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1章

3話ノヴァ伯爵令嬢視点

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「この勝負、レイズ近衛騎士団長の勝利。
 異議ある者は申し出よ」

「……」

「誰も異議がないのなら、最初の約定通りとする。
 それで構わないな」

「「「「「はい」」」」」

 勝負は馬上槍試合になりました。
 グラント公爵家は自分達に有利な条件を通したと思っているでしょう。
 でも違うのです。
 双剣で有名な兄上様ですが、実は馬上槍の名手でもあるのです。

 勝負は一度でつきました。
 いえ、二度と言うべきかもしれません。
 兄上様がデイヴィッド卿を一撃で打倒されました。
 アシェルもクロフォード卿を一撃で打倒しました。

 イーサン殿下とリアム様は、決闘の条件で色々と悪巧みしたようですが、兄上様とアシェルの方が上手でした。
 もしかしたらロバーツ殿下も加わっておられるかもしれません。
 王国は忠勇兼備の武人を失わずにすみました。
 同時に兄上様とアシェルは、よき部下を配下に加える事ができました。

 馬上槍試合は、守らなければならない形式と、多少の制限があります。
 ですが、ほとんど実戦と変わりません。
 勝った方が、倒した相手の武具と馬を奪うだけでなく、相手の格式に応じた身代金をとる事ができるのです。

 今回の相手はハンター男爵が代闘士を務めていますが、グラント公爵家のリアムが決闘の相手となるのです。
 当然もらう身代金は公爵家の金額です。
 金貨で5千枚(五十億円相当)の約束です。
 敵国相手の実戦でなく、殺される心配がないからこの程度なのです。

 昔我が国の王がロビンソン王国に捕虜になった時は、身代金が金貨十万枚(千億円)でした。
 昔我が国がロビンソン王国の王を捕虜にした時は、身代金が金貨三十万枚(三千億円)でした。

 でもそれだけではありません。
 リアムと父親のグラント公爵が、私と父上に頭を下げなければなりません。
 婚約破棄の賠償金も支払わなければなりません。
 グラント公爵の名声は地に落ちました。
 イーサン殿下も大恥をかきました。

 兄上様とアシェルにそんな気はなくても、王位継承争いが表面化してしまいます。
 イーサン殿下は、失点を取り返そうと動きだされるでしょう。
 もう家とアシェルのバーンズ伯爵家を、味方にしようとは思わないでしょう。
 イーサン殿下とロバーツ殿下の争いを、内乱にまで発展させるわけにはいかないと、国王陛下も父上様もお考えでしょう。

 ですが、デイヴィッド卿とクロフォード卿を助命して、近衛騎士団と第五騎士団に移籍させたことが、ロバーツ殿下の評価をあげている事でしょう。
 兄上様たちが勝ったら配下にする。
 兄上様たちが負けたら、デイヴィッド卿を近衛師団の副騎士団長に、クロフォード卿を第五騎士団の副騎士団長に昇進させる。

 ロバーツ殿下が国王陛下に献策した決闘の条件です。
 忠勇兼備の優秀な騎士を失わないための決闘条件でした。
 この功績が、イーサン殿下とロバーツ殿下を決定的に対立させたかもしれません。
 イーサン殿下とグラント公爵家が次にどう動くのか、本当に心配です。
 尻軽悪女の欲のせいで、王国がガタガタになってしまいました。
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