地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全

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第一章

第39話:茄子

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「ミャアアアアオン」

 狩りの成果にサクラが歓喜の鳴き声を上げる。
 俺も目の前に横たわる獲物の数に満足感が湧いてくる。
 命を奪っていると言うのに、まるでゲーム感覚だ。

 功徳を積むのではなく罪悪を重ねているのではないか?
 そう不安な気持ちになるが……

「すごい、すごい、凄い!」
「ショウ様、凄いです!
「ショウ様のお陰で、安心して同行できます」
「半数は死ぬかと思っていましたが、誰も死なずに戻れるかもしれません」
「たべていいの、そのおにく、たべてもいいの?」

 女子供が手放しに褒めてくれる。

「すげぇえええええ!」
「一瞬だぞ、一瞬であれだけの群れを瞬殺だぞ!」
「こんな強い人生まれて初めて見た!」
「これほどの方を俺達のような平民に殺せなんて、侯爵は何も分かっていねぇ!」
「もう侯爵家が滅ぶのは確定だな!」

 犯罪者奴隷や捕虜達も驚き恐れている。
 もう何があっても俺と戦おうとはしないだろう。

「いあ、もう、凄いとしか言いようがありませんな」
「本当ですな、伯爵の指示通りついて来て正解でしたな」
「ええ、ええ、片道だけでも猛獣や魔獣の心配をしないですむのは助かります」

「何を馬鹿な事を言っているのです。
 その程度の利益ですむわけがないでしょう。
 貴方達は伯爵の話を聞いていなかったのですか?
 これまでに狩った猛獣や魔獣は、関所砦で税を払うのですよ。
 それを落札してエティションで売れば、莫大な利益が得られるのですよ!
 ショウ様がエティションダインジョンに潜るまでが勝負なのですよ!」

 都市ヴァロワから金魚の糞のようについて来ている商人達も褒めてくれる。
 ただ、流石に商人だけあって、褒めるだけではない。
 自分達の利益になるか見極めている。

 最後の商人が言っていた事は、特に大事かもしれない。
 エティション伯爵が、ヴァロワ伯爵のように俺を利用しようとするのか?

 エティション伯爵が俺を利用しなければ、ヴァロワ伯爵は長期間に渡って交易で利益を得られる。

 エティション伯爵に俺を利用するだけの知恵があれば、俺がダンジョンアタックから戻ってきた時点で、ヴァロワ伯爵が有利な期間が終わってしまう。

 それはヴァロワ伯爵領に住む商人に大きな影響を与える。
 だからこそヴァロワ伯爵は商人に情報を与えて、半強制的に俺について行くように指示したのだ。

 少しでも多くの利益を得られるように商人を使おうとしている。
 こんな事ができる領主が一般的なのだろうか?
 それとも、ヴァロワ伯爵が特に優秀なのだろうか?

 恐らくだが、ヴァロワ伯爵が特別優秀だったのだろう。
 普通は中々表面に現れない情報に金や人材を投入しない。
 目に見える武器や人に金や人材を投入する。
 
 情報収集力と分析力を高めていたから、俺が有利な税制条件の領地だけで狩りをして、高い税をかける領地では狩りをしない事を知っていたのだ。

 護衛しているネウストリア辺境伯と敵対している領地では、斃した獲物を回収しないという、この世界では信じられないくらいの仁義を護っているのを知っていた。
 だから、どう言う条件なら俺に領内で狩りをさせられるのかを考えたのだ。

 中立のままでは、何時敵に回るか分からない。
 それなのにヴァロワ伯爵は同盟締結を話題にもさせず、回避してしまっている。
 そんな領地では狩った獲物を回収してもらえないかもしれない。

 それを恐れたヴァロワ伯爵は、俺にもネウストリア辺境伯にも特別待遇を与えた。
 ダンジョンアタックと同じ条件を提示したのだ。
 俺六割、ヴァロワ伯爵二割、ネウストリア辺境伯二割。

 だからこそ俺とサクラは全く自重する事なく狩りまくっている。
 街道沿いにある魔境に殺気を放って魔獣を誘導して集めて狩る。
 強大な魔獣が激減すれば、一時的でも街道が安全になる。

 ヴァロワ伯爵は本当に優秀だと思う。
 ダンジョンアタックの利益を考えて、俺が領内にいる間にできるだけ稼ごうとしているのだ。

 ダンジョン内では敵の強さが分かっているので、ある程度安全に狩りができるが、利益はドロップしかない。

 だが、森や魔境では、何時強大な敵に遭遇するか分からないが、狩った獲物は全身が残り、全て利益となる。

 ドロップと比べると十倍くらいの利益になると聞いた。
 更に、ダンジョンでのドロップ率は十分の一だ。

 たった一日で300万セントの税を支払った俺が、関所砦にたどり着くまでの一日で、どれだけの税を支払ってくれるのか、期待しているのだろう。

 同時に、特別待遇を自分が決断しなかったのに、近隣貴族が特別待遇を決断したら、軍資金や武器防具に大きな差が生まれるかもしれないと恐れたのだ。

 ヴァロワ伯爵の心配は正鵠を射ている。
 手当たり次第に猛獣や魔獣を狩っているから、莫大な額になっている。

 ネットスーパーの買取価格で確かめたが、全体で1億セント以上だ。
 わずか半日の行程でこれだから、残りの半日と野営中に狩る量を考えると、いったいどれだけの額になるやら。

 それからも自重する事なく狩りを続けたサクラと俺を、女子供はもちろん、犯罪者奴隷も捕虜もあきれ果てていた。

 もう褒めてくれる事も驚いてくれ事もなくなった。
 正直少し哀しかったが、遣り過ぎている自覚はあるから、仕方がないと諦めた。

 狩りに熱中している間に、ヴァロワ伯爵領の関所砦に到着したので、領内で狩った獲物を申告しようとしたのだが……

「これは、こんな量を一度に査定するなんてできません!」

 砦の隊長と冒険者ギルドの査定官は泣きそうな表情で訴える。
 俺の恐ろしさは、ネウストリア辺境伯、エノー女伯爵、ヴァロワ伯爵の三者が保証した三つの白金初級冒険者プレートで明らかだ。

「別に査定する必要などない。
 お前達は俺が狩った獲物の数を確認するだけでいい。
 その中で数が揃っている同種の獲物を税金分納める。
 端数が出ている獲物は、帰りに領都で伯爵と直接話し合う。
 そう伯爵からの書状に書いてあるだろう、しっかり読め!」

「あっ、はい、確かに、端数は無視していいと書いてありました!
 直ぐに数の揃っている同種から税金分を収納させていただきます!」

 動揺も露な隊長が、急いで獲物の再確認を始めた。
 ナミュール侯爵と領地を接している関所砦の隊長とは大違いだ。
 ここの隣領、エティション伯爵家にはあまり脅威を感じていないのだろう。

 これほどまで納税審査を簡略化させたのはオセール伯爵だ。
 できるだけ早く、安全確実に王都につきたいオセール伯爵は、俺に狩りをさせるのを反対していた。

 ネウストリア辺境伯に二割の税を納めると言われても、速さと安全を優先して、必要最小限の防衛しか認めないと言い張った。

 更に、領都よりも規模が小さく権限もない関所砦の納税検査で、時間を取られる事を極端に恐れた。

 そんなオセール伯爵を説得するための条件が、関所砦での簡易納税検査だった。
 本格的な納税検査は、帰りに領都に来た時で良いと英断したのだ。

 その結果として、五頭以上同種がいるので納税される事になった、大量の猛獣や魔獣を前にした商人達が、目をぎらつかせてセリを始める現状に繋がっている。

「オセール伯爵、納税検査も終わりましたから、野営地に戻りましょう」

「そうですね、我が家への納税は領地に戻ったからで良いですね。
 早く戻らないと、ショウ殿の料理を食べさせてもらえないですから」

 何気に、毎食オセール伯爵と護衛達に食事を振るまう事になっている。
 護衛達も麦飯を炊けるようになっているし、ホワイトルーも玉子料理も作れるようになっているのだが、俺の料理を食べたがる。

 確かに、日本の食材や調味料を使っているから、この世界では食べられない、とても貴重で美味しい料理なのだろう。

 俺が癖のある食材や調味料を避けている効果もあるのだろう。
 味噌なんかは独特の風味があるから、苦手な人もいる。
 生まれて初めてヌタや納豆を喰わされたら、日本食が嫌いになる者もいるだろう。

「自分達で作れる料理は、ちゃんと自分達で作ってください。
 俺が作るのは副菜、肉や麦飯の添え物ですからね」

「分かっています、少しでいいですから、野菜や果物の料理を作ってください」

 面倒な時は、ネットスーパーで買える果物をそのまま渡している。
 それだけで満面の笑みを浮かべて喜んでくれる。

 俺はまだこの世界の肉に飽きていないので、作り置きのロースビーフを部位ごとに食べ比べるだけで満足なのだが、ここまで期待されると作らずにはおられない。
 慌ただしい朝飯や昼飯でもないから、作ってやるか!

 どうせ作るのなら、俺も食べたい大好きな野菜料理にする。
 一度に大量に作れる料理なら、女子供にも分けてあげられる。
 日本の食材は与え過ぎない方が良いと思っているのだが、ついね。

 20cm級長茄子33~36本入=5200円
 5kg入長茄子=5184円
 米なす9玉約2.5kg=2699円
 水ナス約4kg=3580円

 揚げて食べる心算だったのだが、水ナスが有るとなると、生で食べたくなってしまうが、今日は我慢だ!
 下拵えだけしておいて、明日以降に食べればいい。

 油と醤油は以前に買った物が大量にある。
 ポン酢をかける人がいるかどうかは分からないが、一応食卓に出して置こう。
 シーズニングをかける奴がいるとは思えないが、塩を振るだけでも美味しい。

 
 冷凍おろし生姜1kg×10(中国産)=9000円
 熊本産無農薬無肥料生姜10kg=10800円

 生姜の皮をむいてすりおろすのが面倒だと思って、既にすりおろしている生姜を買ったのだが、やはり生の生姜をその場ですりおろした方が香りも味も良い。
 それに、自分でやらなくても、護衛や女子供にやってもらえばいい。

 ウスターソース業務用20Lパック=6950円

 信頼と実績の優良企業が作った巨大容器に入ったウスターソース。
 子供の頃から家で使っていたので、一番馴染みのある味だ。

 材料がそろったので料理を始める。
 護衛と女子供の代表を呼んで作り方を教える。
 
 教えると言っても難しい事は何もない。
 鍋に入れた油を熱して茄子をあげていくだけだ。
 ただ、火事や火傷が怖いので、風が吹き込まないように土魔術で壁を造る。

「これだけは絶対に忘れないように。
 同じ茄子をあげるにしても、切り方で味がガラリと変わる。
 俺はこのように丸くなるようにスライスして揚げるのが好きだが、人によっては縦にスライスした方が好きな人もいる」

 俺はそう言って茄子を切って見せた。
 最初にやって見せた輪切り、拍子切りに乱切り。
 ヘタの所をつないだまま縦に細切りにする。

「どのような形で揚げたら美味しいのか、色々と試してみても良いぞ」

 もしかしたら、俺が思いもよらない切り方が美味しいかもしれない。
 ポルトスではないが、半熟目玉焼きの黄身に醤油を垂らしてから、マヨネーズをかけて食べるのがあれほど美味しいとは思ってもいなかった。

「何をかけたら美味しいのか、色々と試したらいい。
 俺はすりおろした生姜醤油に少し漬けてから食べるのが一番好きだが、多めのウスターソースにどっぷりと漬けて食べるのも美味しいぞ」

「美味しい、本当に美味しい!
 この生姜という野菜の風味と辛味が加わった醤油が秀逸ですね。
 この茄子というものが持つ甘味と旨味をすごく引き立てている」

 オセール伯爵が手放しに褒めてくれる。
 
「おしいい、おしお、いちばんおいしい」

 一番下の子は、下手な調味料で味付けするよりも、揚げ茄子の甘味と旨味を一番引き立てる、塩だけが良いようだ。

 俺も、茄子の美味しさを一番引き出してくれるのは塩だと思う。
 だがそれは、揚げ立てだけだとも思っている。
 冷めて縮み、変色した揚げ茄子は生姜醤油かウスターソースだ。

「うまい、もの凄く美味い!」

 ……揚げ茄子をウスターソースとマヨネーズで食べているポルトス。
 美味しいような気もするのだが、それでなくても油をたっぷり吸って太りやすい料理にマヨネーズをかけるだと?!
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