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第一章

第84話:迎撃・オードリー視点

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 魔族の神々が強引に魔界に転移門を開こうとしています。
 ですが魔界には幾人かの魔王が残って守りを固めています。
 もし魔王の誰かが神々に内通して裏切ると全てが崩壊してしまいます。
 もちろんそんなことは大魔王も父上も分かっています。
 少しでも疑わしい魔王や上位魔族は魔界の迎撃部隊ではなく、攻撃部隊に配置されています。

「アラステア、ここまでやっているのに裏切る魔族はいるのでしょうか」

「オードリー、人族も魔族も同じです。
 自分だけが生き残るため、家族や大切な人を助けるため、権力や富を得るために、平気で普段仲良くしていた者を裏切り見殺しにするモノです。
 全員ではありませんが、そういうモノが必ずいるのです。
 いえ、大半のモノが生き残るために平気で裏切り見殺しにすると思ってください」

 哀しい事ですがアラステアの言う通りですね。
 少なくとも人族がそういうモノなのは確かです。
 グレアムのような人は滅多にいません。
 父上や母上も自分の大切なモノのためには人を切り捨てることができます。
 だからこそ私はグレアムを好きになったのです。

「そうですね、その心算で戦略戦術を組み立てないといけませんね」

「見てください、魔族側が防ぎきりそうです」

 アラステアの言う通り、魔族側が神々の攻撃を防いでいます。
 神々が魔界に繋げようとした転移門をことごとく防いでいます。
 ここでも人界から送った魔力が役に立っています。
 それに、魔王達も後がないのを自覚しているのでしょう。

「魔王達も必死ですものね」

 大魔王は王妃を護るためだったらなんでもします。
 魔王達が魔界を守り切れないと知ったら平気で王妃を連れて逃げるでしょう。
 大魔王は王妃が逃げてしまった魔界は、簡単に神々に滅ぼされます。
 人族が魔族に協力しているのは大魔王との約束があるからです。
 人族からの魔力支援のなくなった魔族は簡単に滅ぼされます。

「はい、魔王の一人が人族を侵略したことで人族が魔族を恨んでいる事は、全ての魔王が理解しています。
 大魔王の逃亡は、大魔王と王妃以外が死滅する事だと理解しています。
 神々が誘惑しても、よほどの馬鹿でない限り大魔王を裏切る事はないでしょう。
 それに裏切りそうな者がいたら我々の目付け役が事前に滅ぼしますから」

 アラステアの言う通りです。
 人族から魔力支援を名目に目付け役を派遣しています。
 もしかしたら、既に私の見えていない所で、密かに裏切者の魔族を殺しているかもしれません。

「オードリー、予想通り神々が動きましたよ」

 アラステアの言う通り、神々が遊撃を仕掛けてきました。
 やってくるとは予測していましたし、それを防ぐための準備もしてきました。
 それでも防ぎきれなければ魔族が滅んでしまいます。
 グレアムも父上も母上も表情を硬くしています。
 多分私も硬い表情をしている事でしょう。
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