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第一章
第88話:安全第一
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皇紀2223年・王歴227年・夏・キンロス地方
「今この地方を襲ってくるとしたら、トーフィッケン地方の軍神かサンディランズ地方の虎だろう。
軍神は東国での消耗を回復するために、無理な戦はしないだろう。
だが虎は、お前達もよく知っているように、正室を通じてアザエル教団の教祖とは義兄弟の関係になる。
これまでもこの地方のアザエル教徒を使って色々仕掛けて来ていただろう」
「はい、それはもう悪辣非道なやりくちでした」
「あれで虎と名乗るとは図々しいにもほどがあります」
「その通りで、あのような者は死肉を喰らうカラスで十分です」
「いや、カラスというよりは山狗であろう」
「そうだな、山狗こそふさわしい」
「お前達の言う通り、虎言われる男は、貧しいサンディランズ地方の家臣領民を喰わせるためなら、どのような手段も厭わない覚悟の決まった領主だ。
軍神と長年戦って一進一退を繰り返す剛の者だ。
カラスと呼ぼうと山狗と呼ぼうと、その恐ろしさに変わりはない」
俺の厳しい言葉を受けて、キンロス地方の騎士と兵士の表情が引き締まった。
「だが幸いなことに、軍神のトーフィッケン地方も虎のサンディランズ地方も、険しい山々と所々にある魔境のお陰で、限られた街道からしかこの地方には入れない。
その限られた街道に、堅固な城砦を築く」
俺はそう言うと、キンロス地方の騎士と兵士を連れて該当の街道に向かった。
軍神のトーフィッケン地方からこの地方に侵攻するには、切り立った険しい山と海に挟まれた海岸線の狭い街道を通るしかない。
そこに堅固な城砦群を築けば、少数で万余の軍勢を撃退できる。
水軍を使って城砦群を迂回して揚陸する事も可能だが、そんな事をすれば、俺が援軍に駆けつけた時に本拠地との連絡を絶たれて全滅する事になる。
幾ら戦略の苦手な軍神でも、そこまで愚かな行為はしないと思う。
もしそのような愚かな真似をしてくれるのなら、俺は全力で軍神を叩き潰す。
その余勢を駆ってトーフィッケン地方を併合してやる。
カンリフ宰相に掛け合って、宰相代理から東国宰相にしてもらう。
カンリフ宰相も、俺と西方と東方で棲み分けができて喜ぶ事だろう。
俺が膨大な魔力を使って城砦群を築いたら、キンロス地方の騎士と兵士は顎が落ちそうなくらい驚いていたが、気にしない。
そんな事を気にしていたら、全力を出せなくなる。
彼らのケツを叩いて、今度は虎のサンディランズ地方との街道となっている東の山中に向かい、そこでも堅固な城砦群を築いた。
「強敵と対峙する最前線の要塞に籠り、自分達の地方を護る気概のある者はいるか。
無謀な攻撃をせず、襲いかかってくる敵をひたすら撃退する役目だ。
派手さはないが、誰かがやらなければならないとても大切な役目だ。
俺はそういう役目を黙々とこなしてくれる者を高く評価する」
「やらせてください」
「俺も志願します、必ず自分達の地方を護ってみせます」
「おれも、俺も志願します」
「俺のここに残って故郷を護ります」
ここでも海岸線の城砦群で言った言葉を口にして志願兵を募った。
新造城砦に近い村出身の兵士や騎士が志願してくれたので、十分な兵力になった。
これで軍神や虎が万余の軍勢を率いて襲ってきたとしても大丈夫だろう。
このまま直ぐに本拠地に帰ってもいいのだが、それではあまりに早く帰り過ぎて、カンリフの本性を試す事ができなくなる。
普通の人間なら絶対に戻って来られない、豪雪になる季節までここにいて、それでもカンリフが俺の本拠地を襲わないか確認しておこう。
それまでの間は、使った魔力を補給するという意味でも、珍しい魔獣や竜が住んでいないかを確認する意味でも、この辺りの魔境を巡る事にしよう。
魔境の外でも育てられて、人間の生活に役立つ魔獣や魔蟲、魔草や魔樹があればいいのだが、あまり期待し過ぎないようにしよう。
「今この地方を襲ってくるとしたら、トーフィッケン地方の軍神かサンディランズ地方の虎だろう。
軍神は東国での消耗を回復するために、無理な戦はしないだろう。
だが虎は、お前達もよく知っているように、正室を通じてアザエル教団の教祖とは義兄弟の関係になる。
これまでもこの地方のアザエル教徒を使って色々仕掛けて来ていただろう」
「はい、それはもう悪辣非道なやりくちでした」
「あれで虎と名乗るとは図々しいにもほどがあります」
「その通りで、あのような者は死肉を喰らうカラスで十分です」
「いや、カラスというよりは山狗であろう」
「そうだな、山狗こそふさわしい」
「お前達の言う通り、虎言われる男は、貧しいサンディランズ地方の家臣領民を喰わせるためなら、どのような手段も厭わない覚悟の決まった領主だ。
軍神と長年戦って一進一退を繰り返す剛の者だ。
カラスと呼ぼうと山狗と呼ぼうと、その恐ろしさに変わりはない」
俺の厳しい言葉を受けて、キンロス地方の騎士と兵士の表情が引き締まった。
「だが幸いなことに、軍神のトーフィッケン地方も虎のサンディランズ地方も、険しい山々と所々にある魔境のお陰で、限られた街道からしかこの地方には入れない。
その限られた街道に、堅固な城砦を築く」
俺はそう言うと、キンロス地方の騎士と兵士を連れて該当の街道に向かった。
軍神のトーフィッケン地方からこの地方に侵攻するには、切り立った険しい山と海に挟まれた海岸線の狭い街道を通るしかない。
そこに堅固な城砦群を築けば、少数で万余の軍勢を撃退できる。
水軍を使って城砦群を迂回して揚陸する事も可能だが、そんな事をすれば、俺が援軍に駆けつけた時に本拠地との連絡を絶たれて全滅する事になる。
幾ら戦略の苦手な軍神でも、そこまで愚かな行為はしないと思う。
もしそのような愚かな真似をしてくれるのなら、俺は全力で軍神を叩き潰す。
その余勢を駆ってトーフィッケン地方を併合してやる。
カンリフ宰相に掛け合って、宰相代理から東国宰相にしてもらう。
カンリフ宰相も、俺と西方と東方で棲み分けができて喜ぶ事だろう。
俺が膨大な魔力を使って城砦群を築いたら、キンロス地方の騎士と兵士は顎が落ちそうなくらい驚いていたが、気にしない。
そんな事を気にしていたら、全力を出せなくなる。
彼らのケツを叩いて、今度は虎のサンディランズ地方との街道となっている東の山中に向かい、そこでも堅固な城砦群を築いた。
「強敵と対峙する最前線の要塞に籠り、自分達の地方を護る気概のある者はいるか。
無謀な攻撃をせず、襲いかかってくる敵をひたすら撃退する役目だ。
派手さはないが、誰かがやらなければならないとても大切な役目だ。
俺はそういう役目を黙々とこなしてくれる者を高く評価する」
「やらせてください」
「俺も志願します、必ず自分達の地方を護ってみせます」
「おれも、俺も志願します」
「俺のここに残って故郷を護ります」
ここでも海岸線の城砦群で言った言葉を口にして志願兵を募った。
新造城砦に近い村出身の兵士や騎士が志願してくれたので、十分な兵力になった。
これで軍神や虎が万余の軍勢を率いて襲ってきたとしても大丈夫だろう。
このまま直ぐに本拠地に帰ってもいいのだが、それではあまりに早く帰り過ぎて、カンリフの本性を試す事ができなくなる。
普通の人間なら絶対に戻って来られない、豪雪になる季節までここにいて、それでもカンリフが俺の本拠地を襲わないか確認しておこう。
それまでの間は、使った魔力を補給するという意味でも、珍しい魔獣や竜が住んでいないかを確認する意味でも、この辺りの魔境を巡る事にしよう。
魔境の外でも育てられて、人間の生活に役立つ魔獣や魔蟲、魔草や魔樹があればいいのだが、あまり期待し過ぎないようにしよう。
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