地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全

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第一章

第12話:マヨネーズとマヨラー

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 俺がとても美味そうに食べていたからだろう。
 灰魔鼠肉入り米雑炊を美味しそうに食べていたポルトスが、俺が横に置いていたマヨネーズを勝手に灰魔鼠肉ステーキにかけて食べた。

「幾らだ?!」

 言葉をはぶくにも程があるが、何が言いたいのかくらいは分かる。
 マヨネーズの値段を知りたいのだろう。
 余りにも美味しいから、売ってくれと言いたいのだろう。

 業務用マヨネーズ1kg10個は1万8479円だった。
 1個を1848円で売れば損はしない。

 だが、脂肪分のほとんどないウサギやネズミの肉が主食のこの都市に、マヨネーズなんて持ち込んでしまったら、爆発的な人気になるに違いない。

 安い値段で売ったりしたら、毎日恐ろしいほどの忙しさになるだろう。
 そもそも幾らが適正価格なのか全く分からない。

 先の塩や胡椒なら、ごく僅かとはいえ流通していたから、その値段を参考にする事ができるが、マヨネーズに参考価格などない。

「マヨネーズは数が少ないから売れない。
 これは俺が食べる分だけしかない。
 どうしても欲しいと言うのなら、そっちが値段を決めろ。
 故郷に戻って仕入れても割に合うと思ったら、買って来てやる」

「一本金貨一枚」

「金貨とは小金貨のことか、それとも大金貨の事か?」

 俺とポルトスの値段交渉を、女子供が緊張してみている。
 貧しい生活をしている彼らに、金貨の取引など滅多にないのだろう。

「小金貨だ」

 小金貨は、大雑把な基準で10万円くらいだったな。
 これも大雑把な倍率だが、仕入れ値の50倍くらいになる。
 悪くない倍率に思われるが、塩や胡椒の比べると低すぎる。

「これは一キロの重さがある。
 小金貨三三三枚の重さと同じだぞ。
 胡椒が金と同じ重さで取引されているのに、胡椒よりも美味しいマヨネーズが小金貨一枚だと?!」

「うっ!」

 ポルトスもマヨネーズに小金貨333枚は出せないのだろう。
 日本基準だと3330万円だからな。
 マヨネーズが大好きな俺だって出さないよ、そんな大金。

「アイテムボックスがあれば……」

 アイテムボックスがあったら買うのかよ!
 どんだけ食い意地が張っているんだ!

 ん、ポルトスほどの冒険者でもアイテムボックスを買えないのか?
 アイテムボックスて物凄く珍しいスキルなのか?

「アイテムボックスのスキルは珍しいのか?」

「珍しい」

「でも、ポルトスほどの冒険者がパーティーメンバーに加えると言ったら、仲間に加わる奴くらいいるだろう?」

「いない!」

 ポルトスが嫌われている訳ではないだろう?
 難しい事や細々とした事は、女達に聞いた方が良いな。

「何でポルトスはアイテムボックス持ちを仲間に加えられないのだ?」

「ショウ様、ポルトス様は真面目過ぎて騙したりできないのです。
 アイテムボックス持ちは、危険な仕事などしなくても高額な報酬がもらえます。
 お貴族様の家臣、大商人の使用人、各ギルドの職員など、全く危険のない高額報酬の仕事が幾らでもあります」

「アイテムボックスの収納量は魔力量によるよな?
 実力をあげて収納量を増やすために、ダンジョンや魔境に挑まないのか?」

「それは、雇った側が万全の体制を作ったうえで、上げさせてくれます。
 お貴族様は勿論、大商人もギルドも、アイテムボックス持ちの収納量によって利益が大きく違ってきますから。
 万が一にもアイテムボックス持ちを失ってしまったら、商売もギルド運営もできなくなってしまいます」

「魔道具やドロップに、アイテムボックスと同じ能力を持つ物はないのか?」

「噂では、大昔に、今では到達できなくなったダンジョンの最下層で、何万回に一度の確率でドロップした事があるそうです。
 王家の中には、宝物庫に保管していると言う噂もあります」

「そんな珍しい物なのか?」

「はい、ショウ様は本当に何もご存じないのですね」

「俺の生まれ育った村は、閉鎖された所だったからな」

「そうなのですね。
 だから珍しい物を持っておられるのですね」

「そうだな、この都市の常識も分からないし、これからも色々と教えてくれ」

「はい、お任せください!」

「パーティーだ」

 女との会話が終わったのを見計らって、ポルトスが話しかけてきた。
 言いたい事を読み取ってやらないと会話が成り立たない。
 でかい図体して困った奴だ。

「俺とパーティーを組みたいのか?」

「そうだ」

「パーティーメンバーだからマヨネーズを食わせろというのか?」

「違う!」

「アイテムボックスが使えたら、小金貨333枚くらい簡単に稼げるとでも思っているのか?」

「そうだ!」

 たった一口食べただけで、そこまでマヨネーズの虜になるのか?
 マヨラーのように使いまくったら、毎日3330万円使いかねないぞ!

 まあ、でも、俺のアイテムボックスを使えればそれくらい軽く稼げるのか?
 灰魔狗で1万2000円のドロップだよな?
 ポルトスは金級だから、もっと単価の高い魔物を狩れるよな?

「ポルトスは金級だったよな?
 楽に狩れる魔物は何なのだ?」

「灰魔鹿だ」

「ん、金級に成るには灰魔熊級を狩らないといけないのだったよな?」

「ショウ様、楽に狩れるのと、命懸けで狩れるのは違います」

 話し上手な女が口下手なポルトスに代わって教えてくれる。

「それに、ポルトス様はソロですが、他の金級はパーティーで金級なのです。
 一人で持ち帰れるドロップには限りがあります」

「お前達では危険で潜れない深さなのか?」

「はい、少人数なら大丈夫なのですが、大人数になると、ポルトス様でも私達全員を守れなくなります」

「何か抜け道や工夫のしかたはないのか?」

「今やっておられるのは、私達全員が潜れる限界の階段で待つ事です。
 それより深く潜られたポルトス様が、高いドロップを運んできてくださいます。
 ですがそんな事をするよりは、もっと楽に潜れる浅い階層で狩った方が、時間的に効率がいいのです」

「確かに、ダンジョンを上り下りする時間や、ドロップしても捨てていかなければいけない浅い階層の事を考えたら、それなりの階層で稼いだ方が良いな」

「はい、今は私達が十五階から十六階に下りる階段で待たせて頂いて、ポルトス様が十六階で狩られた灰魔猪のドロップを運ばせていただきます」

「灰魔猪のドロップは幾らなのだ?」

「十八キロあるのですが、九千セントで買ってもらえます」

 18kgで9000セントだと、100g当たり5000円の高級肉だな。
 ドロップ1個90万円になるのか。
 女子供で何個運べるのだ?

「そんなに重いドロップを子供が運べるのか?」

 女子供は専用の背負子を使っているから、それなりの重量を運べると思う。
 山小屋に荷物を運ぶ歩荷とか強力と呼ばれる人は、100kgもの荷物を3000メートルまでは運び上げたと、読んだ資料に書いてあった。

「私達は三個運びます。
 子供達は一個から二個です」

 女が五十四キロで子供が十八キロから三十六キロか、重いな。
 力持ちの大原女は、五十キロの荷物を頭に乗せて二十キロ歩いたと読んだことがあるし、途上国の子供は二十キロのポリタンクに水を汲んで運ぶとも読んだ事もある。

「何日くらいかかるのだ?」

「往復の時間や十五階で待つ時間がありますので、五日はかかります」

 女が五日で二百七十万円で、子供が五日で九十万円から百八十万円か。
 日当は他の冒険者や荷役の事もあるから、非常識な金額は渡せない。

 ただ、ポルトスの性格なら、とても危険な場所まで下りるから、危険手当くらいは渡しているだろう。

「ポルトス、俺がパーティーメンバーになったら、女子供はどうするのだ?」

「一緒だ!」
 
 そんな怒ったような顔をするなよ!
 女子供を放り出すなんて言っていないだろう。

「俺とサクラ、ポルトスがいたら、女子供でも、安全にもっと深くまで潜れると思っているのか?」

「そうだ!」

 頭では分かっていても、上手く説明できないのか?

「それよりももっといい方法があるだろう」
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