 だが自ら子供を処罰しなければいけない親の憎しみはどうにもならぬ。
 八つ当たりなのは十分理解している。
 理解しているが、それでも、セイラの顔は見たくない。
 我が王国内にいられるの嫌だ。
 我が家臣国民とするのも嫌だ。
 だからこの国から出て行ってもらう。
 実質被害者のセイラに罪を問う事はできん。
 だから留学という形で出て行ってもらう。
 だが二度と帰ってくることは許さない。
 分かったな!」

「はい、お受けいたします」

 私の留学が決まりました。
 大陸の貴族が公式に留学するとなると、大陸連合魔法学院になるでしょう。
 そこで私は新たな人生を見つけないといけません。
 実質追放刑です。
 この国に戻って嫁ぐことは不可能です。
 嫁入りのための台所領も許されないかもしれません。
 何か手に職をつけた方がいいでしょう。

 それにしても、よくこの程度ですみました。
 陛下が暗愚なら、王太子の話を鵜呑みにして、私は殺されていたかもしれません。
 殺されなくても、辺境の修道院に追放されていた可能性は高かったです。
 それが表向き留学なら、前歴に傷もついていません。
 生き直すには有利です。

 まあ、魔力も魔術も失ったこの世界で、魔法学院とはおかしいですが、確かに大昔には、魔力も魔術も存在したのです。
 そういう文献は幾らでも残っています。
 魔術式も魔法陣も記録されています。
 それを残しておくのも、大切な事には違いありません。
 いつかこの世界が魔力を取り戻すかもしれないのですから。

 そう考えれば、魔法学院に教師として残れれば、それが一番幸せかもしれません。
 私は昔から本を読むのが大好きです。
 役に立つ立たないに関係なく、新たな事を知りたいと思います。
 だから、お小遣いの大半を使って本を集めていたのです。
 ですがあの本全てを魔法学院に持っていくのは無理ですよね。
 それだけが心残りです。

「セイラ。
 直ぐに屋敷に戻って留学の準備をしなさい!
 明朝には王都を出ていってもらう」

 父上が非情な宣言をされました。
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