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61話

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「ならぬ!
 断じてならぬ!
 なんぴとであろうと、男をカチュアの側に近づける事は、あいならん!」

 けんもほろろ、取り付く島もない、完全な拒絶だった。
 それでも諦めきれず、更に願い出ようとした女性魔術師団長を、皇帝アレサンドに取り次いだ、後宮総取締のマリアムが止めた。

「皇帝陛下のご裁可は下りました。
 これ以上は貴女の身が危険ですよ。
 貴女も人生経験が長い魔術師ではありませんか。
 無理を押し通そうとするのではなく、他の方法を考えなさい」

 マリアムが心から自分の身を案じてくれているの感じた女性魔術師団団長は、ハッとしておもい留まった。
 そして素早くあらゆる方策を考え、今回は引き下がることにした。
 方策は思いつかなかったが、他にやる事がないわけではなかったからだ。

「無理な願いを申し上げてしまいました。
 他の方法で皇妃陛下の才能を伸ばせるように努力いたします。
 お時間を頂き、恐悦至極でございます」

「かまわぬ。
 皇妃のためならば、万難を排して時間は創る。
 だが覚えておけ、朕はカチュアに男が近づくことは断じて許さん。
 全ては、それ以外の方法で行え。
 それ以外の事ならば、ありとあらゆる権力を使って構わぬ。
 金に糸目もつけぬ。
 必要なものがあったら、マリアムに言うがよい。
 任せたぞ、マリアム」

「ありがたき幸せでございます」
「お任せください、皇帝陛下」

 女性魔術師団団長の願いは却下されたが、金も物も無尽蔵に使えることになった。
 だが、虎獣人族が支配者の皇国で、人族が権力を振り回すのは命の危険を伴うので、慎重に行動する必要があった。
 本当に必要な物を厳選すべく、団員達と相談をした。

 ただ少しだけ、いや、結構な問題が起こってしまった。
 それでなくてもカチュアべったりのアレサンドの心に、火をつけてしまったのだ。
 最初はカチュアが魔術を学ぶ席に同席していたアレサンドだが、多くの人に止められ、カチュアにも相手にされず、魔術の授業には同席しないようになってた。

 それが、男性教師の話がでて、四六時中カチュアの側を離れなくなってしまった。
 政務のために政宮に行くことも極端に少なくなり、ほとんど後宮で過ごすようになってしまい、エリックから届く書簡で皇国の状況を知り返事を返すだけだった。
 さすがにこれには側近忠臣重臣も頭を抱えてしまった。

 アレサンドがカチュアの側を離れず何をしているかと言えば、ひたすらカチュアを見ているだけだった。
 カチュアが魔術の勉強をしているところ、ベン皇子とリドル皇子を抱きあやし授乳するところをみていた。
 でもそれで満足しているわけではなく、隙あらば愛を交わしたいと狙っていた。
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