12 / 94
第一章
第11話:インブリードとアウトブリード
しおりを挟む
皇紀2213年・王歴217年・春・エレンバラ王国男爵領
俺は満四歳、当年とって五歳になったが、相も変わらず勉学の日々だ。
祖父と母に色々と教え続けてもらっているのに、まだ色々と理解できない。
そこで一度貴族の立場からではなく影衆の立場から話しを聞くことにした。
立場が違えば見えるモノが全く違うのだと痛感した。
目から鱗が落ちるとはこの事なのだと強く思うほどだった。
お陰で今まで疑問に思っていた事の一つが、よく理解できた。
「それでは、血が近過ぎると強い魔力が得られないのだな」
「はい、それがよく分かるのが皇家と皇国貴族でございます。
ずっと血が近しい選帝侯家や皇国貴族家と婚姻を結び続けた結果、今の皇族にはほとんど魔力がありません。
もし血の近しい婚姻が魔力を強めるのなら、皇家や選帝侯家から飛び抜けて魔力の強い子が産まれているはずでございます」
「だから、人殺しと蔑まれるほど野蛮だった王家や王家貴族の魔力が高いのか」
「はい、最初の頃の王国貴族は、地方の平民の中から生まれた魔力持ちでした。
ですが王家や王家貴族も皇家に真似て、血統を重んじるようになりました。
その影響で徐々に魔力の強い子が生まれ無くなっております。
それが今の王家の凋落につながっているのです。
その魔力の弱い王子達のなかでも、正室からよりも側室や妾から、多少は魔力の強い子が産まれてしまいます。
それがお家騒動につながっているのでございます」
なるほどね、王家が有力貴族家の後継問題に介入しているから、多くの有力貴族家で後継者争いがあるのだと思っていたが、それだけではなかったのだな。
本来魔力が強い者が高い地位を得るはずの世界で、魔力の低い者が高位を得ているのが、この世界が戦乱に満ちている根本的な理由なのだな。
「影衆が下手な貴族よりも魔力が多いのは、家柄に関係なく結婚するからか」
「それもございますが、魔力量が少なく魔術の技が未熟な者に影の仕事は務まりませんので、頭領の息子だからと言って跡目が継げる訳ではありません。
息子が不熟ならば、娘に養子を迎えるのが本当に影衆というものです。
例え養子となる者が奴隷の子供であろうとです」
それは、家柄を重視しだしたアフリマン衆を批判しているのかな。
まあ、いい、それは他人事だ、俺に直接関係する事ではない。
「では俺は、血縁関係のない魔力の多い女を妻に迎えた方がいいという事か。
再従姉のエマでは、どれほど魔力が多くても駄目だと言う事だな」
「申し上げ難い事ではございますが、その通りでございます。
それに加えて諫言させていただければ、御母堂様の縁で皇国貴族を妻に迎えたり、王家貴族同士の婚姻で血の濃くなった家から妻を迎えたりすることも、お止めになる方がいいと思います」
皇国貴族出身である事を誇りに思われている母には言い難いな。
王家貴族同士の婚姻で同盟を築こうとしている祖父にも言い難い。
だが俺は、今回の件で領内に入ってきた、五百人もの影衆が放つ魔力を実際に肌で感じている。
あの魔力量を知ってしまったら、もう血の濃い結婚はできない。
少なくとも子供を作らない政略結婚でしか血の濃い結婚はできない。
魔力の強い子供を望むのなら、血の濃くなっていない女性から妻を選ぶべきだ。
エマは俺の義姉としてどこかの貴族家に嫁がせるか、分家させて血縁関係のない強い魔力の婿を迎えさせた方がいいな。
「本当に言い難い事を言ってくれるな」
「申し訳ありません」
「本当に申し訳ないと思っているのなら、俺の妻になる女性を探してくれ。
血が濃くない、魔力の多い女性だ」
「本当に宜しいのですか、男爵閣下」
「構わない、どうせ今直ぐ妻に迎える訳ではない、早くても十年は先の話しだ。
十年以内に、爺様にも母上に文句を言えないくらいの力をつけてみせる。
お前が当家で力をつけて重臣になってくれていれば、奴隷の子供であろうと、お前の養女として妻に迎えることができる」
「承りました、今のうちからできる限り魔力の強い幼女を集めておきます」
俺は満四歳、当年とって五歳になったが、相も変わらず勉学の日々だ。
祖父と母に色々と教え続けてもらっているのに、まだ色々と理解できない。
そこで一度貴族の立場からではなく影衆の立場から話しを聞くことにした。
立場が違えば見えるモノが全く違うのだと痛感した。
目から鱗が落ちるとはこの事なのだと強く思うほどだった。
お陰で今まで疑問に思っていた事の一つが、よく理解できた。
「それでは、血が近過ぎると強い魔力が得られないのだな」
「はい、それがよく分かるのが皇家と皇国貴族でございます。
ずっと血が近しい選帝侯家や皇国貴族家と婚姻を結び続けた結果、今の皇族にはほとんど魔力がありません。
もし血の近しい婚姻が魔力を強めるのなら、皇家や選帝侯家から飛び抜けて魔力の強い子が産まれているはずでございます」
「だから、人殺しと蔑まれるほど野蛮だった王家や王家貴族の魔力が高いのか」
「はい、最初の頃の王国貴族は、地方の平民の中から生まれた魔力持ちでした。
ですが王家や王家貴族も皇家に真似て、血統を重んじるようになりました。
その影響で徐々に魔力の強い子が生まれ無くなっております。
それが今の王家の凋落につながっているのです。
その魔力の弱い王子達のなかでも、正室からよりも側室や妾から、多少は魔力の強い子が産まれてしまいます。
それがお家騒動につながっているのでございます」
なるほどね、王家が有力貴族家の後継問題に介入しているから、多くの有力貴族家で後継者争いがあるのだと思っていたが、それだけではなかったのだな。
本来魔力が強い者が高い地位を得るはずの世界で、魔力の低い者が高位を得ているのが、この世界が戦乱に満ちている根本的な理由なのだな。
「影衆が下手な貴族よりも魔力が多いのは、家柄に関係なく結婚するからか」
「それもございますが、魔力量が少なく魔術の技が未熟な者に影の仕事は務まりませんので、頭領の息子だからと言って跡目が継げる訳ではありません。
息子が不熟ならば、娘に養子を迎えるのが本当に影衆というものです。
例え養子となる者が奴隷の子供であろうとです」
それは、家柄を重視しだしたアフリマン衆を批判しているのかな。
まあ、いい、それは他人事だ、俺に直接関係する事ではない。
「では俺は、血縁関係のない魔力の多い女を妻に迎えた方がいいという事か。
再従姉のエマでは、どれほど魔力が多くても駄目だと言う事だな」
「申し上げ難い事ではございますが、その通りでございます。
それに加えて諫言させていただければ、御母堂様の縁で皇国貴族を妻に迎えたり、王家貴族同士の婚姻で血の濃くなった家から妻を迎えたりすることも、お止めになる方がいいと思います」
皇国貴族出身である事を誇りに思われている母には言い難いな。
王家貴族同士の婚姻で同盟を築こうとしている祖父にも言い難い。
だが俺は、今回の件で領内に入ってきた、五百人もの影衆が放つ魔力を実際に肌で感じている。
あの魔力量を知ってしまったら、もう血の濃い結婚はできない。
少なくとも子供を作らない政略結婚でしか血の濃い結婚はできない。
魔力の強い子供を望むのなら、血の濃くなっていない女性から妻を選ぶべきだ。
エマは俺の義姉としてどこかの貴族家に嫁がせるか、分家させて血縁関係のない強い魔力の婿を迎えさせた方がいいな。
「本当に言い難い事を言ってくれるな」
「申し訳ありません」
「本当に申し訳ないと思っているのなら、俺の妻になる女性を探してくれ。
血が濃くない、魔力の多い女性だ」
「本当に宜しいのですか、男爵閣下」
「構わない、どうせ今直ぐ妻に迎える訳ではない、早くても十年は先の話しだ。
十年以内に、爺様にも母上に文句を言えないくらいの力をつけてみせる。
お前が当家で力をつけて重臣になってくれていれば、奴隷の子供であろうと、お前の養女として妻に迎えることができる」
「承りました、今のうちからできる限り魔力の強い幼女を集めておきます」
66
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる