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第一章
第25話:ルーパス、勇者、大魔王5
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「おのれルーパス、人族の敵。
やれ、人族の敵ルーパスを殺せ。
何をやっている、ルーパスは人族を裏切ったのだぞ」
勇者が喚いている。
自分からは戦わず、仲間を盾にしようとしている。
ルーパスは思い出していた。
勇者が先頭を切って戦うのは、必ず自分より弱い相手だったと。
強い敵が相手の場合は、ルーパスに先制魔術攻撃を命じていたと。
今更ながらルーパスは自分の不明を反省していた。
多くの遠征軍将兵も同じだった。
今回の件でようやく勇者の正体に気がついた。
いや、気がついていて自分の欲のために気付かぬふりをしていた者もいる。
そんな連中も、元の世界に帰るにはルーパスの力が必要だと分かっていた。
地に這い蹲って懇願してでも、ルーパスに助けてもらわなければいけない。
そんな状態でルーパスに斬りかかる者などいない。
「くっくっくっくっ、魔族も人族も同じよな。
上に立とうとする者ほど品性下劣。
見ていて飽きぬわ。
魂を売る覚悟をしてくれたルーパスと更なる取引をしたいのだが、いいかな」
「ちっ、人の弱みに付け込みやがって。
俺が後に引けない事が分かっていてそう言うのか」
ルーパスは忸怩たる思いだった。
ミネルバを蘇らせるためだったら、神々と敵対する覚悟を決めた。
大魔王に魂を売る覚悟も決めた。
今更追加条件を付きつけられても覚悟は変わらない。
それに大魔王に魂を売って神々と敵対する以上の悪条件など思い浮かばない。
「妻を蘇生させて魂を呼び戻しても、妻に嫌われては意味がないであろう。
妻の性格なら余に魂を売って神々と敵対したルーパスを好いてくれないだろう。
そこまでして蘇らせた妻に嫌われては可哀想だ。
だから妻の蘇生と招魂は余がやってやる。
その代わりルーパスにやってもらいたい事がある」
ルーパスはあまりの好条件に戸惑っていた。
ミネルバを蘇らせるためなら、自分は嫌われてもいいと思っていたのだ。
自分の不明で辛い思いをさせたであろうオードリーに、母親と再会させて甘えられるようにしてあげられるのなら、自分の事などどうでもよかった。
ミネルバにオードリーを抱きしめる機会を与えられるのなら、ミネルバとオードリーから離れて魔族になっていいとさえ思っていた。
だがそんな苦しく辛い思いをしなくてもいい。
ミネルバに嫌われるような事は大魔王がやってくれるという。
こんな好条件に裏がないわけがない。
大魔王に魂を売って神々と敵対する以上の悪条件があるはずだ。
だがそれが全く思い浮かばない。
「なんだ、一体何を俺にやらせる心算だ」
「なあに、簡単な事だよ。
余の飼い狗になって、余が表だってやれない事をやってくれればいい。
余に匹敵する魔力を持つルーパスはもちろん、オードリーも騙し利用してな。
余三人分の魔力を使えれば、神々が相手であろうと負けはせん」
やれ、人族の敵ルーパスを殺せ。
何をやっている、ルーパスは人族を裏切ったのだぞ」
勇者が喚いている。
自分からは戦わず、仲間を盾にしようとしている。
ルーパスは思い出していた。
勇者が先頭を切って戦うのは、必ず自分より弱い相手だったと。
強い敵が相手の場合は、ルーパスに先制魔術攻撃を命じていたと。
今更ながらルーパスは自分の不明を反省していた。
多くの遠征軍将兵も同じだった。
今回の件でようやく勇者の正体に気がついた。
いや、気がついていて自分の欲のために気付かぬふりをしていた者もいる。
そんな連中も、元の世界に帰るにはルーパスの力が必要だと分かっていた。
地に這い蹲って懇願してでも、ルーパスに助けてもらわなければいけない。
そんな状態でルーパスに斬りかかる者などいない。
「くっくっくっくっ、魔族も人族も同じよな。
上に立とうとする者ほど品性下劣。
見ていて飽きぬわ。
魂を売る覚悟をしてくれたルーパスと更なる取引をしたいのだが、いいかな」
「ちっ、人の弱みに付け込みやがって。
俺が後に引けない事が分かっていてそう言うのか」
ルーパスは忸怩たる思いだった。
ミネルバを蘇らせるためだったら、神々と敵対する覚悟を決めた。
大魔王に魂を売る覚悟も決めた。
今更追加条件を付きつけられても覚悟は変わらない。
それに大魔王に魂を売って神々と敵対する以上の悪条件など思い浮かばない。
「妻を蘇生させて魂を呼び戻しても、妻に嫌われては意味がないであろう。
妻の性格なら余に魂を売って神々と敵対したルーパスを好いてくれないだろう。
そこまでして蘇らせた妻に嫌われては可哀想だ。
だから妻の蘇生と招魂は余がやってやる。
その代わりルーパスにやってもらいたい事がある」
ルーパスはあまりの好条件に戸惑っていた。
ミネルバを蘇らせるためなら、自分は嫌われてもいいと思っていたのだ。
自分の不明で辛い思いをさせたであろうオードリーに、母親と再会させて甘えられるようにしてあげられるのなら、自分の事などどうでもよかった。
ミネルバにオードリーを抱きしめる機会を与えられるのなら、ミネルバとオードリーから離れて魔族になっていいとさえ思っていた。
だがそんな苦しく辛い思いをしなくてもいい。
ミネルバに嫌われるような事は大魔王がやってくれるという。
こんな好条件に裏がないわけがない。
大魔王に魂を売って神々と敵対する以上の悪条件があるはずだ。
だがそれが全く思い浮かばない。
「なんだ、一体何を俺にやらせる心算だ」
「なあに、簡単な事だよ。
余の飼い狗になって、余が表だってやれない事をやってくれればいい。
余に匹敵する魔力を持つルーパスはもちろん、オードリーも騙し利用してな。
余三人分の魔力を使えれば、神々が相手であろうと負けはせん」
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