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1章

2話ノヴァ伯爵令嬢視点

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 グラント公爵は、長男のリアムを助けるために、代闘士を立てると言うのです。
 しかも一対一ではなく、介添人も加えた二対二で戦うルールにしたのです。
 決闘と言う聖なる行いを踏み躙る、恥知らずなルール変更です。
 ですがこれを飲むしかありませんでした。
 第一王子イーサン殿下が介入してきたのです。

 王位継承で第二王子ロバーツ殿下を敵視するイーサン殿下が、ロバーツ殿下に味方するだろう兄上を殺そうとしているのです。
 恐ろしい事です。
 情けない事です。
 王位継承争いで、大切な臣下を殺そうとするのですから。

 しかも決闘で使う武器を、槍に限定してきました。
 兄上が得意なのは双剣術です。
 貴族や騎士の面目は剣です。
 国王陛下に忠誠を誓う儀式でも剣を奉じます。
 それを槍に限定するなど、兄上に不利なようにルールを捻じ曲げているのです。

 きっとグラント公爵家とイーサン殿下は、王国軍でも有数の槍の名手を代闘士と介添人とするでしょう。
 必ず兄上様を殺そうとするでしょう。
 ですがロバーツ殿下が味方してくださいます。
 アシェルが介添人を務めてくれることでしょう。

 兄上様と私とアシェルは幼馴染です。
 同じ家格の伯爵家として、幼いころから一緒に文武を学んだ来た間柄です。
 兄上は近衛騎士団長として、アシェルは第五騎士団長として、王家を護る支柱なのです。
 
 公平な目で見ても、王家とその重鎮たるグラント公爵家が国を大切に思うのなら、大切にすべき存在なのです。
 アメリアのような性悪女と天秤にかけていい存在ではないのです。
 それをこのような所まで行きつかせるとは、情けない限りです。

 決闘の代闘士はハンター男爵家のデイヴィッド卿と決まりました。
 王国第一騎士団所属で槍の名手です。
 騎士家の次男に産まれ、本来なら平民になる所を幼い頃から鍛錬を重ね、槍一筋で騎士に取り立てられ、四十代となって男爵の爵位まで賜る武人です。

 その介添人を務めるのは、タッカー男爵家のクロフォード卿と決まりました。
 王国第二騎士団所属の槍の名手です。
 この方は士爵家の三男に産まれ、デイヴィッド卿と同じように、本来なら平民になる所を幼い頃から鍛錬を重ね、槍一筋で騎士に取り立てられ、四十代となって男爵の爵位まで賜る武人です。

 王家王国を護る掛け替えのない二人の武人が、性悪女と軟弱男のせいで、意味のない死を迎えるのです。
 決闘で兄上様とアシェルが手心を加えて二人を殺さなくても、恥を知る二人が負けて生きながらえることはないでしょう。
 何か良策がないでしょうか?
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