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第一章
第17話:エレンバラ家影衆設立
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皇紀2215年・王歴219年・秋・エレンバラ王国男爵領
祖父を悪夢から目覚めさせることができたから、後は国王を領内から追い出すことができれば、俺も安心して領外に討って出る事ができる。
それだけの準備をこの二年間で整えることができた。
渓谷を護るための城も築いたし、城を護るための兵士も雇った。
信じられる家臣に預ける魔法陣も大量に創り出した。
全ては目の前にいる影衆、イシュタム族のお陰だ。
「よくやってくれた、アイザック。
お前達のお陰で国王やエクセター侯爵に騙されずにすんだ」
「いえ、家臣として当然の事をしたまででございます。
それに、国王陛下の周りに人を入れろと申されたのは男爵閣下です。
男爵閣下のご指示がなければ、ここまでの成果はございませんでした」
「謙遜するな、アイザック。
俺の指示などなくても、王の周りに人をいれていたのだろう、違うか」
「謙遜くらいさせてくださいませ、男爵閣下」
イシュタム族の頭領はまだ完全に俺の事を信じてくれていないが、それはしかたのない事だと分かっている。
本当に信頼などなかなか手に入れられるモノじゃない。
特に戦友として背中を、いや、命を預けられる相手など、何度も肩を並べて戦い、互いのいい所も悪い所も理解してからでなければ、手に入れられないだろう。
そこまでは無理だが、目の前のアイザックとは良好な関係を結べていると思う。
「そうだな、家臣が主君を褒めてくれているのだ、素直に受け取るべきだな。
ありがとうアイザック、それで、領内に影衆の里を築く件だが、どうなっている」
これは俺がイシュタム族に依頼した政策だ。
前世の知識なのだが、甲賀忍者の頭領望月家から信州望月家に嫁いできた千代女が未亡人になり、武田信玄が巫女を統括させて諜報活動をさせていたという説がある。
俺の思い違いかもしれないし、小説上の荒唐無稽な話なのかもしれない。
だが、事に真意などはどうでもよくて、戦乱で親を亡くした子を救うための理由になれば、それでいいのだ。
「はい、男爵閣下のご指示通り、魔力のあるなしに関係なく孤児を集めております。
男爵閣下のお考えに感銘を受けたイシュタム族が、数多く集まっております。
全員が現役を引いた老人でございますが、まだまだ働けます。
中にははぐれ神官もおりますが、山で修業したそれなりの者達でございます。
はぐれ神官とはいえ、昔からイシュタム族と交流のある信頼できる者達です。
孤児達を一人前の影衆にするくらいはやってくれます」
アイザックの言葉に嘘はない、この戦乱の世を嘆いている者は多いのだ。
誰でもいいから一日でも早く乱れた世を治める英傑に現れて欲しいと思っている。
そんな状況だからこそ、主君を殺して成り上がる者を許す風潮があるのだ。
本来なら大切な家臣を殺された国王は、下克上をした陪臣を許してはいけない。
だが実際には、そんな主殺しの戦力を頼りに、同じ下克上をしたカンリフ騎士家と戦おうというのだから、笑ってしまう。
「そうか、イシュタム族はまだ心から俺の事を信用してくれてはいない。
いつかは信頼を勝ち取る気ではいるが、待つだけというのは性に合わん。
自分から動いて、互いに信用できる主従関係の影衆を作り出す。
アイザックが手伝ってくれればうれしい」
「どこまでお手伝いできるか分かりませんが、精一杯手伝わせていただきます。
私も戦乱で両親を殺された孤児でした。
頭領に救っていただけなければ、野垂れ死んでいた事でしょう。
そういう意味では、頭領には返せないほどの恩があります。
ですが、男爵閣下が手を伸ばせる範囲にいる孤児は全てを救うと言ってくださったので、頭領を裏切らない範囲で手助けさせていただきます」
「頼んだぞ、アイザック」
祖父を悪夢から目覚めさせることができたから、後は国王を領内から追い出すことができれば、俺も安心して領外に討って出る事ができる。
それだけの準備をこの二年間で整えることができた。
渓谷を護るための城も築いたし、城を護るための兵士も雇った。
信じられる家臣に預ける魔法陣も大量に創り出した。
全ては目の前にいる影衆、イシュタム族のお陰だ。
「よくやってくれた、アイザック。
お前達のお陰で国王やエクセター侯爵に騙されずにすんだ」
「いえ、家臣として当然の事をしたまででございます。
それに、国王陛下の周りに人を入れろと申されたのは男爵閣下です。
男爵閣下のご指示がなければ、ここまでの成果はございませんでした」
「謙遜するな、アイザック。
俺の指示などなくても、王の周りに人をいれていたのだろう、違うか」
「謙遜くらいさせてくださいませ、男爵閣下」
イシュタム族の頭領はまだ完全に俺の事を信じてくれていないが、それはしかたのない事だと分かっている。
本当に信頼などなかなか手に入れられるモノじゃない。
特に戦友として背中を、いや、命を預けられる相手など、何度も肩を並べて戦い、互いのいい所も悪い所も理解してからでなければ、手に入れられないだろう。
そこまでは無理だが、目の前のアイザックとは良好な関係を結べていると思う。
「そうだな、家臣が主君を褒めてくれているのだ、素直に受け取るべきだな。
ありがとうアイザック、それで、領内に影衆の里を築く件だが、どうなっている」
これは俺がイシュタム族に依頼した政策だ。
前世の知識なのだが、甲賀忍者の頭領望月家から信州望月家に嫁いできた千代女が未亡人になり、武田信玄が巫女を統括させて諜報活動をさせていたという説がある。
俺の思い違いかもしれないし、小説上の荒唐無稽な話なのかもしれない。
だが、事に真意などはどうでもよくて、戦乱で親を亡くした子を救うための理由になれば、それでいいのだ。
「はい、男爵閣下のご指示通り、魔力のあるなしに関係なく孤児を集めております。
男爵閣下のお考えに感銘を受けたイシュタム族が、数多く集まっております。
全員が現役を引いた老人でございますが、まだまだ働けます。
中にははぐれ神官もおりますが、山で修業したそれなりの者達でございます。
はぐれ神官とはいえ、昔からイシュタム族と交流のある信頼できる者達です。
孤児達を一人前の影衆にするくらいはやってくれます」
アイザックの言葉に嘘はない、この戦乱の世を嘆いている者は多いのだ。
誰でもいいから一日でも早く乱れた世を治める英傑に現れて欲しいと思っている。
そんな状況だからこそ、主君を殺して成り上がる者を許す風潮があるのだ。
本来なら大切な家臣を殺された国王は、下克上をした陪臣を許してはいけない。
だが実際には、そんな主殺しの戦力を頼りに、同じ下克上をしたカンリフ騎士家と戦おうというのだから、笑ってしまう。
「そうか、イシュタム族はまだ心から俺の事を信用してくれてはいない。
いつかは信頼を勝ち取る気ではいるが、待つだけというのは性に合わん。
自分から動いて、互いに信用できる主従関係の影衆を作り出す。
アイザックが手伝ってくれればうれしい」
「どこまでお手伝いできるか分かりませんが、精一杯手伝わせていただきます。
私も戦乱で両親を殺された孤児でした。
頭領に救っていただけなければ、野垂れ死んでいた事でしょう。
そういう意味では、頭領には返せないほどの恩があります。
ですが、男爵閣下が手を伸ばせる範囲にいる孤児は全てを救うと言ってくださったので、頭領を裏切らない範囲で手助けさせていただきます」
「頼んだぞ、アイザック」
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