71 / 91
第一章
第71話:感覚差
しおりを挟む
大魔王は長年切実な魔界の状況に対処していた。
とても貧しい痩せた大地しかない魔界では、直ぐに食糧がなくなる。
生き残るには魔族同士が共喰いしなければいけないくらい貧しい。
それが皮肉にも魔族を神々に匹敵するほど強くした。
そんな中で共喰いを嫌った魔王の一人が人界への門を開いたのだ。
だが人界は土地が豊かな地域が多く、共喰いはごく限られた地域や宗教信者の間だけで行われる例外だった。
富や権力を求めて殺し合う事はあったが、他の世界に行かなければいけないような状況ではなかったのだ。
だからルーパスには大魔王の気持ちが分からなかった。
「大魔王、正直言うが、俺には全く利があるとは思えない。
何か根本的な価値観の違いがあると思うのだが」
「なに、別世界への移民に価値を感じないというのか。
信じられん、一体何が違うというのだ」
ルーパスと大魔王は真剣に話し合った。
長い時間が必要なくらい話し合った。
いや、何日も何カ月も話し合ったわけではない。
数時間話し合っただけだ。
だが魔界の数時間が人界の数カ月数年になってしまうのだ。
(ルーパス、ここは第三世界への移民権は放棄して、第四世界を手に入れましょう。
今はまだ人界は新世界を必要としていません。
ですがいつ必要になるか分かりません。
大魔王と移民可能な世界を分けておかないと、圧倒的に数が増えた魔族に襲われてしまいますよ)
ルーパスにアラステアが助言を与えた。
ルーパスにはその真意が直ぐに分かった。
人を移民させる場所としての新世界は今の人族には必要なかった。
だが、大魔王が裏切って人界に攻め込んできた時に必要となる魔力、その魔力を集める場所として新世界は役に立つのだ。
「分かった、大魔王。
第三世界との門は魔界から開こう。
そして人界から第三世界への移民する権利を確保しよう。
だがそれでは、いずれ人族と魔族が第三世界で争うことになる。
だから第四世界への門を開きたい。
いや、第五第六の世界への門も開きたい。
新たな世界の状況を知る方法を教えてくれ」
「……新たな世界は数限りなくある。
だが、息をするための空気すらない世界がほとんどだ。
ごくわずかに空気がある世界でも、物が重すぎたり軽すぎたりする。
空気があり物の重さが丁度いい世界でも、水がない世界がほとんどなのだ。
そんな無数の新世界から、知的な生き物がいない移民に丁度いい世界を探すのがどれほど大変なのか、ルーパスは分かっているのか」
大魔王が第三世界を探し出すのがどれほど大変だったのか、大魔王の言葉とそこに込められた感情から、ルーパスは初めて知ることになった。
とても貧しい痩せた大地しかない魔界では、直ぐに食糧がなくなる。
生き残るには魔族同士が共喰いしなければいけないくらい貧しい。
それが皮肉にも魔族を神々に匹敵するほど強くした。
そんな中で共喰いを嫌った魔王の一人が人界への門を開いたのだ。
だが人界は土地が豊かな地域が多く、共喰いはごく限られた地域や宗教信者の間だけで行われる例外だった。
富や権力を求めて殺し合う事はあったが、他の世界に行かなければいけないような状況ではなかったのだ。
だからルーパスには大魔王の気持ちが分からなかった。
「大魔王、正直言うが、俺には全く利があるとは思えない。
何か根本的な価値観の違いがあると思うのだが」
「なに、別世界への移民に価値を感じないというのか。
信じられん、一体何が違うというのだ」
ルーパスと大魔王は真剣に話し合った。
長い時間が必要なくらい話し合った。
いや、何日も何カ月も話し合ったわけではない。
数時間話し合っただけだ。
だが魔界の数時間が人界の数カ月数年になってしまうのだ。
(ルーパス、ここは第三世界への移民権は放棄して、第四世界を手に入れましょう。
今はまだ人界は新世界を必要としていません。
ですがいつ必要になるか分かりません。
大魔王と移民可能な世界を分けておかないと、圧倒的に数が増えた魔族に襲われてしまいますよ)
ルーパスにアラステアが助言を与えた。
ルーパスにはその真意が直ぐに分かった。
人を移民させる場所としての新世界は今の人族には必要なかった。
だが、大魔王が裏切って人界に攻め込んできた時に必要となる魔力、その魔力を集める場所として新世界は役に立つのだ。
「分かった、大魔王。
第三世界との門は魔界から開こう。
そして人界から第三世界への移民する権利を確保しよう。
だがそれでは、いずれ人族と魔族が第三世界で争うことになる。
だから第四世界への門を開きたい。
いや、第五第六の世界への門も開きたい。
新たな世界の状況を知る方法を教えてくれ」
「……新たな世界は数限りなくある。
だが、息をするための空気すらない世界がほとんどだ。
ごくわずかに空気がある世界でも、物が重すぎたり軽すぎたりする。
空気があり物の重さが丁度いい世界でも、水がない世界がほとんどなのだ。
そんな無数の新世界から、知的な生き物がいない移民に丁度いい世界を探すのがどれほど大変なのか、ルーパスは分かっているのか」
大魔王が第三世界を探し出すのがどれほど大変だったのか、大魔王の言葉とそこに込められた感情から、ルーパスは初めて知ることになった。
12
お気に入りに追加
4,122
あなたにおすすめの小説
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
【完結】急に態度を変えて来られても貴方のことは好きでも何でもありません!
珊瑚
恋愛
太っているせいで婚約者に罵られていたシャーロット。見切りをつけ、婚約破棄の書類を纏め、友達と自由に遊んだり、関係改善を諦めたら一気に激痩せ。今更態度を変えてきましたが私の貴方への気持ちが変わることは金輪際ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる