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第一章
第83話:電光石火と謀略
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皇紀2223年・王歴227年・晩春・ロスリン城
獲得した四地方には、俺が直接行った方がいいと思われた。
カンリフ公爵との弱い同盟を強化して、この国の将来像を明確にするためにも、カンリフ公爵の心底を確認するためにも、必要だと思われた。
だが、そのために大切な家臣領民を危険にさらす事はできない。
カンリフ公爵が裏切った時には、その首を斬り飛ばせる準備をしておく。
ただカンリフ公爵を殺しただけでは、配下の軍が暴走して家臣領民を害する可能性があるから、全軍を皆殺しにするくらいの準備が必要だった。
「爺様、大叔父上、叔父上方、今日集まってもらったのは、カンリフ王国宰相閣下についてだ」
俺の言葉を聞いて、集まってくれた一族衆が一気に緊張した。
俺が盟約を破ってカンリフ公爵に攻撃を仕掛けると思ったのかもしれない。
戦国乱世のこの世界では、自分が死ぬことになる魔術契約を破ってでも、敵を滅ぼして領地を手に入れようとする貴族や騎士がいる。
そのために、本当の権力者が隠居していたり世継ぎのままだったりする。
狡猾な貴族や騎士の場合は、魔術契約に影武者を使って死を免れる事もある。
まあ、そのよう手は、広く知れ渡っているので、今では引っかかる方が愚かだ。
「カンリフ王国宰相閣下とは和平が成立し、軽いとはいえ同盟関係にある。
だが、主力軍だけでなく、俺まで本拠地や皇都から遠く離れるとなると、一族や家臣に中から攻撃を献策する者が現われ、目先の利に惑わされる可能性もある。
だから、万が一の事を考えて、魔宝石と魔法陣を預けておく」
「閣下、今までも随分と多くの魔晶石と魔法陣を預からせていただいておりましたが、それだけでは足りないとお考えなのですか」
爺様が一族を代表して質問してくる。
「百戦錬磨で老練なカンリフ公爵を侮る事はできない。
前回の策謀を考えれば、誰を味方に引き入れて攻撃してくるか分からない。
東国宰相の配下である騎士が我が領地を攻め取ろうとした件も、裏でカンリフ王国宰相閣下が動いていた可能性もある。
カンリフ王国宰相閣下が動いていなくても、一族や配下の騎士が独断で動く可能性もあるのだ」
俺の話を聞いて、一族衆の顔に緊張が走った。
カンリフ公爵と軍神が組んだとなったら、俺と領地を接するほどんどの貴族と騎士が攻め込んで来る可能性が高いのだ。
戦国乱世のこの世界では、誰もが勝ち馬に乗ろうと必死なのだ。
負ければ一族が皆殺しにされ、領民は奴隷のような扱いを受けるかもしれない。
一族の女だけは生き残れるかもしれないが、性奴隷同然の扱いを受ける事になる。
そう考えると、弱小の貴族や騎士が右往左往するのが哀れに見える。
「ただし、爺様達に与える魔法陣にも限界がある。
俺が城砦に与えた護りの魔術を討ち破る事はできない。
爺様達を信じていなわけではないが、万が一魔宝石や魔法陣を敵や裏切者に奪われた時の事を考え、俺の大切な領民を護る城砦には利かなくなっている」
「クックックックッ、流石カンリフ公爵を打ち負かされた閣下じゃ。
誰も信じる事なく我が道を行かれる、頼もしい事よ、のう」
「いかにも、御隠居様の申される通りで」
「はい、父上の申される通りです」
「さすが我らが当主、いささかの油断もなさりません」
「それでこそ、我らも安心して家族を残して外征できます」
内心は兎も角、表面上は俺の言う事を受け入れてくれたようだ。
これで俺も欲に負けた一族をこの手で討つ事だけは避けられる。
後はアイザックを通じてイシュタム影衆に謀略を行ってもらうだけだ。
軍神キャルムが俺の前に立ちふさがらないように、キャルムと領地を接する連中を煽り立てて攻め込ませる。
さて、問題はどのような利で味方に引き込むかだが、一番役に立ちそうな奴が、アザエル教団の教祖と義兄弟なのだよな。
獲得した四地方には、俺が直接行った方がいいと思われた。
カンリフ公爵との弱い同盟を強化して、この国の将来像を明確にするためにも、カンリフ公爵の心底を確認するためにも、必要だと思われた。
だが、そのために大切な家臣領民を危険にさらす事はできない。
カンリフ公爵が裏切った時には、その首を斬り飛ばせる準備をしておく。
ただカンリフ公爵を殺しただけでは、配下の軍が暴走して家臣領民を害する可能性があるから、全軍を皆殺しにするくらいの準備が必要だった。
「爺様、大叔父上、叔父上方、今日集まってもらったのは、カンリフ王国宰相閣下についてだ」
俺の言葉を聞いて、集まってくれた一族衆が一気に緊張した。
俺が盟約を破ってカンリフ公爵に攻撃を仕掛けると思ったのかもしれない。
戦国乱世のこの世界では、自分が死ぬことになる魔術契約を破ってでも、敵を滅ぼして領地を手に入れようとする貴族や騎士がいる。
そのために、本当の権力者が隠居していたり世継ぎのままだったりする。
狡猾な貴族や騎士の場合は、魔術契約に影武者を使って死を免れる事もある。
まあ、そのよう手は、広く知れ渡っているので、今では引っかかる方が愚かだ。
「カンリフ王国宰相閣下とは和平が成立し、軽いとはいえ同盟関係にある。
だが、主力軍だけでなく、俺まで本拠地や皇都から遠く離れるとなると、一族や家臣に中から攻撃を献策する者が現われ、目先の利に惑わされる可能性もある。
だから、万が一の事を考えて、魔宝石と魔法陣を預けておく」
「閣下、今までも随分と多くの魔晶石と魔法陣を預からせていただいておりましたが、それだけでは足りないとお考えなのですか」
爺様が一族を代表して質問してくる。
「百戦錬磨で老練なカンリフ公爵を侮る事はできない。
前回の策謀を考えれば、誰を味方に引き入れて攻撃してくるか分からない。
東国宰相の配下である騎士が我が領地を攻め取ろうとした件も、裏でカンリフ王国宰相閣下が動いていた可能性もある。
カンリフ王国宰相閣下が動いていなくても、一族や配下の騎士が独断で動く可能性もあるのだ」
俺の話を聞いて、一族衆の顔に緊張が走った。
カンリフ公爵と軍神が組んだとなったら、俺と領地を接するほどんどの貴族と騎士が攻め込んで来る可能性が高いのだ。
戦国乱世のこの世界では、誰もが勝ち馬に乗ろうと必死なのだ。
負ければ一族が皆殺しにされ、領民は奴隷のような扱いを受けるかもしれない。
一族の女だけは生き残れるかもしれないが、性奴隷同然の扱いを受ける事になる。
そう考えると、弱小の貴族や騎士が右往左往するのが哀れに見える。
「ただし、爺様達に与える魔法陣にも限界がある。
俺が城砦に与えた護りの魔術を討ち破る事はできない。
爺様達を信じていなわけではないが、万が一魔宝石や魔法陣を敵や裏切者に奪われた時の事を考え、俺の大切な領民を護る城砦には利かなくなっている」
「クックックックッ、流石カンリフ公爵を打ち負かされた閣下じゃ。
誰も信じる事なく我が道を行かれる、頼もしい事よ、のう」
「いかにも、御隠居様の申される通りで」
「はい、父上の申される通りです」
「さすが我らが当主、いささかの油断もなさりません」
「それでこそ、我らも安心して家族を残して外征できます」
内心は兎も角、表面上は俺の言う事を受け入れてくれたようだ。
これで俺も欲に負けた一族をこの手で討つ事だけは避けられる。
後はアイザックを通じてイシュタム影衆に謀略を行ってもらうだけだ。
軍神キャルムが俺の前に立ちふさがらないように、キャルムと領地を接する連中を煽り立てて攻め込ませる。
さて、問題はどのような利で味方に引き込むかだが、一番役に立ちそうな奴が、アザエル教団の教祖と義兄弟なのだよな。
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