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第一章

第13話:復讐3

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「おい、こら、来るな、来るんじゃない。
 ちかづくな、これ以上近づくな、近づくんじゃない。
 やめろ、止めろ、止めてくれ。
 ギャアアアアア。
 ゆるせ、許してくれ、許してください」

 オードリーの義弟アルバートは泣いて許しを乞うていた。
 王宮の悪夢はフィアル公爵邸でも起こっていた。
 オードリーを虐めていた連中がモンスターに変化していた。
 それぞれの下劣な性根に応じて色々なモンスターに変化していた。
 人間のままのアルバートをミノタウロスの雄が襲っていた。
 フィアル公爵邸は生き地獄となっていた。

 だが、守護石は大賢者ルーパスの思惑を超えていた。
 オードリーの魔力と正確な記録で復讐が発動する仕掛けだったのに。
 オードリーの良心が微妙に影響していたのだ。
 オードリーの良心はモードが嬲り殺しになる事を望まなかった。
 自殺するほどの忘れられない根深い恨み辛みはあるが、虐待は望まなかった。

 だからモードは楽に死ぬことが許された。
 リザードマンの爪で即死させてもらえた。
 喉を切り裂かれ心臓を貫かれ頭を破壊され、短い苦痛で死ねた。
 だが母親のルイーズは楽に死ぬことが許されなかった。
 フィアル公爵やアルバートと同じように、恥辱に塗れることになった。
 殺してももらえず、生き地獄の中にいた。

 オードリーを虐め抜いた公爵邸の家臣や使用人も同じだった。
 ある陪臣騎士は密かに愛を育んでいた相手が蜘蛛女になっている。
 自分は醜いミノタウロスになっている。
 しかもどうしようもない衝動で主家の若殿を犯してしまう。
 愛する女性が蜘蛛男に変じた同僚に犯されている。
 愛し合っていたはずなのに、蜘蛛女になった人の足を喰らってしまう。
 愛し合っていた人が自分の脇腹を喰い千切る。

 人間の頃に記憶が残っているのに、モンスターとして傷つけ合う。
 同僚同士で殺し合わなければいけない。
 獣欲を剥き出しにして犯し犯される。
 生きたまま互いの身体を喰らい合う生き地獄だった。
 生命力が強く回復力の高いモンスターゆえに、殺し合いになっても死ねない。
 そして強制的に自分がオードリーに行った虐めの数々が思い出される。
 モンスターこそ、その行動に相応しい姿だという罵り声が心に響く。

 彼らがフィアル公爵邸から出たら王都全体が生き地獄となる。
 もちろんそれは王宮も同じだった。
 王宮でモンスターに変化した者達が王都に現れたら生き地獄が広まる。
 大賢者ルーパスの仕掛けた封印がそのまま発動しただけなら、そうなっていた。
 だがそこにオードリーの良心が影響を与えていた。
 最後に残飯を分けてくれたおじさんに対する感謝の気持ち。
 その想いがモンスター達を王宮と公爵邸に閉じ込めていた。
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