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第二章
第71話:交渉
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女子供が愉しく過ごす城塞都市トゥールに余計な兵力はいらない。
空壕と高層マンション城壁を造るだけで十分だ。
俺は四万の兵力を率いて城塞都市ネウストリアに移動した。
兵力が多いと移動に時間がかかるのは何度も言った。
だからトゥールとネウストリアの間にも四メートル道路八車線の街道を造り、大軍を即座に移動させられるようにした。
普通なら辺境伯クラスの貴族と面談しようと思えば、何十日も前から日程調整しなければいけないのだが、今回は到着して直ぐに面談できた。
予定をキャンセルさせられた人間に逆恨みされているだろう。
「来てくれたという事は、王都へ行ってくれるのだな?」
「王都に行くのは構わないが、護衛の兵士は連れて行くぞ」
「……今回連れてきた四万全員を王都に連れて行くとは言わないだろうな?」
「連れて行く気だが、問題でもあるのか?」
「そんな事をしたら、侵攻してきた敵だと思われるぞ!」
「だが豚騎士の前科がある。
危険過ぎて護衛もなしに行くとは言えん」
「何の冗談だ?
ショウに護衛など不要だろう?!」
「カミーユから色々と学んだのだ。
それなりの地位にある者は、威厳を示さないと舐められる。
特に今回のような事情で王都に行くのなら、警戒して兵力を率いるのが普通だと」
「カミーユは婚約者としてよくやっているようだな」
「ああ、愛情は別にして、色々と教えてくれている」
「……確かにある程度の兵力を率いていくべきなのは分かる。
だが多過ぎると行軍が長くなりすぎて、戦力的に各個撃破される。
先頭は兎も角、後方を奇襲されたら目も当てられない。
何より四万もの兵力だと必ず魔獣が襲ってくる。
千が標準的な兵力だが、三千くらい要請して二千が限度だろう」
「事前交渉をしてくれていたのだな?」
「ああ、千の護衛を引き連れていく手はずになっているのだ、今更ごねないでくれ」
「いや、言動に問題がある、扱い難い奴だと思われた方が良い。
侯爵領から辺境伯領に呼び出す事は成功したが、危険な王都には四万以下ではいけないと言い張っていると使者を送ってくれ」
「本気か、本気で王家を相手にごねるのか?」
「侯爵領を易々と占領し、漁夫の利を狙ってきた連中を完膚なきまでに叩いたのだ。
それくらい思い上がった態度を取った方が、王家や有力貴族も舐めないだろう?」
「それはそうだが、下手をすると王家王国と戦争だぞ」
「最初俺に話した時は、王家王国との戦争も覚悟していたではないか」
「あの時は明確な味方がエノー伯爵家しかなく、ナミュール侯爵軍を撃退するか滅ぶかの瀬戸際だったから、形振り構ってはいられなかった。
だが今なら、有力な侯爵領と伯爵領がお前の領地になった。
エノー伯爵家も勢力が倍増した。
何よりエノー伯爵家を潰さなくても外に出られるようになった。
こんなに条件が良くなったのに、危険な賭けに出るような外交はできん」
「ネウストリア辺境伯ロタール、お前を困らせる気はないが、これまで敵と変わらなかった王家王国に媚を売るのは、また舐められる原因になるぞ。
ここは強気の交渉をしろ。
何があっても味方してやるから心配するな。
その上で、五千以上の兵力を引き連れて行けるのなら王都に行ってやる」
「確かに、ここで舐められたら元に戻ってしまうかもしれんな。
強気の交渉をするべきなのかもしれない。
ショウが味方してくれるのなら、かなり無理な交渉をしても大丈夫だろう。
だが五千か、幾らなんでも王都に五千の兵力を入れるのは危険過ぎて認めないぞ」
「王都に軍勢を入れる訳じゃない。
俺とカミーユの旅程は見ただろう?
軍勢は城塞都市の外に駐屯させるから大丈夫だ。
俺も城に泊まって寝首を掻かれるのは嫌だからな」
「王都の外で野営するのなら認めてくれるかもしれない。
分かった、その条件で王家王国と交渉しよう。
だが交渉が纏まるまでにはかなりの時間がかかる。
その間家のダンジョンに潜ってくれるのか?
それとも侯爵領に戻るのか?」
「王家王国との交渉期間次第だが、魔境か辺境伯領で騎乗に適した魔獣を生け捕りにする心算だ」
「ほう、鹿や犬狼系の魔獣を手懐けたと聞いて、羨ましく思っていたのだ。
我が領地内で生け捕りにしてくれたら、四割は引き渡してくれるな?」
「俺か、俺の命じた相手にしか懐かない魔獣を騎獣にしてどうする?
譲れないモノを人質にされて俺と戦う事になった時、騎獣が全て敵に回るぞ。
それよりは、その分金を要求して、他領の馬を買え」
「……絶対に譲れないモノを人質か、絶対にないとは言えないな。
分かった、他領の馬を買う事にする。
だが貴重な馬はとんでもなく高いんだぞ」
「幾らくらいするのだ?」
「小さくて非力な馬でも金貨十枚。
そこそこ体格が良い馬で金貨百枚。
軍馬として恥かしくない体格の馬で金貨千枚。
完璧に調教された軍馬や輓馬だと、どれほど大金を積んでも買えない」
俺の知っている有名な馬の値段は幾らだった?
昭和の超良血サラブレッドで五億とかだったよな?
血統の悪いセリで売れ残るようなサラブレッドで百万を切っていた。
中世とかで考えると、ヨーロッパは分からないな。
山内一豊の妻がへそくりで買った事で有名な馬が金貨十枚。
幕末新選組が買い集めた農耕馬も金貨十枚だが、幕末はとんでもないインフレだったし、万延小判なら小判自体が小さくなっていたし、金の含有量も少なかった。
ついついどうでもいい事を考えてしまうな。
今は乳を確保するのが最優先だ。
馬の乳でもバターやチーズが作れるか、試すにも馬が必要だ。
「その買えない馬を俺も買いたい。
値を吊り上げられるのはおもしろくないから、最初から値段を決めておこう。
ロタール、お前がこれから送る最初の使者が王都に着いた時点の馬相場だ。
相場があるかどうか分からないが、その日に多くの商人や貴族に馬の購入を打診して、向こうが売ると言った金額の三倍までだそう」
「いや、それでは商売にならない。
相手は練達の商人だし、権力を駆使する王侯貴族だ。
欲しがっているこちらの足元を見て値を吊り上げてくる。
最初はできるだけ安く買い集めるんだ」
「それは分かるが、それでは徐々に値が吊り上がるだろう?」
「確かに俺達が買う馬の数が増えれば増えるほど、値は上がるだろう。
王家王国との交渉が長引き、馬を買う機会が増えるほど値は上がる。
だが、ショウが率いる兵の多くが魔獣に騎乗していたら、馬の値段は一気に暴落するだろう」
「ふむ、どうしても馬が欲しければ、買い占めて値を吊り上げるだけ釣りあげてから高値で売り捌き、騎獣を見せつけて暴落させてから買い直す。
そうすれば馬も金も両方手に入ると言いたいのか?」
「ああ、そうだ、領地を護る貴族なら、それくらいの事を考え実行できなければ、直ぐに近隣領主に領地を奪われ、一族が滅亡する事になる」
「そう言う駆け引きはロタールに任せる。
当面必要な金と物資は、俺がダンジョンで幾らでも稼いでやる。
トゥールダンジョンで手に入れたドロップも、必要な物に換えて渡してやる」
もうこの世界の硬貨で数兆円分を交換して持っている。
ドロップのまま持っている分も数兆円分ある。
ナミュールダンジョンは標準型だったから、地下三百階まで潜ったら欲しい物は大概手に入った。
いや、表に出せないモノばかりで、ネットスーパーで売って金にする以外、この世界に還元させられない。
「だったら食糧と武器は十分にあるから、保存の利く硬貨と防具、皮でくれ」
「分かった、後で家臣に渡しておこう。
話が終わったのなら、魔境の様子を見に行きたい。
城には家臣が残って農作業をしてくれているからな」
魚はちゃんと生きているだろうか?
孵化した鳥たちはちゃんと育っているだろうか?」
「そうだな、せっかくショウが家族を手に入れてやったんだ。
一日も早く合わせてやりたいのが人情だ。
わかった、もう引き止めないから城に戻ってくれ」
空壕と高層マンション城壁を造るだけで十分だ。
俺は四万の兵力を率いて城塞都市ネウストリアに移動した。
兵力が多いと移動に時間がかかるのは何度も言った。
だからトゥールとネウストリアの間にも四メートル道路八車線の街道を造り、大軍を即座に移動させられるようにした。
普通なら辺境伯クラスの貴族と面談しようと思えば、何十日も前から日程調整しなければいけないのだが、今回は到着して直ぐに面談できた。
予定をキャンセルさせられた人間に逆恨みされているだろう。
「来てくれたという事は、王都へ行ってくれるのだな?」
「王都に行くのは構わないが、護衛の兵士は連れて行くぞ」
「……今回連れてきた四万全員を王都に連れて行くとは言わないだろうな?」
「連れて行く気だが、問題でもあるのか?」
「そんな事をしたら、侵攻してきた敵だと思われるぞ!」
「だが豚騎士の前科がある。
危険過ぎて護衛もなしに行くとは言えん」
「何の冗談だ?
ショウに護衛など不要だろう?!」
「カミーユから色々と学んだのだ。
それなりの地位にある者は、威厳を示さないと舐められる。
特に今回のような事情で王都に行くのなら、警戒して兵力を率いるのが普通だと」
「カミーユは婚約者としてよくやっているようだな」
「ああ、愛情は別にして、色々と教えてくれている」
「……確かにある程度の兵力を率いていくべきなのは分かる。
だが多過ぎると行軍が長くなりすぎて、戦力的に各個撃破される。
先頭は兎も角、後方を奇襲されたら目も当てられない。
何より四万もの兵力だと必ず魔獣が襲ってくる。
千が標準的な兵力だが、三千くらい要請して二千が限度だろう」
「事前交渉をしてくれていたのだな?」
「ああ、千の護衛を引き連れていく手はずになっているのだ、今更ごねないでくれ」
「いや、言動に問題がある、扱い難い奴だと思われた方が良い。
侯爵領から辺境伯領に呼び出す事は成功したが、危険な王都には四万以下ではいけないと言い張っていると使者を送ってくれ」
「本気か、本気で王家を相手にごねるのか?」
「侯爵領を易々と占領し、漁夫の利を狙ってきた連中を完膚なきまでに叩いたのだ。
それくらい思い上がった態度を取った方が、王家や有力貴族も舐めないだろう?」
「それはそうだが、下手をすると王家王国と戦争だぞ」
「最初俺に話した時は、王家王国との戦争も覚悟していたではないか」
「あの時は明確な味方がエノー伯爵家しかなく、ナミュール侯爵軍を撃退するか滅ぶかの瀬戸際だったから、形振り構ってはいられなかった。
だが今なら、有力な侯爵領と伯爵領がお前の領地になった。
エノー伯爵家も勢力が倍増した。
何よりエノー伯爵家を潰さなくても外に出られるようになった。
こんなに条件が良くなったのに、危険な賭けに出るような外交はできん」
「ネウストリア辺境伯ロタール、お前を困らせる気はないが、これまで敵と変わらなかった王家王国に媚を売るのは、また舐められる原因になるぞ。
ここは強気の交渉をしろ。
何があっても味方してやるから心配するな。
その上で、五千以上の兵力を引き連れて行けるのなら王都に行ってやる」
「確かに、ここで舐められたら元に戻ってしまうかもしれんな。
強気の交渉をするべきなのかもしれない。
ショウが味方してくれるのなら、かなり無理な交渉をしても大丈夫だろう。
だが五千か、幾らなんでも王都に五千の兵力を入れるのは危険過ぎて認めないぞ」
「王都に軍勢を入れる訳じゃない。
俺とカミーユの旅程は見ただろう?
軍勢は城塞都市の外に駐屯させるから大丈夫だ。
俺も城に泊まって寝首を掻かれるのは嫌だからな」
「王都の外で野営するのなら認めてくれるかもしれない。
分かった、その条件で王家王国と交渉しよう。
だが交渉が纏まるまでにはかなりの時間がかかる。
その間家のダンジョンに潜ってくれるのか?
それとも侯爵領に戻るのか?」
「王家王国との交渉期間次第だが、魔境か辺境伯領で騎乗に適した魔獣を生け捕りにする心算だ」
「ほう、鹿や犬狼系の魔獣を手懐けたと聞いて、羨ましく思っていたのだ。
我が領地内で生け捕りにしてくれたら、四割は引き渡してくれるな?」
「俺か、俺の命じた相手にしか懐かない魔獣を騎獣にしてどうする?
譲れないモノを人質にされて俺と戦う事になった時、騎獣が全て敵に回るぞ。
それよりは、その分金を要求して、他領の馬を買え」
「……絶対に譲れないモノを人質か、絶対にないとは言えないな。
分かった、他領の馬を買う事にする。
だが貴重な馬はとんでもなく高いんだぞ」
「幾らくらいするのだ?」
「小さくて非力な馬でも金貨十枚。
そこそこ体格が良い馬で金貨百枚。
軍馬として恥かしくない体格の馬で金貨千枚。
完璧に調教された軍馬や輓馬だと、どれほど大金を積んでも買えない」
俺の知っている有名な馬の値段は幾らだった?
昭和の超良血サラブレッドで五億とかだったよな?
血統の悪いセリで売れ残るようなサラブレッドで百万を切っていた。
中世とかで考えると、ヨーロッパは分からないな。
山内一豊の妻がへそくりで買った事で有名な馬が金貨十枚。
幕末新選組が買い集めた農耕馬も金貨十枚だが、幕末はとんでもないインフレだったし、万延小判なら小判自体が小さくなっていたし、金の含有量も少なかった。
ついついどうでもいい事を考えてしまうな。
今は乳を確保するのが最優先だ。
馬の乳でもバターやチーズが作れるか、試すにも馬が必要だ。
「その買えない馬を俺も買いたい。
値を吊り上げられるのはおもしろくないから、最初から値段を決めておこう。
ロタール、お前がこれから送る最初の使者が王都に着いた時点の馬相場だ。
相場があるかどうか分からないが、その日に多くの商人や貴族に馬の購入を打診して、向こうが売ると言った金額の三倍までだそう」
「いや、それでは商売にならない。
相手は練達の商人だし、権力を駆使する王侯貴族だ。
欲しがっているこちらの足元を見て値を吊り上げてくる。
最初はできるだけ安く買い集めるんだ」
「それは分かるが、それでは徐々に値が吊り上がるだろう?」
「確かに俺達が買う馬の数が増えれば増えるほど、値は上がるだろう。
王家王国との交渉が長引き、馬を買う機会が増えるほど値は上がる。
だが、ショウが率いる兵の多くが魔獣に騎乗していたら、馬の値段は一気に暴落するだろう」
「ふむ、どうしても馬が欲しければ、買い占めて値を吊り上げるだけ釣りあげてから高値で売り捌き、騎獣を見せつけて暴落させてから買い直す。
そうすれば馬も金も両方手に入ると言いたいのか?」
「ああ、そうだ、領地を護る貴族なら、それくらいの事を考え実行できなければ、直ぐに近隣領主に領地を奪われ、一族が滅亡する事になる」
「そう言う駆け引きはロタールに任せる。
当面必要な金と物資は、俺がダンジョンで幾らでも稼いでやる。
トゥールダンジョンで手に入れたドロップも、必要な物に換えて渡してやる」
もうこの世界の硬貨で数兆円分を交換して持っている。
ドロップのまま持っている分も数兆円分ある。
ナミュールダンジョンは標準型だったから、地下三百階まで潜ったら欲しい物は大概手に入った。
いや、表に出せないモノばかりで、ネットスーパーで売って金にする以外、この世界に還元させられない。
「だったら食糧と武器は十分にあるから、保存の利く硬貨と防具、皮でくれ」
「分かった、後で家臣に渡しておこう。
話が終わったのなら、魔境の様子を見に行きたい。
城には家臣が残って農作業をしてくれているからな」
魚はちゃんと生きているだろうか?
孵化した鳥たちはちゃんと育っているだろうか?」
「そうだな、せっかくショウが家族を手に入れてやったんだ。
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