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72話

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「ほう、これはそんなに凄いものなのか?」

「はい、この魔晶石ならば、初級下の魔術を十万回も放つことができます。
 初級中の魔術ならば一万回でございます。
 この魔晶石が百個あれば、よほどの敵が相手でない限り、負ける事はありません」

 女性魔術師団長の言葉を、皇帝アレサンドは多少胡散臭く聞いてはいたが、実際に攻撃魔法を発動できたので、信じることにした。
 使える回数が本当に十万回なのかを確かめるのは面倒なのだが、それは家臣に任せればいいと後宮総取締のマリアムに言われ、任せることにした。

 マリアムは実子よりも皇帝アレサンドを大切に思う、忠誠心厚い乳母だから、アレサンドの名声を気にしていた。
 武皇や覇皇としての名声は、歴史に名を刻むこと間違いない。
 だか名君仁君として歴史に名を刻むための政策はまだまだだ。
 だが、カチュア皇后とベン皇子の創り出す魔晶石があれば、名君仁君の名声を得る事も不可能ではなかった。

 謀反人の手に渡るような事があれば危険だが、魔晶石を正しく使えば、皇国の生産力を飛躍的の向上させ、皇都の生活を快適にさせる事ができる。
 その最初の実験として、女性魔術師団長から提出された魔晶石を使って、荒地や砂漠地帯で水を創りだす事にした。
 だが、女性魔術師団長の話を鵜呑みにするマリアムではなかった。

「カチュア様。
 この魔晶石は一日で何個創れるのでしょうか?」

「そうですね、全力で創ったことがないので確実ではありませんが、千個から万個の間だと思います」

「その強さではなく、もっと込められる魔力の少ない魔晶石も創れますか?」

「ええ、大丈夫ですよ。
 ベンが魔晶石を創るのを面白がったので、色々試してみました。
 大きさも色も込める魔力も自由に変化させれますよ」

「では、水を創る事に限定した魔晶石を創る事はできますか?」

「さてどうでしょうか?
 やったことはありませんが、試せばできるようになるかもしれませんね。
 でも、そんな時間があるのなら、地下に牧場や畑を創りたいのです。
 その水専用の魔晶石作りは、絶対に私がやらなければいけない事ですか?」

「いえ、そのような事はありません。
 研究は魔術師団にさせましょう。
 市井にそのような研究をした魔術書がないかも調べさせます。
 カチュア様は、今まで通り、皇子様方の教育と地下創りをなされてください。
 ただ、できれば、魔晶石は幾つかアレサンド様に創って差し上げてください」

「分かりました。
 アレサンドが欲しいと言ってくれるのなら、できるだけ大きく美しい魔晶石を創りましょう」
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