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第一章
第61話:オードリー覚醒
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オードリーはずっと夢を見ていた。
最初は辛く哀しい夢に苦しめられていた。
唯一の救いは、残飯を恵んでくれ優し言葉をかけてくれたおじさんとの思い出が浮かぶ時だけだったが、そんな時間はほんのわずかだった。
ほとんどは養家の家族や家臣使用人、王家をはじめとした王侯貴族に虐待された思い出が繰り返し思い浮かび、もうやめてくださいと泣き叫びたい状態だった。
だがそんな夢は直ぐに終わった。
モンスターに姿を変えてオードリーを苦しめに養家の者達や家臣使用人達を、名も顔も知らない騎士が現れて助けてくれるようになったのだ。
命を捨てて、どれほど傷つこうと助けてくれようとする騎士。
そして実際にモンスターから救い出してくれた。
それからは辛く哀しい夢はドンドン少なくなっていった。
どうしても思い出してしまう事はあるが、多くの時間グレアムとグレアムに係わった人達の姿を夢で見るようになっていた。
名も知らない騎士の名前がグレアムだと分かったのはその時だし、グレアムがカッコいい騎士ではなく、ドジで要領の悪い騎士だという事も直ぐわかった。
そんなグレアムの姿にオードリーの心は徐々に癒されていった。
いや、グレアムよりも四頭の馬達が命懸けで護ろうとしてくれるのに感動した。
あまり悪夢をみなくなっていたのに、オードリーを捨てた父親が現れた。
そこからまた辛く哀しい悪夢を再び見てしまうようになった。
夢の中で父親が好きで自分を捨てたわけではない事は理解できた。
強制されて仕方なく信用できる王と公爵夫人に預けた事も分かった。
だがルーパスが愚かだったせいで自分が苦しんだことに変わりはなかった。
どうしても父を、ルーパスを許す気にはなれなかった。
だがルーパスが母親を蘇らせようとしているのを知った。
ルーパスを許す事はできないが、母親にはとても会いたかった。
ルーパスが母親を蘇らせてくれる事を心から願っていた。
ルーパスの助けでグレアムと馬達が強くなり、オードリーを護る力が強くなった事は、嫌々だが認めるしかなかった。
そしていつの間にか、悪夢を思い出す事もなくなっていた。
オードリーが夢見るようになったのは、ルーパスへの文句と怒りに任せて頬を張る自分の姿、母親が蘇って自分の事を抱きしめてくれる時の姿だけだった。
それなのに、ルーパスがまた失敗して魔界から一人戻ってきた。
オードリーは以前の大人しい令嬢とは思われないくらい激しい罵りを、何度も何度も夢の中でルーパスに向かって行っていた。
そんなオードリーの想いを理解してくれていたのか、母親は目覚めて直ぐにルーパスを張り飛ばしてくれた。
そして急いで自分の所にやって来てくれる。
「オードリー、お母さんですよ、大変な思いをさせてしまいましたね。
ごめんね、これからは私がずっとお世話させてもらいますからね」
そう言われたオードリーは心から夢から目覚めたいと思った。
「お母さま、お母さま、お母さま」
最初は辛く哀しい夢に苦しめられていた。
唯一の救いは、残飯を恵んでくれ優し言葉をかけてくれたおじさんとの思い出が浮かぶ時だけだったが、そんな時間はほんのわずかだった。
ほとんどは養家の家族や家臣使用人、王家をはじめとした王侯貴族に虐待された思い出が繰り返し思い浮かび、もうやめてくださいと泣き叫びたい状態だった。
だがそんな夢は直ぐに終わった。
モンスターに姿を変えてオードリーを苦しめに養家の者達や家臣使用人達を、名も顔も知らない騎士が現れて助けてくれるようになったのだ。
命を捨てて、どれほど傷つこうと助けてくれようとする騎士。
そして実際にモンスターから救い出してくれた。
それからは辛く哀しい夢はドンドン少なくなっていった。
どうしても思い出してしまう事はあるが、多くの時間グレアムとグレアムに係わった人達の姿を夢で見るようになっていた。
名も知らない騎士の名前がグレアムだと分かったのはその時だし、グレアムがカッコいい騎士ではなく、ドジで要領の悪い騎士だという事も直ぐわかった。
そんなグレアムの姿にオードリーの心は徐々に癒されていった。
いや、グレアムよりも四頭の馬達が命懸けで護ろうとしてくれるのに感動した。
あまり悪夢をみなくなっていたのに、オードリーを捨てた父親が現れた。
そこからまた辛く哀しい悪夢を再び見てしまうようになった。
夢の中で父親が好きで自分を捨てたわけではない事は理解できた。
強制されて仕方なく信用できる王と公爵夫人に預けた事も分かった。
だがルーパスが愚かだったせいで自分が苦しんだことに変わりはなかった。
どうしても父を、ルーパスを許す気にはなれなかった。
だがルーパスが母親を蘇らせようとしているのを知った。
ルーパスを許す事はできないが、母親にはとても会いたかった。
ルーパスが母親を蘇らせてくれる事を心から願っていた。
ルーパスの助けでグレアムと馬達が強くなり、オードリーを護る力が強くなった事は、嫌々だが認めるしかなかった。
そしていつの間にか、悪夢を思い出す事もなくなっていた。
オードリーが夢見るようになったのは、ルーパスへの文句と怒りに任せて頬を張る自分の姿、母親が蘇って自分の事を抱きしめてくれる時の姿だけだった。
それなのに、ルーパスがまた失敗して魔界から一人戻ってきた。
オードリーは以前の大人しい令嬢とは思われないくらい激しい罵りを、何度も何度も夢の中でルーパスに向かって行っていた。
そんなオードリーの想いを理解してくれていたのか、母親は目覚めて直ぐにルーパスを張り飛ばしてくれた。
そして急いで自分の所にやって来てくれる。
「オードリー、お母さんですよ、大変な思いをさせてしまいましたね。
ごめんね、これからは私がずっとお世話させてもらいますからね」
そう言われたオードリーは心から夢から目覚めたいと思った。
「お母さま、お母さま、お母さま」
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