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第一章
第21話:エノーダンジョン
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「これが証拠です、出発までに階級を決めてください。
できる事なら、伯爵閣下の感状か信任状もください」
俺は強気に交渉した。
信用の有る貴族の感状や信任状があれば、初めてのダンジョンでも認定試験が免除される事が有ると聞いたからだ。
「嘘だろ、信じられん」
「夢だ、俺は夢を見ているのだ」
「どうやったら、たった一日でこれだけのものが手に入れられる!」
「不正だ、いや、こんな不正しても意味無いか……だが信じられん」
俺がアイテムボックスから取り出したドロップを見て驚愕している。
エノー女伯爵を筆頭に、エノー伯爵家に仕える家宰、騎士団長、財務長に加え、冒険者ギルドのマスターから幹部まで勢揃いだ。
俺の事に多少慣れたオセール伯爵は、苦笑を浮かべている。
ポルトスは女子供の側を離れないから、ここには来ていない。
あいつ、父性愛が強すぎないか?
「信じていただけないと言うのなら、これを提出するのは止めましょう!
他所から持って来たと疑われ、非難されてまで提出する必要はないですよね?
都市内で売買しないのなら、税はかからないのですよね?!」
「待ってくれ、ショウ殿。
信じていないのではなく、貴殿の実力に驚いているだけだ。
失礼な事を言った者にはキッチリと詫びさせる。
詫び程度では許さないと言うのなら、厳罰に処す。
だから、これはエノーダンジョンでドロップしたと認めてくれ。
この通りだ!」
エノー女伯爵が深々と頭を下げてくれた。
貴族が、それも高位貴族が冒険者に頭を下げるなんて、よほどの事だ。
その証拠に、集まっていたエノー伯爵家の幹部が驚愕している。
「馬鹿者!
誠心誠意お詫びしないか!
お前達には十日間の入牢に処す!
詫びなければ追放する!」
エノー女伯爵が、まだ現実を認めず、詫びようともしない連中を叱責した。
本気で入牢される気が。
器量の様い人間に逆恨みされるのは鬱陶しい。
「女伯爵閣下、そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ」
「いえ、そうはいきません。
喉から手が出るほど待ち望んでいた、白金級冒険者が現れたのです。
今回のドロップだけでも、我が家の財政が信じられないくらい楽になるのです。
交易の度にダンジョンアタックして頂けたら、ナミュール侯爵家どころか、王家にも匹敵するほどの収入が確保できるのです。
その程度の事も分からない者は、我が家には不要です!」
エノー女伯爵は人材不足で困っているようだな。
「申し訳ありませんでした、私の不明でした!」
うん、本当に愚者ばかりだ。
この期に及んで、誰に謝らないといけないかも分かっていない。
「馬鹿者!
私に詫びてどうする、ショウ殿に詫びないか!」
「ショウ殿、申し訳ありませんでした!
余りの事に気が動転してしまい、とんでもない非礼を働いてしましました。
この通りです、どうかお許しください。
死ねと申されるのでしたら、今直ぐ死んでみせます。
ですから、これからもダンジョンアタックをお願い致します!」
愚かだが、忠誠心だけはあるようだな。
この忠誠心が、愚かさと混ざると、主君を破滅させる事がある。
そんな事にならなければいのだが……
「私もお詫びさせていただきます。
自分がショウ殿の足元にも及ばないことを認めたくなくて、恥知らずな事を口にしてしまいました!
この通り、お詫びさせていただきます。
どうか、どうか、どうかエノー伯爵家に力をお貸しください!」
愚かな忠義者が複数いる、本当に心配だ。
「申し訳ありませんでした!
ギルドマスターにもかかわらず、観る眼がありませんでした。
責任を取ってマスターの座を返上させていただきます。
死ねと申されるのでしたら、この場で死なせていただきます。
その代わりと御申し上げるのは厚かましいと承知しておりますが、どうかこれからもダンジョンアタックをお願い申し上げます。
「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」
少し頭が切れる奴なら、こいつらの忠誠心を煽って暴走させられるだろう。
「そんなに詫びていただく必要はありませんよ。
女伯爵閣下も家臣の方々を処分するなんて言わないでください」
「そうは申されますが、これは我が家の信義がかかった大問題です」
「では、納める税の件なのですが」
俺の言葉に女伯爵以下家臣団が緊張する。
税を値引けと言われると思っているのだな。
「私も実力者として弱者に優しくあらねばならぬと思っているのです。
とはいえ、あまりに高価な物をポンポンとは渡せません。
渡したとしても、女子供では使いこなせません。
弓は将来のために練習させるにしても、剣や棍棒は不要なのです。
だからといって、一度売ってから買うのでは損をしてしまう。
こちらに不要な武器と、伯爵家やギルドが保管している武器を、等価交換していただけないでしょうか?」
「本当にそのような事で良いのか?」
「ええ、それで十分です。
ネウストリア辺境伯とエノー伯爵家は軍事同盟を結んでいるのでしょう?
俺の所為で同盟関係にひびが入ってはいけませんから」
「その程度の事でよいのなら、我が家とギルドにある物を全て交換しよう。
普通の騎士や冒険者は、槍や棍棒よりも剣を選ぶから、我が家も助かる」
上手く話が纏まったので、女子供に覚えさせたい武器だけを残した。
数が足りない物は必要な物と交換させてもらった。
普通ならギルドが必要な武器を優先的に税の対象とする。
今回は互いに欲しいものが違ったから、ウィンウィンだ。
弓矢だけは互いに欲しかったが、こちらを優遇してくれた。
それに、白金片級以上のドロップは隠してある。
女伯爵達も、俺とサクラが魔銀級階層まで潜っていたとは思ってもいない。
『交渉後のドロップ』
灰牙栗鼠:21個:9個税金:木槍12
灰角栗鼠:21個:9個税金:棍棒12
灰牙山嵐:22個:9個税金:短弓5張・石鏃矢が80本
赤角栗鼠:23個:10個税金:13個を青銅槍と交換
赤牙栗鼠:24個:10個税金:青銅槍14
灰角山嵐:25個:10個税金:青銅斧15個
赤牙山嵐:22個:9個税金:13個を弓13張と交換
赤角山嵐:24個:10個税金:青銅鏃矢140本
灰魔栗鼠:23個:10個税金:13個を鉄槍と交換
灰魔山嵐:24個:10個税金:鉄槍14
灰魔狸 :23個:10個税金:鉄斧13
灰魔狐 :24個:10個税金:14個を長弓と交換
灰魔鬣犬:360個:144個税金:鉄鏃矢2160本
灰魔胡狼:120個:48個税金:72個を鋼鉄槍と交換
灰魔豹 :24個:10個税金:鋼鉄槍14
灰魔狼 :220個:88個税金:鋼鉄斧132
灰魔獅子:315個:126個税金:鋼鉄鏃矢1890本
茶魔栗鼠:53個:22個税金:合成短弓31張
茶魔山嵐:24個:10個税金:在庫なし魔鉄剣14
茶魔狸 :21個:9個税金:在庫なし魔鉄槍12
茶魔狐 :23個:10個税金:在庫なし魔鉄斧13個
茶魔鬣犬:360個:144個税金:在庫なし魔鉄棍棒216
茶魔胡狼:115個:46個税金:在庫なし合成弓34張・魔鉄鏃矢340本
茶魔豹 :21個:9個税金:在庫なし魔銅剣12
茶魔狼 :232個:魔銅槍232を隠匿
茶魔獅子:367個:魔銅斧367個を隠匿
赤魔栗鼠:22個:魔銅棍棒22個を隠匿
赤魔山嵐:21個:魔銅製合成弓10張・魔銅製鏃矢110本を隠匿
赤魔狸 :21個:魔銀剣21個を隠匿
赤魔狐 :23個:魔銀槍23個を隠匿
赤魔鬣犬:363個:魔銀斧363個を隠匿
赤魔胡狼:118個:魔銀棍棒118個を隠匿
赤魔豹 :21個:魔銀合成弓10張・魔銀鏃矢110本
赤魔狼 :23個:魔金剣23個を隠匿
赤魔獅子:24個:魔金槍24個を隠匿
★★★★★★ 以下は資料です。好きな方だけお読みください。
『エノーダンジョン魔物表』
エノーダンジョンは迷宮式ではなく広大な草原フロアー式
半径1kmの円形フロワーの何処に階段が有るか分からない
「木片級冒険者に相当する獣」
灰牙栗鼠:4kg :80セント
:ダンジョンでのドロップは木剣・木槍
:買取価格は10セント
:ダンジョンの地下1階と2階・単独
灰角栗鼠:3kg :60セント
:ダンジョンでのドロップは木斧・木の棍棒
:買取価格は10セント
:ダンジョンの地下1階と2階・単独
灰牙山嵐:10kg :200セント
:ダンジョンでのドロップは短弓か石鏃の矢が10本
:買取価格は20セント
:ダンジョンの地下3階と4階・単独
「鉄片級冒険者に相当する獣」
赤角栗鼠:30kg :600セント
:ダンジョンでのドロップは青銅剣
:買取価格は100セント
:ダンジョンの地下5階と6階・単独
赤牙栗鼠:40kg :800セント:
:ダンジョンでのドロップは穂先が青銅の槍
:買取価格は100セント
:ダンジョンの地下5階と6階・単独
灰角山嵐:70kg :1400セント
:ダンジョンでのドロップは青銅斧
:買取価格は100セント
:ダンジョンの地下7階・単独
赤牙山嵐:100kg :2000セント
:ダンジョンでのドロップは総青銅製の棍棒
:買取価格は200セント
:ダンジョンの地下8階・10匹前後の群れ
赤角山嵐:200kg :4000セント
:ダンジョンでのドロップは弓か青銅鏃の矢が10本
:買取価格は200セント
:ダンジョンの地下9階と10階・単独
「銅片級冒険者に相当する魔獣」
灰魔栗鼠:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは鉄剣
:買取価格は500セント
:ダンジョンの地下11階
灰魔山嵐:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは穂先が鉄の槍
:買取価格は500セント
:ダンジョンの地下12階
灰魔狸:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは鉄斧
:買取価格は500セント
:ダンジョンの地下13階・単独
灰魔狐:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは総鉄製の棍棒
:買取価格は1000セント
:ダンジョンの地下14階・単独
灰魔鬣犬:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは長弓か鉄鏃の矢10本
:買取価格は1000セント
:ダンジョンの地下15階・10頭から15頭の群れ
「銀片級冒険者に相当する魔獣」
灰魔胡狼:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が鋼鉄の剣
:買取価格は5000セント
:ダンジョンの地下16階・5頭前後の群れ
灰魔豹:100kg :3万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が鋼鉄の槍
:買取価格は5000セント
:ダンジョンの地下17階・10頭前後の群れ
灰魔狼:100kg :3万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が鋼鉄の斧
:買取価格は5000セント
:ダンジョンの地下18階・10頭前後の群れ
灰魔獅子:150~250kg:5万~10万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が棍棒
:買取価格は2万セント
:ダンジョンの地下19階・15頭前後の群れ
茶魔栗鼠:300kg :20万セント
:ダンジョンでのドロップは合成短弓か鋼鉄鏃の矢10本
:買取価格は2万セント
:ダンジョンの地下20階・単独
「一流と言われる金片級冒険者に相当する魔獣」
茶魔山嵐:600kg:40万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔鉄の剣
:買取価格は20万セント
:ダンジョンの地下21階・単独
茶魔狸:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔鉄の槍
:買取価格は20万セント
:ダンジョンの地下22階・単独
茶魔狐:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔鉄の斧
:買取価格は20万セント
:ダンジョンの地下23階・単独
茶魔鬣犬:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が魔鉄製の棍棒
:買取価格は50万セント
:ダンジョンの地下24階・15頭前後の群れ
茶魔胡狼:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは合成弓か魔鉄鏃の矢10本
:買取価格は50万セント
:ダンジョンの地下25階・5頭の群れ
「超一流と言われる白金片級冒険者に相当する魔獣」
茶魔豹:1000kg :100万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銅の剣
:200万セント
:ダンジョンの地下26階・単独
茶魔狼:1000kg :100万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銅の槍
:200万セント
:ダンジョンの地下27階・10頭前後の群れ
茶魔獅子:1000~2500kg:100万~250万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銅製斧
:200万セント
:ダンジョンの地下28階・15頭前後の群れ
赤魔栗鼠:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が魔銅製の棍棒
:500万セント
:ダンジョンの地下29階・単独
赤魔山嵐:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは魔銅製合成弓か鏃が魔銅製の矢10本
:500万セント
:ダンジョンの地下30階・単独
「伝説の勇者に匹敵する魔鉄片級冒険者に相当する魔獣」
赤魔狸:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銀の剣
:買取価格は2000万セント
:ダンジョンの地下31階・単独
赤魔狐:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銀の槍
:買取価格は2000万セント
:ダンジョンの地下32階・単独
赤魔鬣犬:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは魔銀製の斧
:買取価格は2000万セント
:ダンジョンの地下33階・15頭前後の群れ
赤魔胡狼:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が魔銀製の棍棒
:買取価格は5000万セント
:ダンジョンの地下34階・5頭の群れ
赤魔豹:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは魔銀合成弓か魔銀鏃の矢10本
:買取価格は5000万セント
:ダンジョンの地下35階・単独
「伝説の勇者以上の魔銅片級冒険者に相当する魔獣」
赤魔狼:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔金の剣
:2億セント
:ダンジョンの地下36階・10頭前後の群れ
赤魔獅子:1000~2500kg:100万~250万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔金の槍
:2億セント
:ダンジョンの地下37階・15頭前後の群れ
『エノーダンジョン昇級基準』
木級:ギルドメンバーの認識票が木製
:見習の駆け出しに与えられる。
:初級、中級、上級があり、木片に印を加える事で昇級
:1階2階のドロップを5個以上斃す必要がある
:上級になるには3階4階のドロップを10匹斃す必要がある。
鉄級:見習を終えた駆け出しギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、鉄片に印を加える事で昇級
:初級は5階6階のドロップが5個必要がある。
:中級は7階8階のドロップが5個必要がある。
:上級は9階10階のドロップが5個必要がある。
銅級:最低限の魔獣を狩れるようになったギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、銅片に印を加える事で昇級
:初級は11階12階のドロップが5個必要がある。
:中級は13階14階のドロップが5個必要がある。
:上級は15階のドロップが5個必要がある。
銀級:一人前と認められたギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、銀片に印を加える事で昇級
:初級は16階17階のドロップが5個必要がある。
:中級は18階19階のドロップが5個必要がある。
:上級は20階のドロップが5個必要がある。
金級:一流と認められたギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、金片に印を加える事で昇級
:初級は21階22階のドロップが5個必要がある。
:中級は23階24階のドロップが5個必要がある。
:上級は25階のドロップが5個必要がある。
白金級:超一流と認められたギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、白金片に印を加える事で昇級
:初級は26階27階のドロップが5個必要がある。
:中級は28階29階のドロップが5個必要がある。
:上級は30階のドロップが5個必要がある。
魔鉄級:アマダンタイト級・伝説の勇者に匹敵する魔鉄片級冒険者に相当する魔獣
:初級、中級、上級があり、魔鉄片に印を加える事で昇級
:初級は31階32階のドロップが5個必要がある。
:中級は33階34階のドロップが5個必要がある。
:上級は35階のドロップが5個必要がある。
魔銅級:オリハルコン級・伝説の勇者以上の魔銅片級冒険者に相当する魔獣
:初級、中級、上級があり、魔鉄片に印を加える事で昇級
:初級は36階37階のドロップが5個必要がある。
:中級は38階39階のドロップが5個必要がある。
:上級は40階のドロップが5個必要がある。
魔銀級:ミスリル
魔金級:ヒイロカネ
できる事なら、伯爵閣下の感状か信任状もください」
俺は強気に交渉した。
信用の有る貴族の感状や信任状があれば、初めてのダンジョンでも認定試験が免除される事が有ると聞いたからだ。
「嘘だろ、信じられん」
「夢だ、俺は夢を見ているのだ」
「どうやったら、たった一日でこれだけのものが手に入れられる!」
「不正だ、いや、こんな不正しても意味無いか……だが信じられん」
俺がアイテムボックスから取り出したドロップを見て驚愕している。
エノー女伯爵を筆頭に、エノー伯爵家に仕える家宰、騎士団長、財務長に加え、冒険者ギルドのマスターから幹部まで勢揃いだ。
俺の事に多少慣れたオセール伯爵は、苦笑を浮かべている。
ポルトスは女子供の側を離れないから、ここには来ていない。
あいつ、父性愛が強すぎないか?
「信じていただけないと言うのなら、これを提出するのは止めましょう!
他所から持って来たと疑われ、非難されてまで提出する必要はないですよね?
都市内で売買しないのなら、税はかからないのですよね?!」
「待ってくれ、ショウ殿。
信じていないのではなく、貴殿の実力に驚いているだけだ。
失礼な事を言った者にはキッチリと詫びさせる。
詫び程度では許さないと言うのなら、厳罰に処す。
だから、これはエノーダンジョンでドロップしたと認めてくれ。
この通りだ!」
エノー女伯爵が深々と頭を下げてくれた。
貴族が、それも高位貴族が冒険者に頭を下げるなんて、よほどの事だ。
その証拠に、集まっていたエノー伯爵家の幹部が驚愕している。
「馬鹿者!
誠心誠意お詫びしないか!
お前達には十日間の入牢に処す!
詫びなければ追放する!」
エノー女伯爵が、まだ現実を認めず、詫びようともしない連中を叱責した。
本気で入牢される気が。
器量の様い人間に逆恨みされるのは鬱陶しい。
「女伯爵閣下、そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ」
「いえ、そうはいきません。
喉から手が出るほど待ち望んでいた、白金級冒険者が現れたのです。
今回のドロップだけでも、我が家の財政が信じられないくらい楽になるのです。
交易の度にダンジョンアタックして頂けたら、ナミュール侯爵家どころか、王家にも匹敵するほどの収入が確保できるのです。
その程度の事も分からない者は、我が家には不要です!」
エノー女伯爵は人材不足で困っているようだな。
「申し訳ありませんでした、私の不明でした!」
うん、本当に愚者ばかりだ。
この期に及んで、誰に謝らないといけないかも分かっていない。
「馬鹿者!
私に詫びてどうする、ショウ殿に詫びないか!」
「ショウ殿、申し訳ありませんでした!
余りの事に気が動転してしまい、とんでもない非礼を働いてしましました。
この通りです、どうかお許しください。
死ねと申されるのでしたら、今直ぐ死んでみせます。
ですから、これからもダンジョンアタックをお願い致します!」
愚かだが、忠誠心だけはあるようだな。
この忠誠心が、愚かさと混ざると、主君を破滅させる事がある。
そんな事にならなければいのだが……
「私もお詫びさせていただきます。
自分がショウ殿の足元にも及ばないことを認めたくなくて、恥知らずな事を口にしてしまいました!
この通り、お詫びさせていただきます。
どうか、どうか、どうかエノー伯爵家に力をお貸しください!」
愚かな忠義者が複数いる、本当に心配だ。
「申し訳ありませんでした!
ギルドマスターにもかかわらず、観る眼がありませんでした。
責任を取ってマスターの座を返上させていただきます。
死ねと申されるのでしたら、この場で死なせていただきます。
その代わりと御申し上げるのは厚かましいと承知しておりますが、どうかこれからもダンジョンアタックをお願い申し上げます。
「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」
少し頭が切れる奴なら、こいつらの忠誠心を煽って暴走させられるだろう。
「そんなに詫びていただく必要はありませんよ。
女伯爵閣下も家臣の方々を処分するなんて言わないでください」
「そうは申されますが、これは我が家の信義がかかった大問題です」
「では、納める税の件なのですが」
俺の言葉に女伯爵以下家臣団が緊張する。
税を値引けと言われると思っているのだな。
「私も実力者として弱者に優しくあらねばならぬと思っているのです。
とはいえ、あまりに高価な物をポンポンとは渡せません。
渡したとしても、女子供では使いこなせません。
弓は将来のために練習させるにしても、剣や棍棒は不要なのです。
だからといって、一度売ってから買うのでは損をしてしまう。
こちらに不要な武器と、伯爵家やギルドが保管している武器を、等価交換していただけないでしょうか?」
「本当にそのような事で良いのか?」
「ええ、それで十分です。
ネウストリア辺境伯とエノー伯爵家は軍事同盟を結んでいるのでしょう?
俺の所為で同盟関係にひびが入ってはいけませんから」
「その程度の事でよいのなら、我が家とギルドにある物を全て交換しよう。
普通の騎士や冒険者は、槍や棍棒よりも剣を選ぶから、我が家も助かる」
上手く話が纏まったので、女子供に覚えさせたい武器だけを残した。
数が足りない物は必要な物と交換させてもらった。
普通ならギルドが必要な武器を優先的に税の対象とする。
今回は互いに欲しいものが違ったから、ウィンウィンだ。
弓矢だけは互いに欲しかったが、こちらを優遇してくれた。
それに、白金片級以上のドロップは隠してある。
女伯爵達も、俺とサクラが魔銀級階層まで潜っていたとは思ってもいない。
『交渉後のドロップ』
灰牙栗鼠:21個:9個税金:木槍12
灰角栗鼠:21個:9個税金:棍棒12
灰牙山嵐:22個:9個税金:短弓5張・石鏃矢が80本
赤角栗鼠:23個:10個税金:13個を青銅槍と交換
赤牙栗鼠:24個:10個税金:青銅槍14
灰角山嵐:25個:10個税金:青銅斧15個
赤牙山嵐:22個:9個税金:13個を弓13張と交換
赤角山嵐:24個:10個税金:青銅鏃矢140本
灰魔栗鼠:23個:10個税金:13個を鉄槍と交換
灰魔山嵐:24個:10個税金:鉄槍14
灰魔狸 :23個:10個税金:鉄斧13
灰魔狐 :24個:10個税金:14個を長弓と交換
灰魔鬣犬:360個:144個税金:鉄鏃矢2160本
灰魔胡狼:120個:48個税金:72個を鋼鉄槍と交換
灰魔豹 :24個:10個税金:鋼鉄槍14
灰魔狼 :220個:88個税金:鋼鉄斧132
灰魔獅子:315個:126個税金:鋼鉄鏃矢1890本
茶魔栗鼠:53個:22個税金:合成短弓31張
茶魔山嵐:24個:10個税金:在庫なし魔鉄剣14
茶魔狸 :21個:9個税金:在庫なし魔鉄槍12
茶魔狐 :23個:10個税金:在庫なし魔鉄斧13個
茶魔鬣犬:360個:144個税金:在庫なし魔鉄棍棒216
茶魔胡狼:115個:46個税金:在庫なし合成弓34張・魔鉄鏃矢340本
茶魔豹 :21個:9個税金:在庫なし魔銅剣12
茶魔狼 :232個:魔銅槍232を隠匿
茶魔獅子:367個:魔銅斧367個を隠匿
赤魔栗鼠:22個:魔銅棍棒22個を隠匿
赤魔山嵐:21個:魔銅製合成弓10張・魔銅製鏃矢110本を隠匿
赤魔狸 :21個:魔銀剣21個を隠匿
赤魔狐 :23個:魔銀槍23個を隠匿
赤魔鬣犬:363個:魔銀斧363個を隠匿
赤魔胡狼:118個:魔銀棍棒118個を隠匿
赤魔豹 :21個:魔銀合成弓10張・魔銀鏃矢110本
赤魔狼 :23個:魔金剣23個を隠匿
赤魔獅子:24個:魔金槍24個を隠匿
★★★★★★ 以下は資料です。好きな方だけお読みください。
『エノーダンジョン魔物表』
エノーダンジョンは迷宮式ではなく広大な草原フロアー式
半径1kmの円形フロワーの何処に階段が有るか分からない
「木片級冒険者に相当する獣」
灰牙栗鼠:4kg :80セント
:ダンジョンでのドロップは木剣・木槍
:買取価格は10セント
:ダンジョンの地下1階と2階・単独
灰角栗鼠:3kg :60セント
:ダンジョンでのドロップは木斧・木の棍棒
:買取価格は10セント
:ダンジョンの地下1階と2階・単独
灰牙山嵐:10kg :200セント
:ダンジョンでのドロップは短弓か石鏃の矢が10本
:買取価格は20セント
:ダンジョンの地下3階と4階・単独
「鉄片級冒険者に相当する獣」
赤角栗鼠:30kg :600セント
:ダンジョンでのドロップは青銅剣
:買取価格は100セント
:ダンジョンの地下5階と6階・単独
赤牙栗鼠:40kg :800セント:
:ダンジョンでのドロップは穂先が青銅の槍
:買取価格は100セント
:ダンジョンの地下5階と6階・単独
灰角山嵐:70kg :1400セント
:ダンジョンでのドロップは青銅斧
:買取価格は100セント
:ダンジョンの地下7階・単独
赤牙山嵐:100kg :2000セント
:ダンジョンでのドロップは総青銅製の棍棒
:買取価格は200セント
:ダンジョンの地下8階・10匹前後の群れ
赤角山嵐:200kg :4000セント
:ダンジョンでのドロップは弓か青銅鏃の矢が10本
:買取価格は200セント
:ダンジョンの地下9階と10階・単独
「銅片級冒険者に相当する魔獣」
灰魔栗鼠:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは鉄剣
:買取価格は500セント
:ダンジョンの地下11階
灰魔山嵐:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは穂先が鉄の槍
:買取価格は500セント
:ダンジョンの地下12階
灰魔狸:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは鉄斧
:買取価格は500セント
:ダンジョンの地下13階・単独
灰魔狐:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは総鉄製の棍棒
:買取価格は1000セント
:ダンジョンの地下14階・単独
灰魔鬣犬:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは長弓か鉄鏃の矢10本
:買取価格は1000セント
:ダンジョンの地下15階・10頭から15頭の群れ
「銀片級冒険者に相当する魔獣」
灰魔胡狼:100kg :2万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が鋼鉄の剣
:買取価格は5000セント
:ダンジョンの地下16階・5頭前後の群れ
灰魔豹:100kg :3万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が鋼鉄の槍
:買取価格は5000セント
:ダンジョンの地下17階・10頭前後の群れ
灰魔狼:100kg :3万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が鋼鉄の斧
:買取価格は5000セント
:ダンジョンの地下18階・10頭前後の群れ
灰魔獅子:150~250kg:5万~10万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が棍棒
:買取価格は2万セント
:ダンジョンの地下19階・15頭前後の群れ
茶魔栗鼠:300kg :20万セント
:ダンジョンでのドロップは合成短弓か鋼鉄鏃の矢10本
:買取価格は2万セント
:ダンジョンの地下20階・単独
「一流と言われる金片級冒険者に相当する魔獣」
茶魔山嵐:600kg:40万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔鉄の剣
:買取価格は20万セント
:ダンジョンの地下21階・単独
茶魔狸:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔鉄の槍
:買取価格は20万セント
:ダンジョンの地下22階・単独
茶魔狐:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔鉄の斧
:買取価格は20万セント
:ダンジョンの地下23階・単独
茶魔鬣犬:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が魔鉄製の棍棒
:買取価格は50万セント
:ダンジョンの地下24階・15頭前後の群れ
茶魔胡狼:600kg :40万セント
:ダンジョンでのドロップは合成弓か魔鉄鏃の矢10本
:買取価格は50万セント
:ダンジョンの地下25階・5頭の群れ
「超一流と言われる白金片級冒険者に相当する魔獣」
茶魔豹:1000kg :100万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銅の剣
:200万セント
:ダンジョンの地下26階・単独
茶魔狼:1000kg :100万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銅の槍
:200万セント
:ダンジョンの地下27階・10頭前後の群れ
茶魔獅子:1000~2500kg:100万~250万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銅製斧
:200万セント
:ダンジョンの地下28階・15頭前後の群れ
赤魔栗鼠:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が魔銅製の棍棒
:500万セント
:ダンジョンの地下29階・単独
赤魔山嵐:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは魔銅製合成弓か鏃が魔銅製の矢10本
:500万セント
:ダンジョンの地下30階・単独
「伝説の勇者に匹敵する魔鉄片級冒険者に相当する魔獣」
赤魔狸:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銀の剣
:買取価格は2000万セント
:ダンジョンの地下31階・単独
赤魔狐:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔銀の槍
:買取価格は2000万セント
:ダンジョンの地下32階・単独
赤魔鬣犬:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは魔銀製の斧
:買取価格は2000万セント
:ダンジョンの地下33階・15頭前後の群れ
赤魔胡狼:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは主要部が魔銀製の棍棒
:買取価格は5000万セント
:ダンジョンの地下34階・5頭の群れ
赤魔豹:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは魔銀合成弓か魔銀鏃の矢10本
:買取価格は5000万セント
:ダンジョンの地下35階・単独
「伝説の勇者以上の魔銅片級冒険者に相当する魔獣」
赤魔狼:3トン :300万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔金の剣
:2億セント
:ダンジョンの地下36階・10頭前後の群れ
赤魔獅子:1000~2500kg:100万~250万セント
:ダンジョンでのドロップは刃金が魔金の槍
:2億セント
:ダンジョンの地下37階・15頭前後の群れ
『エノーダンジョン昇級基準』
木級:ギルドメンバーの認識票が木製
:見習の駆け出しに与えられる。
:初級、中級、上級があり、木片に印を加える事で昇級
:1階2階のドロップを5個以上斃す必要がある
:上級になるには3階4階のドロップを10匹斃す必要がある。
鉄級:見習を終えた駆け出しギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、鉄片に印を加える事で昇級
:初級は5階6階のドロップが5個必要がある。
:中級は7階8階のドロップが5個必要がある。
:上級は9階10階のドロップが5個必要がある。
銅級:最低限の魔獣を狩れるようになったギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、銅片に印を加える事で昇級
:初級は11階12階のドロップが5個必要がある。
:中級は13階14階のドロップが5個必要がある。
:上級は15階のドロップが5個必要がある。
銀級:一人前と認められたギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、銀片に印を加える事で昇級
:初級は16階17階のドロップが5個必要がある。
:中級は18階19階のドロップが5個必要がある。
:上級は20階のドロップが5個必要がある。
金級:一流と認められたギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、金片に印を加える事で昇級
:初級は21階22階のドロップが5個必要がある。
:中級は23階24階のドロップが5個必要がある。
:上級は25階のドロップが5個必要がある。
白金級:超一流と認められたギルドメンバーに与えられる。
:初級、中級、上級があり、白金片に印を加える事で昇級
:初級は26階27階のドロップが5個必要がある。
:中級は28階29階のドロップが5個必要がある。
:上級は30階のドロップが5個必要がある。
魔鉄級:アマダンタイト級・伝説の勇者に匹敵する魔鉄片級冒険者に相当する魔獣
:初級、中級、上級があり、魔鉄片に印を加える事で昇級
:初級は31階32階のドロップが5個必要がある。
:中級は33階34階のドロップが5個必要がある。
:上級は35階のドロップが5個必要がある。
魔銅級:オリハルコン級・伝説の勇者以上の魔銅片級冒険者に相当する魔獣
:初級、中級、上級があり、魔鉄片に印を加える事で昇級
:初級は36階37階のドロップが5個必要がある。
:中級は38階39階のドロップが5個必要がある。
:上級は40階のドロップが5個必要がある。
魔銀級:ミスリル
魔金級:ヒイロカネ
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彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
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