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1章

15話

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 私がアモロ子爵家に拘らず、グレアム様も将軍職に拘らず、他の国に逃げると決めれば、何の問題もありません。
 ですがグレアム様は、逃げた後の事も心配されました。
 ザンピエ公爵家と王太子の追撃を心配されたのです。
 それと、報復だそうです。
 私を苛め抜いた事に対する報復は、絶対にすると宣言されました。

 同時に私の安全を考えてくださいました。
 グレアム様とバルトロ殿の話はトントン拍子で決まりました。
 譜代の忠臣、カロジェロ一家と連絡を取り、私の護衛を万全にしてくださったのです。
 傭兵団を編成しているカロジェロ一家は、忠誠と戦力を持った最高の援軍なのです。

 普通の傭兵団に頼んだら、途中で裏切られてしまう可能性もあります。
 グレアム様が私の側を離れている間に、不埒な真似をしようとするかもしれません。
 その点カロジェロ一家ならば、そんな心配はしなくていいのです。
 心安らかに、グレアム様の帰りをお待ちできます。

 まあ、またグレアム様のお側を離れなければならないのは、哀しく苦しいですが、そのような我儘を言っては、将軍職を捨ててくださるグレアム様に申し訳がありません。
 心静かに待つ事こそ、よい妻のなすべき事なのです。
 寂しいなどと口にしてはいけないのです。

 ただ、最初はグレアム様とバルトロ殿だけがザンピエ公爵家に斬り込む話だったのが、段々話が大きくなってしまいました。
 王太子殿下に馬鹿な考えを持たせないために、グレアム様個人の武勇だけでなく、味方する兵力があると知らしめることになったのです。

 その為には、カロジェロ一家、いえ、カロジェロ傭兵団の戦力を表に出すことになりました。
 グレアム様と私にいらぬ手出しをすれば、腕利きの集まった傭兵団を敵に回すことになると、王太子殿下とその一派に思い知らせるそうです。

 グレアム様とバルトロ殿の考えはそれだけなのですが、カロジェロには裏の考えもあるのだと、私にだけ教えてくれました。
 カロジェロの考えは、グレアム様に新たな傭兵団を設立して頂くと言う事でした。
 そしてグレアム様の傭兵団を頂点に、大傭兵連合を設立すると言うのです。

 カロジェロはその考えを前提に、自分の傭兵団以外の傭兵にも声をかけ、今回のザンピエ公爵家襲撃兵を集めたそうです。
 もちろん全員カロジェロが大丈夫と見極めた傭兵です。
 それでも、心のどこかに暗いところがある傭兵もいるそうです。
 そんな者まで排除したら、一人の傭兵も集められないと言っていました。

 それに、カロジェロにはもっと大きな目標があるそうです。
 私にもそれは打ち明けてくれませんでした。
 ですが大丈夫だと信じています。
 カロジェロはアモロ子爵家の忠臣ですから。
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