94 / 94
93話
しおりを挟む
「ダメですよ、アレサンド。
家族は仲良く暮らすものだと言ったではありませんか。
それをこのような事をして、私との約束を蔑ろにする心算ですか」
「いや、そのような事はない。
朕が一番大切にしているのはカチュアだ。
だからカチュアの言う事は大切にする。
だが、いや、だからこそ、カチュアを傷つけるモノは許さない」
アレサンドには最初から勝ち目などなかった。
ずっとお預けされているアレサンドには、カチュアに抵抗する力などない。
最初の一言くらいは抵抗できるが、二言目には言いなりだった。
「いいですね、絶対に許しませんよ。
今回の件があったからといって、他の愛妾の方々や子供達を傷つける事は、この私が絶対に許しません」
アレサンドは皇帝の権力を使って全ての愛妾と子供を殺そうとしていた。
それほど怒り狂っていた、つがいの呪縛とは実に恐ろしいものだった。
だがそんな事を許すカチュアではなかった。
珍しく本気で怒ってアレサンドを諫めたが、皇国の首脳部も後宮の者達も、全員カチュアに頼っていた。
「だがカチュア、また同じ事が起こらないとは限らないのだ。
母親を殺された子供達が、カチュアを逆恨みするかもしれない。
そんなことになったら大変だから、せめて謀叛を起こしたモノの子供は殺してしまおう」
「いけません、断じて許しません。
謀叛を起こそうとしたとはいえ、それは母親の子を想う親心ではありませんか。
それに子供には何の罪もありません。
その子達もベンやリドルの弟妹です。
どうしてもその子達を殺すと申されるのでしたら、私達はこの国を出ます」
アレサンドには最初から勝ち目などなかった。
その事は首脳部も後宮も気がついており、利用していた。
謀叛を起こそうとした者は、一族悉く誅さなければならない。
それは当然の事なのだが、関係のない愛妾や子供まで殺すのは行き過ぎだ。
他の愛妾や外戚が加担していたか、厳しく調べなければいけないのは当然なのだが、調べもせずに皆殺しはさすがに行き過ぎだ。
結局、最初から分かっていた事だが、カチュアの言いなりだった。
今迄はカチュアが本気ではなかったので、アレサンドも精神力で抵抗できていたが、本気のカチュアの命令には逆らえなかった。
それでも、アレサンドも精一杯自分の意見を押し通した部分もある。
カチュアと他の愛妾の完全な別居である。
皇国首脳部も後宮の者達もその辺が落としどころだと納得していた。
このままでは、皇帝がカチュアの言いなりだと世間に知れてしまう。
早期解決を図らなければいけないし、皇帝の子供も十分確保できている。
単に強さだけならば、ベンとリドルのどちらかで皇帝は決まりだ。
他の兄弟姉妹は皇国の安定と純血種虎獣人族の王や大公として、種族を繁栄させてくれればいい。
皇都の後宮はカチュアとその子供達だけが住むことになった。
旧都、セントウィン大王国の後宮に、アンネと愛妾達、他のアレサンドの子供達が住むことになったのだが、二度と皇帝アレサンドが訪れる事はなかった。
家族は仲良く暮らすものだと言ったではありませんか。
それをこのような事をして、私との約束を蔑ろにする心算ですか」
「いや、そのような事はない。
朕が一番大切にしているのはカチュアだ。
だからカチュアの言う事は大切にする。
だが、いや、だからこそ、カチュアを傷つけるモノは許さない」
アレサンドには最初から勝ち目などなかった。
ずっとお預けされているアレサンドには、カチュアに抵抗する力などない。
最初の一言くらいは抵抗できるが、二言目には言いなりだった。
「いいですね、絶対に許しませんよ。
今回の件があったからといって、他の愛妾の方々や子供達を傷つける事は、この私が絶対に許しません」
アレサンドは皇帝の権力を使って全ての愛妾と子供を殺そうとしていた。
それほど怒り狂っていた、つがいの呪縛とは実に恐ろしいものだった。
だがそんな事を許すカチュアではなかった。
珍しく本気で怒ってアレサンドを諫めたが、皇国の首脳部も後宮の者達も、全員カチュアに頼っていた。
「だがカチュア、また同じ事が起こらないとは限らないのだ。
母親を殺された子供達が、カチュアを逆恨みするかもしれない。
そんなことになったら大変だから、せめて謀叛を起こしたモノの子供は殺してしまおう」
「いけません、断じて許しません。
謀叛を起こそうとしたとはいえ、それは母親の子を想う親心ではありませんか。
それに子供には何の罪もありません。
その子達もベンやリドルの弟妹です。
どうしてもその子達を殺すと申されるのでしたら、私達はこの国を出ます」
アレサンドには最初から勝ち目などなかった。
その事は首脳部も後宮も気がついており、利用していた。
謀叛を起こそうとした者は、一族悉く誅さなければならない。
それは当然の事なのだが、関係のない愛妾や子供まで殺すのは行き過ぎだ。
他の愛妾や外戚が加担していたか、厳しく調べなければいけないのは当然なのだが、調べもせずに皆殺しはさすがに行き過ぎだ。
結局、最初から分かっていた事だが、カチュアの言いなりだった。
今迄はカチュアが本気ではなかったので、アレサンドも精神力で抵抗できていたが、本気のカチュアの命令には逆らえなかった。
それでも、アレサンドも精一杯自分の意見を押し通した部分もある。
カチュアと他の愛妾の完全な別居である。
皇国首脳部も後宮の者達もその辺が落としどころだと納得していた。
このままでは、皇帝がカチュアの言いなりだと世間に知れてしまう。
早期解決を図らなければいけないし、皇帝の子供も十分確保できている。
単に強さだけならば、ベンとリドルのどちらかで皇帝は決まりだ。
他の兄弟姉妹は皇国の安定と純血種虎獣人族の王や大公として、種族を繁栄させてくれればいい。
皇都の後宮はカチュアとその子供達だけが住むことになった。
旧都、セントウィン大王国の後宮に、アンネと愛妾達、他のアレサンドの子供達が住むことになったのだが、二度と皇帝アレサンドが訪れる事はなかった。
33
お気に入りに追加
3,377
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(93件)
あなたにおすすめの小説
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない
天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。
だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
もっと長く続いて欲しかった!
それと、番とはなんというか…哀れだなと思いました!番 番 言っときながら妊娠したら匂いが薄まるからと他の女性を抱けるくらいなら執着すんな!💢と思いました!主人公がヒーロー大好き!って感じじゃなかったのだけが救いでした✨
感想ありがとうございます。
フェロモンに支配されるのは哀れですよね。
84話訂正(ㅇㅁㅇ;;)
乳母ではな侍女→乳母ではなく侍女でした(^_^;)
感想ありがとうございます。
了解です
82話
弟のリドルみ魔力→弟のリドルのみ魔力。
84話
母乳がでな乳母→母乳がでない乳母
脱字報告m(_ _)m
感想ありがとうございます。
見直して直します。